ラストに震える——信じたい/疑いたい気持ちが、繕い切れない事実を惑わす

最後の最後に投下された爆弾のような呪いに、読了後からずっと闇が腹の中を渦巻いています。
いわゆるイヤミスのような、後味の悪い話がお好きな方に全力でおすすめしたい作品です。

互いに気持ちがあるにも関わらず、愛情の価値観の相違からすれ違う夫婦。
刑事である夫の担当した事件が、意外な形で夫婦の関係に影響を与えていくのですが。

理不尽に主人公を振り回す夫も。
主人公を追い詰める理解のない実家の家族も。
優しく穏やかに寄り添って甘い言葉をくれる幼馴染の男も。
誰も彼もに対して、どうにも心を許しきれない。

夫が連れてきた、被害者と思しき女性の幽霊の存在をヒントに導き出されていく、悍ましい真相。
人間というものの汚さと恐ろしさをありありと見せつけられるようでした。

機微を的確に紡ぐ心理描写で、自然に、どっぷりと、主人公に感情移入できます。
冒頭でも申し上げましたが、ぜひ最後の最後まで見届けていただきたい。
そしてぜひ、この泥沼の闇を感じてほしい。
大変満足の一作でありました!

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