最終話:ある母親の独白
あなたへ
あなた、私と共に人生を歩んでくれてありがとう。あなたとの二十七年の結婚生活は、とても満たされたものだったわ。ただ一つ、あの子の事を除いては……。
私は、あの子と共に旅立ちます。
あの子を殺したのは私です。私は、私の手であの子の人生を終わらせる事で責任を取ります。
あの子は、いつの頃からか部屋に籠ったまま心を閉ざしたわ。
あの子がお風呂に入っている時に、こっそりPCを覗いたの。そうしたら、死体の写真や殺人の記事の保存ファイル、闇サイトへのリンクが大量にあったわ。
そして何よりもあの子が三奈にした仕打ち。あれだけは私、許せないの。
三奈は天使の様に心が澄んだ子だったわ。昌也の事も心の底から心配していた。なのに、あの子は三奈を汚したのよ。
あの子の心は闇に染まってしまったのね。
あの子にはもう未来を感じないわ。
だから私があの子を連れて地獄に行くの。
せめてあの子が苦しまないように、ナイフで心臓を一突きにしたわ。
これから私も旅立ちます。
あなたと三奈を置いていく事になるけど、許してね。あなた達は天寿を全うして天国に行ってね。
あなたから受けた愛と、共に過ごした時間こそ私の天国だったわ。ありがとう、あなた。
そして三奈、あなたは強く、そして優しく生きるのよ。
愛してるわ、永遠に。さようなら。
────了
ある母親の独白 無雲律人 @moonlit_fables
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