Blue Dream

 その鳥は空を飛んだことがない。

 飛び方を知らなかった。

 初めから何かが欠けていた。

 とても大切な何かが。

 だが生きているうちに気づいた。

 それは初めからあるものではない。

 持って生まれるものではないと。


〝光り 輝く この

   大地へと 生まれ落ち

何も 知らずに ただ

   生きて いた〟


〝すぐ目の前から 失われていった

   希望


〝広すぎる この

   世界の中で

ひとり ただ

   空を見上げていた

遠すぎる あの

   水色がこぼれ

落ちて いく

   受け止め切れずに 溢れた〟


 探さなければ。

 見つけなければ。

 この空いている隙間を満たすものを。

 しかしそれは目に見えないものだった。

 どこにあるのかわからない。

 いつまで経っても見つけられなかった。


〝愛を 教えて くれた

   彼らは 遠くへ

進む 道の先は 眩しくて

   真っ直ぐに 見られない〟


〝挫けそうな時に 傍にいてくれた

   仲間宝物


〝手を繋ぎ この

   世界の中で

ぼくらは 青い

   夢を見ていた

いつの日か 願い

   叶う日が来ると

信じた 蒼の彼方へ

   祈った〟


 その鳥は空を飛んだことがない。

 飛び方を知らなかった。

 その鳥は崖の上に立った。

 そこからただ空を見上げていた。


〝黒雲が 宙を覆い

   嵐が 吹き荒ぶ

大事な 心だけ

   離さずにいた

終わらない 悪夢は

   壊し続ける

剥がれ落ちた 空の欠片〟


 目の前に影が見えた。

 日の光を遮って飛ぶ鳥たちがいた。

 その鳥は空を見上げた。

 バサバサと羽を動かしながら、崖の縁へ向かった。

 そして――。


〝大空へと

   翼を広げ

この心

   羽ばたかせた

それでも足りずに

   羽根が散りゆく

でもぼくは

   ひとりじゃない

温かな光に 導かれて

   この手に 確かに掴んだんだ

幸せを〟

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日常メモリアル さかたいった @chocoblack

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