求めていた作品がココにはある。

 キャッチコピーが
『希少スキル『空間収納』を引いたと思ったら……工夫でさらに化けまして。』

 ぼくが引っかかったは、『引けた』という言葉のチョイスだった。
 スキルをガチャ的な要素で『引けた』と表現している。
 手に入れた、では無く、『引けた』なのである。
 これはつまり転生後すぐに手に入れていたスキルという事を意味している。
 それに『引けた』と表現するのは、転生者にはチート特典が1つはあり、それがガチャ的要素であるみたいな表現の仕方である。
 つまり紐解けば、転生者にはチート特典があるのだろう、と思っている主人公の言葉である。
 なぜチート特典があると思っているのだろうか?
 
 異世界系の作品を読んでいる主人公である事が示唆《しさ》されている。

 異世界系の作品を読まずに向こう側に行った主人公は『引けた』と表現しないのだ。そもそも、その言葉のニュアンスが出てこない。

 異世界系の作品を読んでいる主人公という事が『引けた』という言葉の中に詰まっている。
 
 異世界系の作品を読んでいる主人公、というのが作品の内容にも関わって来る。
 つまりムーヴ的な要素が詰め込まれているのである。ムーヴというのは定番の立ち回り、という事を意味している。
『引けた』という言葉だけで、この主人公は異世界作品を読んでいる主人公ですよ、異世界作品を読んでいるのでムーヴ的な要素も詰め込まれていますよ、という事を示唆している。
 
 読む前に、そう勝手に解釈して1話を読んだ。

 転生の仕方は独特だったけど、実は一番秀逸だったのは1話目で異世界作品を読んでいることを示している事だろう。1話目で異世界作品を読んでいる事を示してくれたおかげで、自分のなんとな〜くの解釈が合っていたことと、これから、この作品の楽しみ方がハッキリとわかるのだ。
 この作品では定番の立ち回り方を楽しむ。
 その誤差というか、ズラし方すらも楽しむ。
 どんな事をやらかしてくれるのかを楽しむ。
 楽しみ方がわかれば読者は読みやすいのだ。

 楽しみ方がわかりやすい、読みやすい作品です。ぜひぜひ読んでください。

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