第8話 時計


 帰り道。

 ハルカさんと一緒に町の変化を確認しながら、家の方まで戻ってきた。


「今までと何か変化は合った?」


「ううん、特に。パッと見た感じだと分からないかな」


「そっか。家の中も調べてみよう」


 ハルカさんと手分けをしながら、家を調べ始める。


 一階から上の階にかけて調べているが、変化などは特にない。

 僕たちが部屋を空けていた時間は、おそらく四十分ほど。

 やはり、この短い間で大きな変化はないか。


 三階まで調べ終えた僕たちは、僕の目覚めた部屋で腰をおろした。


「やっぱり何もないか」


「そうだね。──この部屋には本棚があるんだ」


「確かに隣の部屋にはなかったね」


「うん。何だか同じ家の部屋だけど、個性があるよね。私の部屋に比べてこの部屋は──なんとなく男の子っぽい気がする」


「そう?」


「うん。本なんて私家で読んだ記憶ないよ。そもそも記憶自体もないけど」


「僕は多分読んでいたと思う。記憶ないけどたぶん」


「そっか」


 ハルカさんは本棚から一冊の本を手に取ると、おもむろにページを漁り始めた。


「変な本。文字がバラバラで読めないよ」


「......今なんて言った?」


「え? 文字がバラバラで読めないって......」


「字が書いてあるの!?」


 僕はハルカさんの上から覗き込む良いに本を見た。

 すると、意味を成さない文字の羅列が目に入った。


 僕は本棚から本を取り出し、一冊一冊確認する。

 どの本も文字がバラバラで同じようだった。


「本当だ......僕が見た時は空白だったのに......」


「そうなの?」


「いつだ? いつ入れ替えられた?」


 家の中をしっかり確認したつもりでいたが、本の中身までは確認していなかった。


 家を空けていた時間は一時間ほど。

 その間に入れ替えられたのか?

 それとも眠っている間に入れ替えられたのか?

 どちらでもおかしくはない。


 何故、本が入れ替えられた?

 何の為に。

 本以外にも変わっている場所は......


 僕は部屋の中をもう一度確認する。

 しかし、他に変わった様子は見られない。


「他に変わっている所はない......か」


「誰かが入れ替えたって事? 何だかちょっと不気味だね」


「それも気づかれることなくね。何の為にこんな事を......」


 ふと、僕は時計を見た。

 時計は家を出る前と同じ四時ぴったりを指していた。


「時計も変わらず四時ぴったりで止まってるし......」


「何を言ってるの?」


「え? 時計が止まってるって話だけど」


「うん。時計は止まってるよ。そうじゃなくて......カナタ君目が悪かったりする?」


「多分問題ないと思うけど......何か変わってる所があったの?」


「変わっているっていうか......。カナタ君時計が四時で止まってるって言ったよね?」


「うん」


「時計......今の時間、四時じゃないよ」




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✕✕✕✕しないと出られない空間 ~このモノクロな世界で君は愛を教えてくれと言った~ 岡田リメイ @Aczel

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