第三小節  武藤りきた

第二小節で触れた、僕の人生を変えてくれた女の子と別れたあたり、つまり僕が22歳位の頃から、僕は心療内科に通い始めていた。

鬱病なのか統合失調症なのかよくわからなかったが、薬を処方して貰い、毎週カウンセリングを受けていた。


話が飛び飛びになってしまう。

僕は僕自身の人生の整理が未だについていない。

時系列にそって丁寧に順序通り話す事ができない。


多分29歳の頃だったと思う。

実家に引きこもってPS2をやるか映画を借りてきて観る、もしくはパチンコを打つ日々。たまにドラムの練習。

ある日、僕はスロットの四号機、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」で17000枚出して、そのお金を元手に一人暮らしを始めた。


一人暮らしを始めたのはいいが、一人暮らしを続けるためには働いて生活費を稼がなければならない。


人生でこれも何度目かのバイト探しを始めた。


たまたま駅前の喫茶店の前を通り過ぎた際にふと見ると、「アルバイト募集」の張り紙がしてある。


それまでに僕がやったバイトと言えばITとは名ばかりの多重派遣のプログラマー見習いばかりだった。全てブラックバイトだった。

FX取引を勧めるテレアポの仕事をやったこともある。


地元で働いた事がなかった。地元ならば無理なく働けるのではないかとなんとなく思っていた。

しかし、僕は半引きこもりで、鬱病か統合失調症で、いくらなんでもそんな人間が、接客などできるわけがないと思っていた。


その張り紙を見た直後、カウンセラーにふと相談してみる。

「駅前の喫茶店でウェイターを募集してるみたいなんですけど、僕には無理です………よね?」

僕は「そうね。無理ね。」と言って貰いたかったのだが、返って来た言葉は意外なものだった。

「無理かどうかはやってみないと分からないんじゃない?」

僕は今もってその時のカウンセラーに大きく感謝している。

僕は、「ものは試しだ」と思い、思い切ってその喫茶店に面接に行ってみた。


面接してくれた店長の仲島さんは40代位の男性で、とてもいい人だった。面接でとても優しく接してくださり、そして言った。

「いつから来れますか」

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