第11話 リトス・ペトラ計画
リダーストに帰ってきた三人はルディとギルド前で分かれると、酒場ローガンへ戻った。出迎えたホルストに報告を済ませると、シトロンとシンシャは自室へ向かい各々眠りについた。
翌朝、ホルストの声に起こされてシトロンが酒場に降りると、そこにはルディがいた。
「なんでいるの⁉」
シトロンの問いにホルストがルディの背中を押しながら言った。
「今日からここで働くことになった。錬金術師だから、料理担当してくれるとさ!」
「錬金術関係なくない? ルディはいいの?」
「僕はその、実家を飛び出してしまって帰るところがないんだ。それに、ここにいれば例の研究の手掛かりを掴める気がして……」
それに、とルディは続けた。
「持ち帰った資料と日記を一部解読したんだ。そこには“リトス・ペトラ計画”と書かれていて、魔石を埋め込んで兵を作る研究、魔物化、それらを行う組織の事が書かれていた」
「リトス・ペトラ計画……」
「そう。ボクはその計画を阻止するために君たちに協力することにした。……ダメ、かな?」
返答に困ってホルストを見れば「まあ。そう言う事だ!」と言わんばかりに二ッと笑っている。確かにルディの研究は魔物を人間に戻すためのものだ。だが、自分たちの行う仕事は危険が伴う事の方が多い。
ルディはシトロンを真剣な眼差しで見上げている。そんな目をされては厳しいことは言えない。第一、ここの雇い主が決めたことなら居候の自分が口出しできるわけがない。
諦めたように息を吐いたシトロンは片手を差し出した。
「これからよろしく。ルディ」
「ああ! よろしくシトロン!」
「ところで、うちの店長かなり料理下手だからサポートよろしく」
握り返したルディの手を引いて耳元で囁いたシトロンにルディが疑問符を浮かべる。その間に遅れて起きてきたシンシャが「おはよう」と寝ぼけまなこで言う。ルディには気付いていないようだ。
「おう。おはよう。朝飯食うだろ? 今日は新しく増えたからな、腕を振るったぞ」
そう言ってホルストが厨房に料理を取りに戻る間、シトロンと覚醒したシンシャが顔色を変えて扉に向かって走り出した。二人の行動の意味が分からないルディが困惑していると、ホルストが料理を手に戻ってきた。皿には料理と呼べるのか怪しい物体が乗っていた。
顔を引きつらせるルディを置いてシトロンとシンシャは逃亡に成功していた。背中越しにルディの悲鳴を聞きながら二人は「ごめん、ルディ」と届かない謝罪をして朝食を食べに出掛けた。
リトス・ペトラ 秋月昊 @mujinamo
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