ラノベ「e.t.c」

山崎 藤吾

第一巻

 プロローグ


 ポツポツと雨が降る。

その中をビニール傘を片手にただ無機質に

闊歩していた。

指す傘の表面にはキラキラと光る

たくさんの粒が流れていて

それを見て少し落ち込む…。

何があったかと言われれば決して

そんな悪い一日ではなかった…ただ面白くもなく誰とも話さずにまた俺の高校生活は

何も音沙汰なく幕を閉じかける。

そんな今日の最後に俺は駅の中の本屋へと

足を運ぶ、何を買うのかと言われれば

これと言って買うものなんてなくて…

けれどどうしても本能的に

入らずにはいられなかった…。

本屋へと足を踏み入れるとまず最初に

雑誌コーナーに行く、そしてそこで

アニメ雑誌や漫画雑誌…ホビー雑誌を

ラッピングされた上から表紙を眺め

ちゃんと裏表を確認したあと…メインの

ラノベコーナーに舞い降りる…。

そこはまるで宝の山の用に俺たちの聖書が

所狭しと並んでいる、思わず手を

合わせたい気持ちを抑えさっきまでも

鬱感覚も今では嘘のように死んでいった。

端から端までライトノベル、

可愛い女の子の絵や唯一無二の主人公が

描かれた神絵師たちの命が吹き込まれた

表紙を舐め回すようにしっかりと触らずに

腕組みしながら、さも評論家気取りの

芸能人バリに心のなかで評価する。

そして目あたり次第見たあと

興味をそそられるラノベを優しく

角に変な折り目や凹みがつかないようにして

手に取り上げる。

表紙をめくり目次を読む…ほう、なるほど…

かなり目次は少なめか…そしてプロローグを

読んだ、内容はまだハッキリとは

わからないが、どうやら王道系で

攻めてくる作品らしい…

この内容だとあんまり読者は

面白くないだろうな…そんな個人的見解を

頭の中で立てて思う。

最近の作品はどれも王道系とは

一線を隠していて各々の意外性を

持っている、例えばヒロインが全員

姉妹であるとか…読む順番で読者の感じ方が

変わるなど…独特の設定や個性が光ってる

作品がとても多くなってきている…けれど

この作品はよくある異世界モノで

特に目次からはわからなかったが

意外性がない…ヒロインが複数いたり

冒険をしたりプロローグだけでも

その全貌が理解できてしまう…

もちろんまだプロローグまでしか読んでないが

この感じは前にも見たことがある、

期待させておいて読者の読みどおりに

進んでいくストーリー、確かにそれにも

面白味はあるし良いんだけれど

これは…何だか…いわゆる……


 〈絵で売れている本─〉


そんな感じがした…けれど

まだ作品のプロローグまでしか読んでないし

この先意外性のある設定や

とてつもない伏線回収が期待される…

けれど俺も家に20作品を超えるラノベを

全て完結まで追い、全て行間まで

読んでいる、その経験が問いかけるのだ…

これは……いわゆる絵で売っている本だと、

何度も言うようにまだプロローグ…

考えをまとめるには情報と根拠が足りない…

なので俺はある決断を出した、そしてふと

下に目がいくと腕に掛けていた傘の

下に小さな6センチ程の水たまりが出来ていた

それを後目に俺は本を持ったまま

いつもの禿げたデブのレジ員のおっさんに

さっき読んでいたラノベを渡した。

「630円になります…」

低くやる気のない声を出すおっさんに

千円を渡した。

「1000円のお預かりで…えっと、

  370円になります…」

小銭をチラチラ弾き目に近づけ確認している、

いや…メガネ買えよ!とツッコみそうに

なるのを抑え俺はおっさん定員から

お釣りを受け取りレシートと

カバーは入りません

と言ってそのラノベの本を学生カバンの

中へと丁寧に仕舞った。



それから雨の中をまた

歩き家について玄関を開けると

何やら騒がしい…。

誰かが来ているのだろうか…ふと下を見ると

玄関に見たことのない

革靴がある…これはうちの父さんのとは

違う、色が茶色だ…父さんの革靴は

黒の安物そこで大体の検討はついた…。

「ただいま…」

リビングの扉を開けるとそこには

父さんともうひとり同じくらいの

年齢のおじさんが居た。

「おう、タキ!帰ったか!」

酒を飲んでいるのか変にテンションの高い

父さんに適当に返事をする。

「こんにちはタキヤくん、」

ん……誰だろう、何処かで見たことが

ありそうな感じだが…顔を見ても

そのおじさんの事を思い出せない…。

「あの…父さんの同僚の方ですか?」

恐る恐る多分違うとは思うが聞いてみた。

「おい、なんだタキ?忘れたのか?」

なるほど…俺はこの人とあっている…

するとそれは最近じゃないのか…

最近なら絶対に覚えてるし、

そこまで俺は鈍くない。

「そうだよね、タキヤくんまだ

 幼稚園生だったもんね…覚えてないから

 僕、サヤカのパパだけど」

サヤカ…?誰だそれは、

全く知らない…幼稚園…?そんな

昔の記憶流石にもうないぞ?

昔公園のブランコから飛び降りて

足の膝を盛大に擦りむいて病院に

行った記憶以外、子供の頃の記憶なんて

残ってない。

「すみません…ちょっと覚えてないですね…」


「なんだ?タキ!お前あんなに

 仲良くしてた女の子のこと忘れるなんて

 男として最悪だぞ?笑」

黙れ、ジジィ。

母さんとの結婚記念日を一週間遅れで間違えた

あんたにだけは男どうこう言われたくない、

母さんは笑顔で何一つ文句言わずに

父さんからの結婚記念日のプレゼントを

受け取ってた時には流石に怖かったわ…。

「仕方ないだろ?子供の頃の記憶なんて

 そんなあるかよ、」


「そうだよね、ごめんねタキくん笑」

笑いながら手を合わせてメンゴ、メンゴと

されて俺も忘れていた事を謝った。

そして暫くその幼稚園生の頃に

仲良くしていた女の子の話を聞いた、

なんでもたまにうちにも来ていたらしい、

けれどそんなの他の子だって来てたし

どの子かまでは、やはり話を聞いても

分からなかった。分かったのはただ一つ…


〈茅野 紗佳(コウノ サヤカ)〉


という、名前だけ…その名前を

頭の片隅に置いて俺は話の席から

離れると夜ご飯を食べてそのまま

風呂に入って、そして自分の部屋へと入った。

そして夕方駅前の本屋で買ったラノベを

取り出すと電気を消して机の照明だけにした、

下ではまだ何やら楽しそうに話しており

俺はそれをBGM代わりに読書を始めた…。


始めた………のだか、やはり

オジサンの笑い声や雑な笑い声は

とてもBGMになんてなりようもなく

直ぐに机の上にあるヘッドフォンを

被り、スマホで今季のアニソンの

プレイリストを再生した。



第一話「始まりのエトセトラ」


「ハァ~…」

大きめのあくびをして朝、学校へ

登校する。昨日は少し寝不足だった、

何故ならプロローグでも語った通り

俺は遅くまでラノベを読んでいた。

内容はまぁ…初心者向けというか

やはり俺の読み通り絵で売れてる作品だった。

面白みはあったけど結局どれも

予想通りで良くも悪くも裏切らないものだと

読んだあとに思った。

正当な評価なくして作品は語れない、

けれど俺のラノベ人生経験に関しては

もう序盤の文体や癖で

ある程度の作品の作りやあり方は

読めてしまうなぁ…と少し自身が持てた。

これからもいろいろな作品を読んだり

見たりするだろうが俺はここにあることを

誓うことにした……それは、

やっぱりつまらないものは頭から爪先まで

つまらなくそれらに変な期待や情を

抱くことなく、効率を考え

少しでも引っかかる点があれば

辞めたほうがいいな…と、そう朝7時頃

朝日を見ながら鞄片手にそう誓ったのだった。


 あと、やはり学校がある日の前の日に

夜ふかしすると若くてもしんどい……。


 


 門を抜け下駄箱に靴を入れ室内用の

運動靴へと履き替える、それから

まっ直ぐ教室へと向かい後の扉から

朝から騒いでいる野球部のバカを

少し押しのけ一番後ろ側の自分の席へと

たどり着く。

教科書を予め用意して筆箱を鞄から

取り出すと、スマホを見て

SNSをサーフする。

今日は木曜日…今季一番の有力アニメの

選考カットを公式から確認し

少しニヤける……そんなこんなしていると

先生が教室に入ってきた。

スマホを急いでしまい、日直の

挨拶とともにホームルームが始まった……

また退屈で何のために生きているのか

分からなくなるそんな憂鬱で

味気のない高校生活の一日が緩やかに

音を建てずに歩み寄ってくる…。

俺はそんな人生が心底つまらなく

そして窓の外を見て皮肉にも平和を噛み締めてしまった……。



 お昼休み、校内が少し騒がしくなる。

勾配に買いに行く者、家から弁当を

持ってくる者…いろいろな奴が

楽しげに会話しながら食事をする中…俺は……

中庭にあるでっかい木を見てその周りに

座る人たちを見ていた…弁当片手に。

俺だって本当は誰かと

弁当を食べてみたい…けれど

それはすなわち俺自身が陽キャになることに

他ならない、そんなことは避けるべきだ。

ヲタクというモノは普段から

地味で誰とも話さずに、決して

ラノベの主人公みたく

幼なじみの女の子や年下の後輩、

いつも声をかけてくる

優しいギャルの同級生なんかが

そばにいるような人種ではないのだ、

憧れは憧れ…それに憧れ妄想したり

出来もしない事を考えたりするのが

真のヲタクではなかろうか…少なくとも

俺はそう思っている…。


なので…俺は今日も階段を登り

誰も来ない上り階段の端に腰掛けると

スマホを取り出し弁当を広げ

父さんが出来もしないのに頑張って

作った玉子焼きを食べながら

スマホで昔のアニメを見ていた。

そして、何分が経ったのだろうか…

いつの間にかチャイムがなっている事に

気づく、イヤホンを使ってみていたもんだから

気づくのに少し遅れた、前にも

こんなことがあったけな……笑

それを思い出し俺は少しニヤける

あのときはちょうど今と同じ

お昼休みの事だった。

朝イヤホンを使って動画を見たいとき

突然音が聞こえなくなった、

最初はスマホが壊れたかと思い

かなり焦ったが部屋にあるヘッドホンを

使ってみたら音は聞こえたので

そのままイヤホンを部屋において

学校にヘッドホンを持っていた……それが

運の尽きだった、まさか

飯食いながらヘッドホンを使ってアニメを

視聴すると、集中力からか

あんなにも周りの音が聞こえなくなるなんて…

家ではあんまり意識したことが

なかったので俺はお昼休みが終わる

チャイムに気づかずに…気づいたときには

授業か始まっている時間に

なっていた…あれは本当に

どうしようかと思った……まぁ結果は

授業が終わるまで待ちそれから

しれっと休み時間に教室に戻った、

けれどこれもヲタクだからなのか…

他のクラスメイトや先生からも

居なくなったことにすら

気づかれていなかった…。

人数が多いしいちいち出席を

取っているわけでもないので

生徒一人居ないところで他の先生は

休みだろうと思うのかもしれない、けれど

やはりクラスメイトは気づいて

くれてもよくねぇ?かと内心泣きながら

席に座った思い出を今思い出しながら

やっぱり俺は影の薄い

陰キャの最強ヲタクなんだなぁ〜と

少しだけ嬉しくも感じていた。

でも、それはそれとして

俺はここまで戻ってくる間に

割と珍しい事が起こったことを

ここにおまけ程度に引っさげて

見ることにする……。

あれはほんの5分前、

そろそろ教室に戻った方がいいかなと、

階段を降りたとき丁度目の前を女子が

通っていったのだ。

俺はそれになんとなく

好奇心が掻き立てられ素早く階段を

駆け下りるとその人が歩いて行った

方向を見た、すると

その先で女子が派手に転んでしまった…。

そして女子はゆっくりと起き上がり

俺はそれを何とも言えずに

見ていた、すると足首を捻ったのか

足首辺りをさすっている様子で

ふとその光景を眺めていた俺としっかりと

目があってしまった……。

あっ…という声思わず漏らす、

そしてすかさず恐る恐るではあったが

聞いてみた。

「あの…大丈夫ですか…?」

あっ…という顔をして耳を真っ赤にして

うつむくその子に俺は近づいた。

「派手に転んでたから…ごめん直ぐに助けに行けなくて…」 

謝りつつゆっくりと近づくと

彼女は俺の方を見た。

「あぁ…いえ…大丈夫です……」

明らかに恥ずかしそうにしているが

それよりも足が心配だ。

「足、大丈夫?抑えてたけど痛いの?」

「あ、はい…少し」

「立てる?」

そう言うと俺は彼女に手を差し伸べた。

「…」

「あ、もしかして嫌だった……?」

「いや、その…いいの?」

なんだかよそよそしく聞いてきた彼女を

見ていると俺はなんだかずっと前に

似たような事があったことを思い出す…

これも昨日父さんの知り合いの

おじさんと話したから何となく

思い出したのかもしれない…。

小さくて泣いていた女の子、確かあのときは

鬼ごっこで…とそんなことを

思い出しそうになっていると目の前にいる

女子が俺の手を取った…。

「あ…、うん、勿論」

そうして座っている彼女に手を添えながら

立ち上がらせると、丁度

チャイムが鳴った。

「保健室いく?」

「ううん、授業抜けて来てたし

 このまま戻ろうかな…」

きっと少し痛むんだろうけど

彼女が言うなら別に無理強いするほど

気が使えない訳ではない。

「そっか、なら俺も教室戻るね」

そう言い残すと俺はすぐ教室に

戻ろうとした…すると彼女はこんな俺に

笑顔でお礼をいってきた。

「ありがとね、助けてくれて」

「いや…俺は別に……」

人からしかも女性からこうやって

お礼を言われたことなんて

今までなかったから妙にむず痒くて

その場から逃げたくなった。

「ほら早く行かないと授業始まるよ、」

恥ずかしさが先行して俺は

急かすようにして彼女を

教室に返そうとする。

「うん、そうだね笑 あのさ…また会えたらそのとき…声かけてもいい?」

当然何を言い出すんだこの子は…

俺は少しテンパりながらも平然を保つ。

「…あー、うん良いけど」

「そっか、それじゃまた会ったら声かけるね」

「あぁ…うん…」

「それじゃあ私……もう行くね」

そして彼女は俺に笑顔で手を振りながら

声に出さずに口だけでバイバイと

言い残して教室へと行ってしまった…。

何だったんだろうか…

ただころんだ人を見つけただけで

えらくカロリーを使った気がする。

そうして俺は今この席に座ったている…と

言うわけである…。

出会いとは一期一会と言うがこれは

何だか少し尾を引いて続く感じが

してならないと思う陰キャなのだった。




第二話「幼なじみのエトセトラ」


 玄関を開け帰宅した。

今日なんだか新鮮な1日だった、

久しぶりくらいに女子と話したし

それになんだかあの子とは

初めてあったような感覚がしなかった…

それもこれも昨日あんな話をしたからで

特に因果関係はないと思う。

ただ…なんであんな昔の記憶が

蘇ったのか…今まで知らなかった

子供の頃記憶…小さな俺が小さな

女の子に手を伸ばし差し伸べてる

記憶…なんであんな鮮明な記憶を

忘れていたのか…まぁ、なんせによ

今日は割とつまる1日になったんじゃないかな。

玄関からそのまま自分の部屋へと

いってカバンをおいて着替えを取り

風呂場へと向かった。


お湯に浸かり顔を洗うと

またあの子の言葉を思い出す。

「それじゃ…また声かけるね」

その言葉がなんだか久々で

最近でした一番まともな会話だったと思う。

ショートの髪に透き通るような肌…

少し細身の彼女の笑顔は

本当に嘘一つない感じがした

それすごく良くて

あと…黄色のパンツ……それもよかった。

ころんだ時に一瞬見えた色だから

より鮮明に覚えてる、

あんまりこういうのは良くないと

分かってる……けれど健全な

男子高校生の前ではソレはとてつもなく

惹かれるものであった。

俺は湯船に顔をつけて

またその時の光景を思い浮かべて

少しだけニヤけてしまった…。


そしてそれから風呂を上がると

飯を食べる、そのあとすぐさま

冷蔵庫から取ったサイダーを片手に

自分の部屋へと向かう。

机につくとスマホを取り出し

昔のアニメを漁っていた。

ジャンルはラブコメと恋愛系…そして

好みの奴を見つけると

俺はそれを再生し夜通し見てしまった…。

気づいたときには深夜1時になっており

まだ途中ではあるけれど

今日はそこでやめた。

布団に入り少しだけ

考える……。

「また……会えるのかな…」

そう一言何気なく呟くと

少しだけ会えたときの想像をしながら

俺はいつの間にか眠ってしまった……。





 最悪…。

コレは予定外……俺はその時

ある危機に直面していた。

手にしているスマホには

ロスト・ワールド〈アリス・フローイ・フレデリカ〉のスピンオフオリジナルデザイン

妖精の加護モードのフィギュアと

さらに初回予約限定版には

〈ウォリアー〉のフィギュアが付属するらしい…………………。

きっとヲタクなら

俺が今この瞬間どれだけ焦っており

歓びとその幸せが導く凄まじき

辛辣な現実を良くご理解できることだろう…。

でも、ヲタクじゃないいわゆる

非オタの人達に説明しておくと、

先週から詳細不明で

制作が進行中のフィギュアがあり…

それが今回俺が見ているフィギュアである。

そのフィギュアは

とてもフィギュア界では名のしれた

有名なブランドであり

そのディテールの美しさと造形の

細かさからとても高い評価を持っている。

そのブランドが今回

アニメ「ロスト・ワールド」キャラフィギュア化計画第三弾を発表した。

それが今俺が見ているフィギュアである。

先程も言ったようにこのフィギュアの

造形や色彩はとてつもなく

精密で現代に生まれし錬金術とでも

呼べてしまうほど革新的なフィギュア……

勿論値段の方もお察しで……

〈32000円税別〉である…。

神よ……なぜ人間はこうも簡単に

幸せになることを許されてないのだろうか…。

とても高校生に三万のフィギュアは

出が出せない……勿論貯金が

なくはない…けれどそれもあわせても

今後のイベントや映画…グッズの事を

考慮するとイチ推しキャラとはいえ

うろたえてしまうのが現状である。


さぁ……どうしたものか…、

オレは机の上にスマホの画面を伏せた

状態で腕組みをし考えた…。

めっちゃっっっっ……ちゃ…考えたの、

でもね、あのさ…無理なものは

無理なのですよ…小生長らく

原作(ラノベ)からこの作品を

おっておりましてこの作品は小生の

中学校の生きる意味だったのですよ…、

この作品に出会ってヲタクに

なったと言っても過言ではなくて…

並々ならぬ想いがあるわけですよ。

じゃあ…まぁ…買えよ、と思われる

方もおりましょう…分かってはいるのです。

きっとこれから少し先の私が

どの様な行動に出るのか…もうすでに

きめられているようなモノなのです。

…けれど、それは少し先のはなしになるかも

なので今回は…その…まだ

発売前だし…ほら…だから………………。


見送ります─。


そして俺こと小生は

サイトからリダレクトしたあと

深いため息をつきながら

机に突っ伏した。

それからの時間はなんだか記憶が

あまりない…授業を受けていたのか

何なのか全くそんなことどうだってよかった、

今はホント金銭的な現実から

俺がリダレクトしたい訳ですけど……

そんなこと言ったて、人生

頑張れは大概何とかなるのが関の山、

まぁ…愛するアリスちゃんの為ならば

どんな事だってえんやこらである。

まぁ…少し嫌だけどこの方法しかないだろう。

そうして最後の授業が終わり帰りの

挨拶が終わると皆一斉に部活へと

向かっていった。

俺はというと別に部活動には入っていない、

普通なら入る方が色々と得なのだろうが

そんなの俺のやり方じゃない、

俺には放課後にゲーセンに行き

ランク上げをしなければ行けないという

ちゃんとした職があるがゆえ

そんな仲間内でやんややっている

場合ではないのだ。

仲間なんて……もう要らないしな。

一人だって楽しいのがヲタクの

最大の強みだ!だから

俺は今からゲーセンへと行く!!


最悪だ……何なんだ…。

今日は俺に対する嫌がらせか?

死んでやろうか?ロンギヌスで貫かれた

様な衝撃を胸に受け俺はその場に

膝から崩れ落ち四つん這いで落ち込んだ…。

理由は目の前に置いておる

俺が昔からやっている、これまた

アニメのゲームで、ザックリ言うと

女の子同士が武装して戦うゲームです。


それがですよ…その最高の

〈ガールズウォーズ〉がなんとですね、

メンテナンスらしいのですよ………

ありえなくね?ふざけてんの?

舐めてんの??俺さ現実逃避しにきたのに

なんでこんな現実浴びせられてんの?

俺は内心怒りながらも

その感情を深いため息で流した。

ゲーセンを出ると

宛もなくただ歩いた、アニメショップは

この前行ったしほしいものが

あってもこれから

アリスちゃんのフィギュアを

あらゆる手段をもって手に入れなきゃ

ならない、なのでゲーセンで

使うはずだった500円を

握りしめなにかないかと少し考える。

でも…まぁ、そんな考えた所で

無いことは無いんだけど……と、その時

ある事を思い出す。

「…ヤバ、本返却日今日だったわ……」

また一つ深いため息と共に俺は

学校に戻ることにした、借りた本を

返すために。



下駄箱で靴を履き替え急いで教室へと戻る、

そして机から借りていた本を取ると

そのまま早歩きで図書室に向かった。

夕方の5時頃…もう校舎内には

吹奏楽部の演奏の音以外は何も聴こえて来ず

いつもとは違った少し不気味で

静けさを感じていた。

そんな雰囲気に当てられながら

ようやく図書室前につく。

扉をゆっくりと開け中に入った、

室内には見たところ人影はなく俺は

何となく大人しく足音一つたてないように

そのまま返却ボックスに

本を置いた。

「ねぇ、」

「うわぁッ!」

突然後ろから女子と思われる

声に話しかけられて思わず声を上げて

驚いてしまった。

「はぁ!なに?!」

少しキレ気味にフッと後ろを振り向くと

そこには昨日廊下で転んでいた

女子が立っていた。

「ごめん、脅かして…!」

焦るようにして謝ってくる彼女は

手に大きめの本を持っていた。

「あ…いや、大丈夫ごめん大声出して」

少し冷静になり彼女に謝罪する。

「……なにしてたの?」

「なに…あぁ、本を返しに来たんだ」

「そうなんだ…なに借りてたの?」

返却ボックスから本を取り彼女に見せる。

「コレ…深海魚図鑑、そっちは?」

「私は…授業で感想文書くことになって…

 樋口一葉さんの大つごもりでやろうかなって」

なるほど…目の付け所がいい。

「なるほどね、短編で感想文書くにはいいかもね」

「あんまり分からずに借りてたけどそうなんだ……よく読むの?小説とか」

「アハハ…まぁね」

ごめん…半分というか8割ラノベです…。

ちなみに俺も小学校の頃

夏休みの課題で読書感想文に

同じ大つごもり選んだから知ってただけです。

「へぇ…凄いね」

口に手を当てておしとやかに

ニコリとする彼女はさながら

小説の中のヒロインのように上品な

美しさを感じた。

「あのさ、先生は?君一人だけ?」

周りを見渡しても彼女以外やはり居らず

返却ボックスに本を戻し聞いた。

「うん今はいないよ、なんか呼び出されたみたいで……」

「そっか…」

聞いた割に適当な返事しか返せず、

日頃から他人との会話に慣れていないのが

仇となって喋る事が無くなってしまった。

本当ならここでいい具合の話題を

放り込んで会話を弾ませるのが

紳士の習わし何だろうけど…でもやはり

〈私はシャーロックホームズの生まれ変わり〉

と違って俺はそんな器用な

英国紳士的な事は出来なかった。

ちなみに、〈私はシャーロックホームズの生まれ変わり〉は、

ルルル文庫から出ている

累計発行部数27万部の

ミステリーコメディーのライトノベルである。

そのタイトルの奇抜さとは裏腹に

ミステリーというだけあって

秀逸なトリックと笑いがあり

中だるみすることなく読める

最高のラノベであります。

内容は…と、こんな事を考えている

場合じゃない…何か話さなければ……。

「あのさ……」

すると突然彼女が伺うように

なにやら聞いてきた。

「え?…あ……なに?」

「名前……聞いてもいい?」

…そういえば俺はこの人の名前も

自分の名前も言ってなかったしまだ聞いてすら

いなかった。

「名前ね、そうだよねそういえばまだ言ってなかったよな…笑 タキヤって言うんだけど……君は?」

「タキヤくんか……私は

  〈茅野 サヤカ〉って言います。」

必然なのか偶然なのか…

確かに彼女はそう言った。

こんな事…ラノベ主人公じゃないんだから

俺は真のヲタク、誰からも

愛されず……ただひたすらに愛すだけ…

地味で陰キャで人から気持ち悪切られる

厄介者…それが俺、なのになんで

確かあのときおじさんは

家の近くのマンションに引っ越してきて

娘の学校はこの俺のいる

学校に転校してきているとは聞いてた。

もしあったら色々と気にかけてほしい

的なことを言われたのも覚えてる。

でも友達も居ないし

誰かにこの…茅野 サヤカという

人物の事を聞くこともなかった、

そもそも聞く気もなかったし

会わないなら別にそれでいいとも

思っていた…でも今こうして

目の前には俺の…いわゆる

幼なじみが立っていて─。

「あのー、タキヤくん?」

まずい…少し動揺して考え過ぎてた…。

「ん?なに、」

「全然喋んなくなったから大丈夫かなって、」

「あー、、全然?何もないよ」

というか…ちょっと待てよ?

何だかおかしい…この子茅野 サヤカは

俺の幼なじみに当たる人で

昔遊んだこともある……はず、

なのに何で…俺は名前を忘れてたけど

サヤカ…ちゃんも、忘れてるのか?

まぁ、幼稚園の事だし

名前聞いても分かんないなんて

俺がそうだったしそもそも

やっぱりサヤカなんて子と遊んだ

記憶はないしサヤカなんて

名前呼んだこともなかった。

「あのさ…俺の名前初めて聞いた…?」

「え?…そうだけど、それがどうかしたの?」

まずいコレは俺のこと

本当に分かってないらしい…。

どうしたものか、ここで

幼なじみだよ、といってみるか…

それともいっそそんな相応しくない

モノは箱にでもしまって

彼女とはと昨日あったばかりの

友達でもいいんじゃないか………そう、少し

思った。

「その…さ、実はこの前君のお父さんがうちに来て、君と昔同じ幼稚園に俺が通ってたみたいで……その、」

「………」

ふと俺は彼女の目をみた…すると

その目には何だか驚きと

同様的なモノを感じた。

「大丈夫…?ごめんね、急に変なこと言って」

「…ううん、大丈夫ちょっと考えてただけだから……君が……だからタキなんだね、」

フーっとため息め吐く彼女は

机に本を置き椅子を引きだすとそこに

座った。

「…タキ?」

思わず彼女の口から出た、俺の家での

親からの呼び名を疑問形で聞き返した。

「昔ね…一緒に遊んでた男の子がいてね…

 その子の名前がタキって言って、まさかあだ名だったんだね…笑」

クスッと微笑み視線を落として

髪をかき上げた。

「あー…多分そんとき自分のことタキって親から呼ばれてたからそれで自分のことよく、タキって呼んでたかも、」

「そうなんだ、でもこれでようやく会えたね…

私あのとき君に助けられてそれでずっとちゃんとしたお礼してなくていつか会えたらって、で今回お父さんの転勤でまたコッチに帰ってきて、会えたらなって結構いろんな人に聞いたけどみんな分かんないって─」

おい、俺ってホントどんだけ友達

いないんだよ…我ながらその

影の薄さにはドンびくな…。

けどこれも人とのコミュニケーションを

とらない俺に否があるし

もし誰か知ってたら結構早く

会えてたのかもな…というか

先生なら教えてくれただろうに…

というか先生まで知らないなんてこと……

いやまさか、そんな…でも

この前のヘッドホンしてたやつの時みたく

本当にいよいよ俺居ない存在になってない?

確かに生徒は多いし名前覚えられない

とかも、あるだろうけど…それにしても

存在忘れるなんてことあるの…?

「…そうなんだ、知られてなくてゴメンね」

思わず自虐気味に謝ってしまう。

「あっ…違うの多分私の聞き方が良くなかったんだと思うから…」

いい子だなぁ…我ながらこんなにも

いい子が幼なじみだったなんて…なんだか

ホント、勿体無いよな……。

「けどまぁ…アレだな…こんな形で再開するなんて…笑」

「そうだね……タキくん…って、タキヤくんなんだよね…笑 ごめん」

手を口に当てあっ…という表情を浮かべる。

「べつに、呼びたい方でいいよ?」

「そっか……それなら、タキくんで…」

恥ずかしそうにこっちを見て

ニコッとする彼女に俺も表情筋が

緩んでるのが窓越しのガラスをみて分かった。

「あ〜ゴメンね〜」

とその時、扉を開けて図書室の

先生が入ってきた。

「あっ、先生」

「あら…何してたの?」

「あ…ぼくは本を返しに…」

推しの強そうなそんな気迫のある

感じて俺は少し小声になる。

「そう、ごめねサヤカちゃんお留守番頼んで」

「いいえ、全然大丈夫ですよ」

「本いいの見つかったかしら?」

「ハイ、コレにしました」

こうして見ていると改めて彼女の

スペックに驚かされる。

誰とでも話せて気さくで、

あのときもこんな俺と普通にはなしてたし…

きっとこの子は凄くちゃんとしるんだろうな。

「ねぇ、タキくん」

「ん…なに?」

本の裏から紙を取りそこへ名前を

書いている彼女が尋ねてきた。

「今日ってさもう…帰るの?」

「あ…そうだね、本も返したし…うん帰るよ」

「それならさちょっと待っててくれないかな?」

手を合わせて可愛くお願いされて、

俺は教室までついて行った。

「3組なんだ…」

「そうだよ、なんか

 用事あったらいつでも来てよ」

「アハハあ…そうだね……」

いや、もし俺なんかが来たら

変なこと言われるでしょ、

高校生なんてみんな色恋のことしか

考えてないし男子が女子に会いに来るなんて

良くも悪くも変なふうになるから

悪いけど用があっても絶対に行けないよ…。

「おまたせ、じゃあ帰ろっか」

カバン片手にニコッと微笑む

彼女を見ると…なに放課後こんな

美人と一緒に帰ろうとしてるんだよ!と、

心の中のヲタクの自分が騒いている。

コノバカ!!ヲタクは

ハーレムモノの主人公に憧れ

決して恋愛とは縁がなく

ただ惨めに3年間をヲタク友達と

ゲーセンやトレーディングカードをして

終わっていくものなんだよっ!……的な。

そんな……ことを考えながら

彼女ともうほんど人がいない校舎を歩き、

下駄箱まで来ると靴を履き替える。

「あのさ…タキくん、」

「なに?」

向こうの下駄箱から話しかけられた。

「その……今日ケータイ持ってきてる…?」

何を言うかと思えば…当たり前だろう、

むしろ毎日持ってきているし

ヲタクがスマホを持ってないなんて

そんなの自殺行為だ。

「うん、持ってるけど?てかいつもたけど笑」

「そうなんだ…笑、じゃあさ……ライン教えてよ…」

………はっ?

「…えっ…?」

「…」

「ごめん…なんて言ったの…?」

思わず聞こえてたはずの事を聞き返した、

なんせ耳を疑う、一言だったから…。

「……だから、ライン」

「あ…あぁ…うん、持ってるよ」

なんだかただ連絡先を聞かれただけで

その場に変な空気が流れた。

「じゃあ…ハイ、」

靴を出してその場に座り履きながら彼女が

QRコードを出してくる。

「あ、ハイ…」

何も言わずに連絡先をを受け取り

俺は人生初の女子のラインをゲットした。

「…それじゃあ、なんかあったらというか…何もなくても連絡先してくれていいから、」

スマホを両手に口を隠して

恥じらうような彼女を見ると

なんだかコッチまでむず痒くなる。

「うん…」

どうするんだ…オイオイ…。

途中まで彼女ととくに意味もない話を

しながら彼女の住むマンション近くまで

行ってそこで別れる。

「じゃあ私…ココだから」

「うん、さようなら…」

俺は手を振ると彼女も振替してくる。

「またね…笑」

最後の最後まで、彼女は笑顔を

崩さずにこんな俺と楽しそうにしてくれていた。

あんな話し方で良かったか…

キモがられてはいないかとか…

そんな反省をしながら家まで歩いて帰った。

けれど……けれどけれど、

そんなことよりも……。

「可愛すぎるだろう……」

さっきの『何もなくても連絡していいから…』

とか『またね…笑』とかさ〜〜

ヤバくね?マジヤバくね??

顔に出しながらけれど声に出さずに俺は

歩道で四つん這いになり

幼なじみという甘美な響きと

あの美しさとそれに対するかのように

分かりやすく顔に出る可愛さ、

俺はきっと彼女の事を……

「好きになってんのか……?」

胸に手を当てシャツをグシャッと強く

握りしめ肌に爪の跡がつく感覚を

感じならが胸を抑えた。



家に帰った。直ぐに風呂に入った。

飯も食ったし…。

………分かってる、分かってはいる…ただ、

俺は目の前にあるスマホを机に置き

椅子に体育座りしながら眺めていた。

「俺からすんのか…?それとも…これはあっちから来るのを待つべきなのか?」

脳内で緊急会議を開きある決を採った。

それは…連絡する派と、連絡を待つ派…

「ありえないでしょ?待つなんてこの状況下で待つのは有り得ない!実際カノジョだったて何もなくても…と言っていたでしょ?」

「何を言ってるのかね!もし今連絡して返事が返ってこなかったことを考えると精神的負荷により、死んでしまうかもしれないだろう?!」

「確かに彼はヲタクだ、まともに女子と会話したことなんてないんですよ、そんな彼が恋の駆け引きなんて荷が重すぎる」

「大丈夫!当たって砕けるのも青春だよ!テキトウな返事が送ってガンガン攻めようぜ?」

「もし仮に連絡をしなければそれこそ彼女に変な誤解を与えかねません、本人はイイと言っているのですから、大丈夫焦らず長文なんてキモすぎるおよそ最底辺の男女の駆け引きさえしなければ…多分きっと……大丈夫。」

「あ〜もう!埒が明かん!!」

とその時だ、スマホに何か来た、

いつものサイトの通知でもなくメールでもない

振り返ればそこには緑色のラインが…!

急いでスマホに近寄り適切な距離を取りつつ

間合いを意識して、

返信作業へと取り掛かる。

「なんてうてば…、いや落ち着け内容をよく見るんだっ…!」

ラインを開き来た内容を読む。

『ゴメンね〜返信遅れて(汗)今お風呂入ってて、今日は送ってくれてありがとう!』

オイオイ…コレがいわゆる……

女子のラインと言うヤツであるか…

なんとも若々しく、眩しすぎて

思わず背もたれに強くもたれかかった。

「フゥーーーーーーー」

とにかくまずは深く息を吐いた、

ブレイクタイムだ。まだ試合は始まったばかり

コレからが大事である、まず既読を

つけてしまっている為返信は

早いほうが望ましい…けれど

なんと返せば良いのか…。

机に肘を起き爪を立てカタカタと音を立てる。

「一体どうしたら………」

すると、また通知音が鳴った。

『ねぇ、明日ってなんか用事ある?』

その返信内容に思わず、「ファッ?」っと

口にしてしまった。

これは…もしかして……もしのかして………

いや…まだその決断に至るにははやすぎる、

落ち着けとにかく落ち着くのだ。

「よしっ……」

そう意気込むとスマホを取り返信する。

『いや、ないけど?どうかしたの?』

なんの捻りもないがこの場合

あんまり変に考えず

端的に追ったほうが良いだろう。

そして直ぐに返信があり…

『じゃあさ、久しぶりに会ったことだし、どっか遊びに行かない?』

ハイ!確定!!やっぱね〜笑

デートじゃん!久しぶりに再開した

幼なじみと、デートじゃん!!!

いいんですかねぇ…笑

神様?笑 こんなのヲタクなのに

女子とデートなんてありなんすか?

マジヤバくね??

「うわぁ〜〜」っと声に出さずに

悶える感じで夜中11時過ぎに部屋で

ドタバタと椅子に座り足をバタつかせた。

案の定、思いっきり肘を机の角に

ドンッと、勢い良くぶつけた。

でも、不思議とあんまり痛くなかった、

興奮していたからか分からないが

その膝からの痛みは

興奮と喜びで中和された。

『うん、そうだな。じゃあどこ行く?』

スマートかつ冷静に

着実な一手を取りに行く。

そして、それから数分間のやり取りの末

俺と彼女はゲーセン近くにある

ショッピングモールへと

遊びひいくことが決定した。

あくまでこれは遊びであって

まだ、事実上のデートには至っていない。

けれど、明日の動き次第では

大手をかけれるのかもしれない、なので

もう12時…遅い時間ではありますが…

机にあるパソコンを開き

検索バーに…『デート 喜ばせ方』『女子が喜ぶ方法』『オススメ デート プラン』など、

他数件などを検索メモを取ると、

ベットへと倒れ込むように横たわった。

深夜2時、コレでもう完璧だと

意気込み念入りに調べた

知識を往復してさながらそれは

羊を数えているかの如く…

俺はいつの間にか

深い眠りについてしまった…。




第三話「休日のエトセトラ」



─朝8時─


早い人には普通の時間帯なのかもしれないが

俺は違う。俺はオタクだ、

休日…しかも土曜日にこんな早く起きることなど

映画ぐらいなもんだ。

でも今日はひと味もふた味も違う…。

なんせ今日はデートなのである、でも…

そんなのは俺が勝手に決めている事に

過ぎない……。そもそも

デートとは男女が予定を立ててあそびに行く

ことを指す言葉らしい。

だから事実上はデート………。だけれど、

そんな言葉はサヤカとの話では

出てきていない…。

悲しいけれどコレは…久しぶりに再開した、

男女関係なしのこぐまれにある

懐かしい友達との交流なんだ……と、そんな

卑屈な感じでどうする、俺は

ヲタクだ。彼女なんて生まれてこのかた

いた事もないのに、こんな…女子と

二人だけっていう状況にまず感謝する

べきであろう。


そんな、前向きなのか後ろ向きなのか

よくわからん事を考えながら

カバンに色々と詰める。

ケータイを充電器から外すとポケットに入れ

お洒落目のシャツを羽織ると

俺は待合せ場所である、ショッピングモールの

前にある銅像の近くへと向かうことにした。



 家を出て数分後、サヤカからラインがくる。

俺はそれに返事を返すと少しだけ

はや歩きをした。

心臓はバクバクとそこまでおおきくはなく、

けれど確かに弾んでいた。

油断すると飛び出てしまいそうになる。

いつぶりだろうか……人とこんなに

話したのは……と、少しだけ昔の淡い思い出を

巻きもどす。ちなみに

彼女呼びから、名前呼びのサヤカになって

いるのはその方が色々とわかりやすい

からである、それと幼なじみなんだし

そもそも呼び捨てにしてたらしいし

まぁ…なんだ、ヲタクだからって

ちゃん付けとかさん付けするなんて事は

無いのでござるよ。


よし、それでは少し話を戻して

淡い過去編へ……アレは中学の頃

俺がまだアニメというモノに触れる前の事、

あの頃はほんとにただの無邪気な子供だった。

よく、小学生の頃父さんに買ってもらったサッカーボールで遊んでいて、

そのボールがボロボロになるまで

一人で練習ていた。そんなある日

中学生になると同時に父さんから

サッカー教室に通わないか?と言われた。

最初は少しだけ怖かったけど

サッカーがちゃんと出来る事に

喜びを感じてそれから中学の終わりまで

真面目にサッカーをやっていた。

ポジションはストライカーで、最初から

そうだった訳ではないがある時

コーチにやってみないかと言われ

やってみて…まぁそれから

ズッとそんな感じだった。

ゴールを決めるのはやはり

楽しく自分が絶対的なヒーロー的な何かに

なれているようなそんな感がしていた。

ほんとにあの時は楽しかった…色んな

人とも話してたしチームプレイにも

自身が湧きその感覚を今では

ゲームに応用している、だから

俺は別に人と話すのが苦手とかそんな

事はないのだ…むしろ、逆で好きなんだ。

何かを誰かと成し遂げる、その喜びは

人よりも知っている。

じゃあなぜサッカーを辞めて、誰とも

喋らず人と関わることを避けているのか…

それは、その思い出は淡くは無いので

今は辞めとこうかな……。


 そんなこんなで、もうショッピングモールの

前まで来た。銅像の下を見るとそこには

一人だけオーラというなんというか

とにかく何か別のモノを放っている

女性が居た。

僕は、唾をのみ込み

近寄よると足音で分かったのか

サヤカはコチラを振り向いた……その顔はとても

綺麗でキラキラと光る宝石の要だった。

「おはよ〜」

「うん、おはよう…」と反射的に答えた。

少し変な事を思い出したせいか…上手く

サヤカとのテンションをあわせられていない。

「早かったんだな」

少し早めについていた事に触れて

テンションを上げる時間を作る。

「あぁ、、うん…そうだね〜…笑」

なんだか照れくさそうにするサヤカ。

それから俺達は少しその場で

会話した後、モール内へと入っていった。



 それから10分後──。


 やはり、女子は凄いな………。

俺は彼女の後ろ姿を見てそう思った、

楽しそうに服を選ぶサヤカ…それはいいのだが

よくもまぁ、こんなに沢山の服の名前…?

呼び名?を言えるもんだな、

オフショルダー…?とか、タイトスカートとか

その他にも色んな言い方があるらしいが

俺は前半の2つで記憶するのを諦めた。

けれど、それもつかの間サヤカが俺に聞いてきた。

「ねぇ、タキくんはさ…どれが似合うと思う?」

オイオイ…その時俺は耳を疑った、

まさかこんなヲタクに…いや、今はというか

サヤカにはまだヲタクなのいって

ないんだったな……けど、

俺に聞いてもそんな…女子の服なんて

わかんないし……と、


その時、不思議な事が起こった。


俺の脳裏にある映像が浮かび上がる、それは

昔見たテレビでやっていたデートで

使える彼女を喜ばせる方法というモノで

その中で確か彼女が彼氏に

『コレとコレどっちが似合うかな?』ときいていた。そのときに

彼氏が返したセリフが…。

『どっちも似合うと思うよ』

これだ!これでイケる!間違いない!!

「あ〜、そだなー全部似合うと思うよ」

よし、決まったコレで万事解決だ!

「…そっか、」

アレ…?なんだか急に雲行きが…。

「タキくんさ適当に言ってない?」

ウソ…おい、あの番組ッ全然喜ばせられてないじゃん…!

「いや、そういう訳じゃなくって…」

「タキくんは何でもイイんだもんね、」

オイオイオイオイ、コレは…ちょっとまずいのでは?

「そんな事ないから、その…ホラさっき

 選んでたやつ…オフショルダー…?とかは?」

慌てて俺は手札にあるカードを切った。

「…さっきのか、」

なんだか少し膨れながらも服を取ると

試着室のカーテンに手をかけた。

「じゃあ…着て見るから待っててね」

そうしてサヤカは、カーテンを閉めた。

ふぅ……何とかなったな…けれど、

やはり女子は難しいな……。


 ─5分後─


 試着室前で待っていると

ゆっくりとカーテンが少し開き、その隙間から

サヤカが顔を覗かせた。

「…あのさ、」

「なに、どうかしたの?」

何だかもじもじとしていて掴めない感じだ。

「そのさ…見る?」

「え?…服を、」

コクリと何も合わずに頷くサヤカ。

「せっかく来たんだし、見せてよ」

そしてサヤカは、カーテンから

頭をしまいゆっくりとカーテンを全開にした。

「……」

『そういうことかあーーーーッ』

思わず心で叫んだ。

「どう…かな、」

どうって…そりゃ勿論可愛いっすよ

激カワですよ…けれど、なんだその

主張的に空いている肩と胸の隙間はッ!

控えめに言って……エロすぎる…。

「どう……なんていうか…その、」

「あぁッ…もう大丈夫言わなくていい」

恥ずかしがるのも無理はない、サヤカは

俺から目を背け胸を手で隠した。

「……ごめん、そんな感じの服だとは思わなくて」

「ううん…私もよく見ずに来たから…こんな胸が開くなんて分かんなかったから……」

オレは、服に詳しくはないけれど

これだけは言える、きっとあの服は

普通ならそこまで胸を主張するものではなく

ただ…たまたま…?サヤカが着てしまったから

だと思う…。要はサヤカの胸がデカイのだ。

「どうする…?買う…?」

伺いながらサヤカに聞くと

少し間を上けて口を開いた。

「…………いい…。」

そう…だよな……。




 はぁ……何だかどっと疲れた。

精神的に疲労したというか…なんというか…

嫌なわけではないのだが、初めて

女性の胸を間近で見るのは男からすると

かなり心を持ってかれるモノだった。

「大丈夫…?」

誘惑に囁かれ心を散々揺さぶられた

俺にサヤカは優しく心配してくれた。

「うん、大丈夫全然…」

「水とかいる?」

昔…子供の頃はサヤカがこんなにも

優しいなんて知らなかった…。

それかされていて忘れていたのか…なんにせよ

こんなに優しくて良い子と

これまで出会ってなかったのは

本当に損してると、あの頃の俺に言ってやりたい。

「ううん…ほんと大丈夫だから」

「そっか…じゃあなんかお昼でも食べる?

 12時過ぎてるけど…笑」

ニコっと笑うだけで不思議と場の雰囲気を

和ませるサヤカはなんだかアニメのヒロイン

みたいに見える…もしかして

能力者か、何かなのかとも思える…。

「そうだな、サヤカ」

あっ…やば…そう思い手で口を抑える

遂心の声で返事してしまったのだ…。

「……今、サヤカって言ったの…?」

やはり聞こえたか…どうする、嫌われたか…?

「ぁあ…ごめんなんか、反射で……」

無理だろこんな言い訳…いや、じじつでは

あるけれどなんか……後ろめたい。

「そうなんだ……」

下を向き手をモニュモニュし弄るサヤカ。

「…」

やば…なんか言わないと…。

「……嬉しいな」

……はっ?

「今なんて?」

思わず聞き返してしまう。

「だってずっとよんでくれなかったから

 呼ぶの嫌なのかなって思ってたの…」

予想街の答えに思わず安堵し胸を撫で下ろした。

「そっか、そうなんだ…俺呼んでなかったっけ…?」

「うん、呼んでなかった…と思う…笑」

クスッと笑い、ニコニコと嬉しそうにしている。

そんなに俺に名前呼んで欲しかったのか…

自意識過剰なのかもしれないが

そう思わせるくらい彼女は呼んでもらえて

嬉しそうにしていた。

「呼びづらいとかではないんだけど…なんか

 恥ずかしかったのかもな……」

「そうなんだ…それなら、次から呼んで」

「えっ、サヤカって…?」

「うん…そう呼んでほしい」

少し…と言うかかなり内心驚いた。だって

まさか呼んでほしいなんて言われるとは

思わなかったから…しかも名前を呼びすてで…なんて。

「そう…なら呼ばせてもらうけど…ほんとに

 いいの…?学校とかでも……?」

一応気になるので聞いておいた、いくらなんでも

最近転校してきた子に呼び捨ては

聞かれると何か言われかねない…。

「うん、大丈夫、昔みたいにサヤカって呼んで」

そうなんだ…俺は昔…サヤカいうタキくんの頃に

そう呼んでたのか…。

「なら、サヤカ…って言うけど」

「うん、それで良し!」

真面目な表情からニコニコとした表情まで

コロコロと変わるサヤカになんだか

凄く愛らしさを覚えた。

「…じゃあ、サヤカ」

「なに笑」

なんだか次に俺が言う言葉を分かってる様な

笑顔を見せ、そんなサヤカは今日一番

楽しんでいるように見えた。

「ご飯行こっか」

うん、と頷き立ち上がるサヤカ…俺も立ち上がり一緒にフードコートまで向かった──。



 アレからどれだけの時間が

過ぎたのか…それはもうどうでもいいのかも

しれない、それぐらい楽しい記憶しか

なかった。サヤカを家まで送ると

いつもの道を帰った。

帰り際色々と喋った中で彼女は

ずっと笑顔で笑ったりしながら最後に『ほんとにっ…楽しかった!ありがとね付き合ってくれて』そう言った。果たしてコレはデート

だったのか…昨日の調べてはそうらしいが

彼女的にはどうだったのか……聞けなかった。

けれど聞かなくても良かったのかもしれない…

もしそれで聞いてれば、気になる答えは

聞けるだろうが、その分答え次第によっては

気まずくもなりかねない…そんなのは嫌だ。

なので、俺は今後も彼女に

今日の日の出来事の名前を聞きはしないだろう……と、思いながら

夕日を見て帰路についた。




 ため息の出る毎日、そんな時もあっただろう。

けど、今はそうではない、1日1日が

とても重要でかつ…楽しいのだ…

ある日を覗いてはだか、

決して惚気ているのではない、強いていうので

あれば片思い…なのか。そう呼ぶのは少し

現実を叩きつけられるようで癪に障るが

まぁ、いいだろう。それにそんなのも

もう少しで終わる。全ては

来週の土曜…現在は金曜の9日間を含めて

俺は学校指定のネクタイを占め

人生大一番の勝負に出ようとしていた。

というか、そもそもなんで

俺がそんな事を考えたのかその

理由を説明せねばなるまい……アレは

今週の水曜だった、初めて二人で

遊んだあの日から1ヶ月が過ぎたぐらいか…

その日は放課後二人で遊ぶ約束をした。

それも少し話したいのだが…まぁ、ザックリ

言えば俺から誘ったのだ!で、その日は

夜唐突に『明日、放課後遊べる?』とラインを

送った。すると10分後ぐらいに

『いいよ!けどどこ行く?この前は─』と

まぁこんな感じで意外とすぐに返事が来た。

そして放課後、靴箱で待ち合わせた後

二人で歩きながら駅へと向かった。なぜ

駅かと言うと前の日に軽く話した時

電話越しにサヤカが『誰もいないトコとかないかなぁ~』と言ったので

駅からの電車に乗って少しすると

無人の誰もいない駅があるからと言うと

サヤカは即決で行きたいと言った。なので

駅に向かっていたのだ。

駅についたら切符を買いホームで

電車を待った。そして15分立つと目的の

電車が来て二人で乗り込んだ。人は殆ど

おらず、なんだか二人だけで

乗っているようだった…まるで

銀河鉄道の夜みたいだと思い少し切なくも

感じだ、そんなこんなで俺が言ってた駅に

つくとそこはやはり人一人いなかった。

そもそもこの駅自体が殆ど意味をなしていない

ので人なんて滅多にいないのは当たり前で

たまにこの辺に住んでるお年寄りが

使う程度なのだ。だからここに来ると

凄く不思議な気持ちになる。もう誰一人

この世にいない様なそんな不思議な世界観に

子供の頃来た俺は取り憑かれたんだ。

ここへは昔父さんと1度街の散策だといい

きたことがある程度なのだか、

それから今まで悩んたときとか

死にたいときによくここに来ていた……。

「ねぇ、コレってさ…線路降りたら駄目だよね」

思い出に良くも悪くも耽っていた俺に

サヤカ聞いた。

「あっ…うん、駄目だと思うけど…なに、降りたいの?」

「うん、この前見た映画に子供が線路で歩くシーンあって…」

「そっか、それなら……少し降りてみる?」

駄目ととは分かってる、こんなの

他の誰かに見られでもしたら大変だ、

けれどなんだかサヤカのその願いを

どうしても叶えたいな…と、そう思った。

「……ううん、やめとく」

ホームにしゃがみ込み線路を見つめ

首を振りサヤカは諦めた。

何とも言えないまったりとした時間が

刻々と過ぎる。

もういっそココで暮らしてもいいなと

思えるくらい穏やかで、テストや勉強なんか

にも追われずにいれる…二人だけの

空間…なんて、そんな事を思うだけでも

キモいよな…。

「あのさ……」

突然こっちを見つめ話しかけくるサヤカ。

「なに?」

俺は同じように目を合わせて聞き返した、

すると、サヤカは視線を少し外して

緊張気味に言った。

「タキくんはさ、付き合った事ある?」

「えっ?……ないよ」

少し溜まり視線をそらし空見る。

赤くなった空は何処か切なく感じる…けれど

俺の心はその反対でドキドキと

慌てていた。

「そうなんだ…私と一緒だね…、」

サヤカの何気なくボソッと呟く一言に

俺は思わず無言で驚き夕日を見るサヤカを

見つめた。

「……私と?」

思い切ってその話を広げてみる…怖いけど

踏み込んだらいけなさそうな感じもするけど

今ここでこの話を広げなければきっと、

もうする事がない気がしたから…だから

聞いた。

「あっ…いや別にっ…!

 ただ今私好きな人がいるから

 もし彼女持ちならアドバイス的なの

 貰おうかなって…!」

好きな人…その一言が引っ掛かる。

今たしかに好きな人がいるって……誰だ?

そいつは…そんな追求が頭の中を

全部侵食した。

「…アドバイス」

「あっ…ごめん何言ってだろ私、

 …だから…今のはその、何て言うか……!か」

慌てる彼女、何をそんなに慌てているのか

分かんないけどそんなのは今は気にも

出来なかった…俺は一体何をしてきたんだ…

勝手に舞い上がって勝手に恋して……

わかってたこんなにカワイイ子が俺なんかを

好きになるなんてありえないって…でも、

あんなに…ラインとか聞かれたり

遊びに誘われたら俺みたいなヲタクは…

心揺さぶられるだろ…!

しゃがみ込みあぐらをかい顔をうつむかせた。

「はぁ………」

「えっ…どうしたの…?」

オロオロと慌てて俺を心配する彼女は

優しいのか酷いのかもうよくわかんなく

なった…。

「いや…なんでも」

「なんでもって…どうかしたの……?」

恐る恐る聞いてくる彼女に

俺は笑って返した、限界を超えて

心からの声ではないけれど今ここで

彼女に当たっても仕方ない…どうしょうもない

なのでとにかく迷ったら優しくしよう…そう

思った。

「…ううん、ただ少し疲れたから座っただけ、」

「……」

「大丈夫、何もないから笑」

彼女の肩をポンポンと叩き笑顔を見せる

なんだかもうよく分かんなくなった、

彼女に好きな人がとか…勝手に恋したとか…

きっとそんな事ばかり考えてたから

こんなにも傷つくんだろうなと…だから

俺は今ある全部をなくしなかった。

虚しさも無力さも悲しさも絶望感も

すべて取っ払ってスッキリしたくなった。

そして、少しため息をつくと

ゆっくりと立ち上がった。

「帰るの…?」

「んー…そうだね、一旦立て直すよ」

そうして俺達は、帰りの電車が来るまで

ホームで待ち来た電車に乗り込むと

俺は彼女との何気ない会話をし、そして

別れ際自分なりの笑顔で手を振り駅で別れた。

そして次の日からはまた普通に学校で

話した、彼女は昨日の事をまだ気にしていたが

適当な嘘を並べると案外簡単に

理解してくれた。

ニコニコとしていて楽しそうに別の話題で

盛り上がる彼女、コレだ…これでいいんだ…

これがいいんだ。

この笑顔が観ていたいんだ…オレは、

少しモヤっとする点もあるが

それももうどうだっていい、

俺は決めたんだ…全てを曝け出すって

そうすればもう何も気にならなくなる

そんな誓いを胸に俺は今日、金曜から

土曜までに彼女に告白する事を決めた。

当たって砕けてそれでいて

やりきれば、失恋も少しはカッコが

つくだろうと…その思いを胸に俺はこの

無理ゲーを

プレイする事にした。






 先週の金曜から飛んで翌週の

木曜日…俺は悩んでいた。

一つはアニメのクジを何回引くか…

もう一つは、彼女(サヤカ)になんて

告白するのかいつ告白するのかだ。

「やべぇ~~…」

いつもの上り階段で放課後悩んでいると、

女性の声で話しかけられた。

「なーにしてんの?」

スマホから目を話すと目の前には

サヤカがいた。

「いや、ちょっとね…」

残念なことに俺はサヤカに好きとも

言ってなければヲタクを告白すらしていない

だから、何一つ言う事ができなかった。

「もしかしてエッチなの見てた…?」

ニヤニヤして、イジってくるサヤカに

少しキレ気味で言う。

「違うよ!そんなんじゃなくて

 欲しいものがあるけど買えないんだよ…!」

「そうなんだ、でどんなやつ?」

階段を上り俺の横に座ってくる彼女…

本当に好きな人がいるにしては

変だなと思う。

「どんなって…その、ヘッドフォン?」

全然違うし、そもそもヘッドフォンは

持っている。けどこれ以外いい

言い訳が思いつかなかった。

「へぇ~いくらぐらいの?」

「三万…くらいかな…?」

少々嘘っぽ値段だが…どうだろうか…?

「うわぁ…高いね…」

…なんとか信じてくれたみたいだ。

こうもなると俺の嘘が上手いのか

この子が純粋すぎるのか…少々

サヤカの今後が心配になった。

そんな他愛もない話をしつつ

俺はその日も告白の空きがあるかを

探った……けれどサヤカは、

委員会の仕事やら友達との約束やらで

なかなか放課後も遊んだりする時間は

前より少なくなっていった、

そりゃそうだ…。あんなにカワイイ子が

転校してきて友達が出来ないわけ無い…

きっと俺とあった時から気を使ってくれた

節もあるのではないのか…と、思いながら

今日も言う事はできずに帰路につく。

そして…金曜日になってしまった。

アレから1週間以上、サヤカの口から

好きな人がいると聞きてからもう

そんなにも経つのかと少し自分の

勇気のなさに不甲斐なさを

感じていたお昼休み、俺はいつもいる

屋上の階段に座ったいた。

「…結局言えないまま…か、」

階段に手をついて何もないボコボコとした

天井を見つめていた。

もう今日を逃していては跡がない…そんな

事は重々分かっている…けど、どうしても

言い出せない。

タイミングもそうだがやはり

勇気が出ない…今までの1週間だって、

言おうと思えば土曜日に遊ぼうよなんて

楽勝だ…でも……。

「でも…なぁー、いえないよなぁ…」

誘うのはまだいいが

告白なんてしたこと無い…コレはとんでもない

負け戦なんだ…。今まで簡単に

誘えていたのも〈告白〉がからむだけで

ハードルが上がり簡単に出来ない。

でも今日中にやらなければ…なんだか

一生できない気もしていた……。



 そしてソレから次の日の放課後まで

ダラダラと

考え、導いた答え…ソレは…。

「ハァハァ……いた…」

息が切れて死にそうだ…少々昔から

ブランクがある様だ、もう少し

鍛え直したほうがいいらしい。

「タキくん…?どうしたの?」

走ってきた俺を見て少し困った様にする

サヤカ、そんな君に俺はある事を今から

伝える…。

「あのさ…!明日予定ある…?」

息を整えながら朧気に聞いた。

「予定?……うん、無い……けど、それがどうかしたの?」

「…じゃあさ、この前みたいに遊ぼうよ…!」

きっと普通に言えばもっと楽なんだろう…

でも、どうしてもマジになってしまう。

こんなのいつぶりだろう…負けると分かってて

勝負するなんて……。

「うん…いいけど、大丈夫?」

「…なにが?」

「汗凄いけど…わざわざ走って来たの?ラインとかで連絡してくれればいいのに…」

そう言われるとそうだ…。

わざわざこんなことする

必要なかったのかもしれない…でもな、

男には必ずやらなきゃいけない時ってのが

あるんだよ…サヤカ、負けると分かっていても

最後までボール蹴ってさ…試合の終わりまで

突き進んで駄目だったとしても

諦めないで、確かに決着をつける…。

それが大事なんだ、だから俺はサヤカが

面と向かってお願いされたら断れない子だと

わかった上で、なにか大事な事が

ありそうな雰囲気を醸し出しながら…

わざわざ教室から走ったりなんかして

遠回りな事をした……けれどもう

これしか方法がなかった……卑怯だと

思われるかもしれない……でも

どうしても明日決着をつけたかった。

自分で決めたルールをちゃんと全うしたかった

だからこんな事をした。

「あぁ…そうだよね…ごめん」

「別にいいけど…」

息切れを強く押さえ込み

顎を伝う汗を袖で拭い取る。

「じゃあ、遊ぶ場所はラインで送るから…ハァ」

「…うん、わかった」

少し不思議そうに俺の方を見てくるが

まぁ、いいだろう。

コレで明日俺とサヤカが遊ぶ事は確定した

あとは…何をするかだな……。




第四話「彼女のエトセトラ」



 私、茅野 サヤカには好きな人がいる。

その人は昔のいわゆる幼馴染…でも

その人とはもうずっと会えていなかった。

でも、高校生になって昔住んでた場所に

戻ってきて通っていた学校で

なんと奇跡的に再開できた。

本当…嬉しそうで泣きたかった、

けれどそれだと彼に引かれそうだったから

何とか我慢した。

そんな再開を果たして私は今現在彼と

たまに遊びに行ったりしている。

ほんと…この時間が一生続けばいいのに……。


「ねぇ、サヤカ?」

「ん?なに?」

私の肩をポンボンと叩くのは

クラスメイトのリエ、リエとは

この学校に来てから暫くして仲良くなった。

少し騒がしくて、でもそこが楽しい

最高の友達。

「今日さ、遊び行かない?」

「うん、イイよどこ行く?」

「そうだね〜」

ほんと、楽しそうに話すなぁ…

私もこんな笑顔が欲しい。

この子みたいに言いたい事

素直に表現できてたら

もっと正直に好きって伝えられたのかな…

あのとき口を滑らせて

タキくんに好きな人がいるなんて

変な誤魔化ししたしいっそ勢いで

あんとき告っちゃえばよかったなぁ…。

「サヤカ聞いてる?」

「あっ…ごめん……」

目の前で手を振られて私はふと

割れに帰った。

「なに〜もしかして好きなやつの事

 考えてたの?笑」

ニヤニヤとしながら揶揄うように言ってくる。

「…」

「ウソ…マジなの?」

図星を付かれ黙ってしまい自分でも

分かるくらい顔が熱い。

「えっ…誰なの?」

「……言わない」

目線を彼女から外しそっぽを向くか

リエは私の椅子の横に来て

しゃがみ面白そうに目を合わせてきた。

「ねぇ、誰なの〜?」

ツンツンと私の足を突いてくるリエ。

「絶対に言わない…!」

私はもうはずかしくて燃えそうになった。

「え〜せっかく親友だと思ってたのにな〜」

「ねぇ〜それズルい」

リエは私の情に訴えかけるように

ゆっくりとそう言ってきた。

けれど私は休み時間が終わるまで

口を割ることはなかった。

そして、お昼休みになってから

外でリエと他の女子とでお昼にしていた。

「ねぇ聞いて、さっきねサヤカがさ──」

早速私の事をネタにするリエ、そして

休み時間の一連を話してしまい

他の子たちにもからかわれる始末。

でもなんだか最高にJKしてる

自分に凄く強い充実感を覚えて、

もういっそこのまま好きなんて

言わずに大事な思い出にしてしまおう……そんな

事を思い始めた。


 暫くして他の子達とも一緒に

明日、土曜日に隣町のショッピングモールで

買い物とかして遊ぼうとなった。

お昼休みももう少しで終わるので

お弁当を片付けて皆で教室へと戻る。

その帰り道…ふと屋上の登り階段から

タキくんが降りてきたのが見えた。

思わず声をかけそうになったけど、

やっぱり辞めた。そんなに深い理由は

無いけれど…何となく出来なかった。

なんだろう……このモヤモヤした感じ

ワタシハソノモヤモヤを抱えたまま

教室へと戻る事にした……。


教室へと戻り授業の準備をして

真面目にノートをとる、けれど

何だか頭に入らない

さっきのモヤモヤがまだ残っている。

そう言えば最近あんまり

タキくんとは話せてなかったなぁ……

昨日少し話せたけど前ほどちゃんと

話してはない気がする、これが

もしかしたらモヤモヤ原因な気がする。

割とあるあるなのかもしれないけど

仲良くしてる人ほど合わない期間ができる

だけでなんだか一気に話なづらくなる的な

そんな感じ…でももしコレが暫く続いて

もっと疎遠になっていったら

またタキくんと離れる事になりそう……

それは絶対に嫌だ。初めて好きになって

今の今までもずっと好きだった。

そんな、気持ちが神様に伝わったのか

私の願いは叶った、本当に

嬉しかった。だから今日もしまた

タキくんを見かけたらちゃんと

声かけよ…うん、そうしよう。

「おし、じゃあ……サヤカ!」

「はいっ!」

急に先生に呼ばれ私は思わず

大きな返事をしてしまった。

「コレ、和訳すると何て言うか答えてくれ」

「え……あ…その………」

「なんだ?分からないのか?」

「……ハイ」

クラスがクスクスと笑いに包まれる、

すると後ろの方から囁くように呼ばれた。

「サヤカ……」

それはリエだった。

「なに…?」

「ドンマイ笑」

ニヤニヤとしながら私にピースしながら

言ってきた。

「うるさい…!」

私もそれに返すように囁いて怒った。

そしてその授業は何とか終わり

次の授業へ、そしてそれも終わると

ホームルームになり

皆で帰りの準備をして先生の話を

聞いて挨拶をするとみんな部活へと向い

始めた。

「サヤカはこのあと部活?」

帰りの挨拶が終わるとすぐさま

リエが近づいてきた。

「うーん、それ何度けどさ…」

「えっ?もしかしてまだ部活きめてないの?」

「そうなんだよねぇ…中々決めれなくて、」

「えじゃあさ、もういっそ帰宅部にすれば?」

リエの提案は悪くないけれど

正直スポーツ系の部活に入っていれば

就職とか普通に経験として

残るからなるべく入っておきたい。

「そうだね、でもやっぱり

 部活やってれば何かと得になりそうだし」

「そうね…めんどいけどやっといた方が

 就職に有利とか聞くしね〜」

「だよね、そんな感じある笑」

「で…そんな私は今から剣道部に行ってきやす」

リエは思いリュックのような物を

肩から背負うとニコッと笑う。

「大変そうだよね…がんばって、」

「まぁそうなんだけどさ……めんどいよほんと」

困り顔でコッチを見てくるリエに

私は真面目な顔をしてあることを聞いた。

「あのさ…リエはなんで剣道部にしたの?」

「……なんで、そうだなぁ…

 兄貴がやっててそれで自然に成り行きで…?みたな」

「そうなんだ、」

なんだかリエらしい理由だなと思った。

私も成り行きでもいいから

早く決めたほうが良いのかな…。

「まぁ…私はそんな感じで決めたけどさ

 リエは自分がすきでやりたいッ!って

 思った奴やりなよ?

 一度決めたら付き合いとかで

 中々やめらんないし、ちゃんと

 決めて長々と続けれるやつにしてほうが

 イイよ…笑」

なんだか考えを読まれているのかと

思うほど鋭い感じだった。

普段は全然まじめな事言わないのに

こんな時はちゃんと親身になって

聞いてくれる…。

ほんと…いい人だなぁ……。

「……うん、じゃあそうする。ちゃんと考えるね」

「うん、それで良い!じゃあ私は…そろそろ

 行くからさなんかまたあったらいつでも言ってね…それじゃあ笑」

ドアの前で手振り颯爽と部活へと行くリエ、

私もちゃんと高校生活やらないと、

好きな人の事も…学業もちゃんと

両立させないとなぁ……。






 ソレから暫く私は考えた。

なんの部活に入ろうかと……でも、

実はもう本当は決めかけてあるけれど

私に出来るのか不安で決めかねてたモノ

それはテニスだった、昔よく

お父さんとテニスで遊んで

貰っていた。けどあんまり上手くなくて

伸びないから好きだったけど

真面目にはやってなかった、でも

さっきのリエの『リエは自分がすきで

やりたいッ!って思った奴やりなよ?』

の言葉で上手くなくてもやりたい事を

やろうと踏ん切りがついた。

なので先生から貰っていたプリントには

テニス部を書いた。

コレでやっと決めれた、後は

コレを職員室に持っていくだけ、

私はカバンを取りプリントをしまうと

教室を後にした。

そのときだった何かが後ろからカタカタと

足を音立てて近寄ってくる。

私は慌てて後ろを振り向くと

そこには息を切らしたタキくんがいた。

「ハァハァ……いた…」

「タキくん…?どうしたの?」

汗を流して凄く息が荒い。

「あのさ…!明日予定ある…?」

唐突すぎて一瞬考える。

「予定?……うん、無い……けど、

それがどうかしたの?」

……予定ならあった。けれど

なんだか物々しい雰囲気だし…もしも

ここで私が予定があると答えたら

何か重要な事を見逃してしまいそうな

気がした。

「…じゃあさ、この前みたいに遊ぼうよ…!」

そう言われて初めて約束して遊んだ時を

思い出す。

「うん…いいけど、大丈夫?」

汗を拭いながらまだいい切れが終わっていない

そうとう私に言いたいことだったんだと

思う…けれどわざわざこんな遠回り

な事…するのかな…?私はその疑問を

タキくんにぶつけてみた。

「…なにが?」

「汗凄いけど…わざわざ走って来たの?ラインとかで連絡してくれればいいのに…」

「あぁ…そうだよね…ごめん」

なんだかタキくんはわざとぽかった…。

「別にいいけど、」

「じゃあ、遊ぶ場所はラインで

送るから…ハァ」

「…うん、わかった」

一体何だったんだろう…わざわざ走って

来てラインせずにこんな回りくどい…

いくら好きな人でも少し

自分勝手だなと感じた。

一方的にあんなに真剣な顔で言われたら

無理でも大丈夫って言うよ……だって

それくらい私はタキくんの事が

好きなんだから、

だから今回だけだよホントに……。

「はぁ……リエに謝んないとなぁ……」

罪悪感がこみ上げる中私は

リエとの約束を破った事を反省した。





第五話「週末のエトセトラ」


 

 ベットの上に寝転んで俺は考えた

そして5分くらいしてスマホを取る。

画面にはサヤカのアイコンその下に

電話マーク、そうだ電話をするのだ。

「…」

無言のままただ着信音を耳に添え待った。

「ガチャッ……タキくん?」

「サヤカ」

正直なところ出てはもらえないだろうと

思った。

「なに、どうかしたの?」

「あ…そのさ、明日の予定を」

「そうなんだ」

「でも、そのまえにさ…」

「なに…?」

「ごめん…」

「えっ…どうしたの?」

「さっきはその…学校で無理やり約束させて」

「いいよ、別に」

「そう…?」

「…うん、大丈夫だよ」

なんたかいつもの明るい声

聞き馴染みのある彼女の声…優しく

大丈夫と言ってもらえた、

それで心が楽になる。

「じゃあその…予定なににする?」

「そうだなぁ〜」

ソレから暫く彼女と話した。

久しぶりのちゃんとした会話をした

長々とゆったりと、

焦る気持ちもありながら

でも落ち着いて。

そんな楽しい時間を過ごしていると

もう夜中を回っていた。

なんで、そんな時間まで

予定を決め悩むのかときかれれば

確かにそうなんだが…けれど

そういうのが予定ぎめの醍醐味だとも思う。

「でさ、タキくんと昔遊んでね

 その時に1回だけ他の子達とタキくんの家に遊びに行ったの」

「そうだったんだ、全然覚えてないなぁ笑」

「え〜びどーい」

「ごめんゴメン、でもそんな事もあったんだね」

「…あっ!そうだ」

突然電話越しに何かを思いついたサヤカ。

「なに?どうかしたの?」

「タキくんの家にしない……?」

「えっ……?」

「明日遊ぶの」

サヤカの提案に少しだけ驚く。

「ん?それ……大丈夫なの?」

「えっなにが?」

本人は今自分が何を言ったのか

理解してないらしい。

「あのさ俺一応その男だし…」

「あっ…!ごめん、そうだよね…!」

慌てた様に電話から声が聞こえる。

「いや…まぁ俺はいいんだけどさ」

「良いの…?」

「うん、良いけど…」

その時だった、俺の目にフィギュアが止まる。

そう言えばまだサヤカには言ってない事が

一つだけある、それは

俺かヲタクであるという事だ。

ずっと言おうとは思っていたが

何となく忘れていた。

別に隠しているという訳ではないが

なんだろう……それがそこまで

重要に感じてはいなかったのかもしれない。

この際サヤカが来たときに

言おうか、いや……いいのか?本当に

流石に引かれないか…?

その不安が脳裏によぎる……。

でも……今の時代そんな事あり得るか?

テレビでもアニメやアイドルなんて

もう一つの趣味的な立ち位置にあるぞ?

クラスでもアニメの話とかしてるし

問題はないはず。それに

話した事はないがサヤカが、今の今まで

そういう系統のものが苦手とかは

聞いていない、つまりは大丈夫…なはず。

でも万が一引かれでもしたら……。

「ねぇ、タキくん?」

「あっ…ごめん」

「なんで急に黙っちゃうの?」

「アハハ…ちょっと考え事してた…笑」

「そうなの?なら良いけど」

「……あのさ、サヤカ」

「なに?」

「サヤカはさ…アニメとか見るの?」

「えっ……そうだなぁ…まあ見るよ?」

「…ほんとに?」

「うん、見るよ?」

「そっか……笑」

「なに?それがどうかしたの?」

「ううん、ただ前から気になってたから」

良かった、本当に良かった。

アニメを見る人がアニヲタを嫌うはずがない

コレで大丈夫だ。

「そんな事気にしてたの?」

「まぁね、ところでさ本当に俺んちで良いの?」

一応本当に良いのかを確認する、

もしかしたら冗談の可能性もある。

「うんイイよ」

なんだか本当らしい。

「じゃあ明日家に…って場所分かんないか」

「いや、わかるけど?」

「ホントに?」

「うん」

「でも一応スマホで位置情報送るね」

「うん、お願い」

こうして俺の家、部屋にサヤカが来る事が

決定した。

なんだか少しソワソワする

人生初めてくらいに緊張し始める。

なんだろう、コレが恋なのか…?

まだ夜中なのにも関わらず

ソワソワして部屋の中を歩き回り

気がつけばいろんな所を綺麗にしていた。

「ふぅ…これくらいかな…」

普段からフィギュアのホコリ取りや

掃除なんかは書かせてはいないが

机の下にあるグラビアアイドルが

表紙の雑誌やそれらの際どい系の

ラノベ漫画一式はクローゼットへと

一時的に避難させた。

コレはアニヲタ関係なく

見られたくない。趣味がバレる。

まぁ、そんなこんなで

軽く片付けをしたあと

一回に降り、

台所の棚を開けると買いだめされた

消耗品の中から芳香剤的なのを手に取る。

なにやら臭いをこの中に吸収してくれる

らしい……なんで俺がコレをわざわざ

取りに来たのかは、男子なら分かる奴も

いるだろう…でも今回はあえてそれには

直接は触れないでおく……けれど

一部わからない人向けに平たく言うと

高校生くらいの男子には何故か

必然的に部屋がか臭くなる呪いがかかるのだ。

もう、これ以上言う事はあるまい。

俺は芳香剤を取ると

階段をゆっくりと音を建てずに上り

部屋のど真ん中にソレを設置した。

これで一晩寝ればなんの心配もなくなるだろう

しつこい様だがコレは

健全に見られたいとかではなく

ただ、部屋に入ったときに

サヤカを不快にさせない為の愛なのだ!

決して隠蔽などではない事を再度

忠告しておく。じゃあおやすみ。




 そして次の日

「……眠れないアル」

そう開口一番でネタをぶち込む、

今日はどうやらごきげんだ。

それもそのはず、好きな人が家に来るもん。

当たり前じゃん当然じゃん。

ベットから全然寝なかった身体を起こして

1階におり口を濯ぐ、そして

仕事の準備をしてる親父と遭遇する。

「お、なんだ?えらく早いな」

「うん」

テレビを、見ながらテーブルで

朝飯をだべてる親父。

「母さん、お茶残ってる?」

「はいどうぞ」

「あっ、、俺も」

と、お茶の入ったコップを貰う。

「そうだ、タキ今日お母さん

 1日いないからね?」

俺は思わずお茶をこぼす。

「えっ、なんで?」

雑巾を取り床に溢した

お茶を拭きながら聞いた。

「昨日ね、友達に急に誘われてね」

「ああ……そうなんだ」

コレは奇跡なのか災いか…どちらにしても

怖いが、なんと俺は今日家に一人らしい

と言う事はサヤカが来れば二人きり

ここまでのチャンス他にあるだろうか……

男なら皆こう思うだろう。

でもそんな……まだ、準備してないし

まぁ、早生まれだし買えない訳ではないが

というかアレって年齢関係あんのか?

いや……ともかくだ。

今この状況はチャンスとしか言いようがない。

コレをモノにできないほど

チキンでもない。なので俺は

朝早く、親には気分転換に散歩に行くといい

家を出た。


 しばらく自転車で移動をした。

一体なんで朝の散歩に行く奴が

サイクリングなんてしてるのか?

それはとても簡単な事だ。

それは、アレを買うにあたって

まず一番に考えるべきは

場所である、今住んでる地域で買うと

店側から警察…それは無くとも

近くの高校に連絡が行く可能性もある、

そんなのを前なんかで見たのを

思い出し今こうして自転車で

軽く遠出をしている。

しかし、本当に誰もいない

車はたまに通るが昼間ほど人気がない。

こんないい雰囲気の中だれが

下心満載でアレを買いに行ってる奴だと

思うか。

まぁ、思わないわな……。

そうして何やかんや考えて

俺は割と離れた普段は絶対に行かない

来たこともないドラッグストアに来た。

店に入ると人はおらず

空いていた、バレないように素早く薬コーナー

に行く、するとそこの反対側に

アダルトコーナーがある。

そしてその端にアレが並んであるのを

スマホの反射で確認する。

よし、準備は整った、人が大勢来る前に

早く終わらせよう。

せっかく自転車でここまで来たし

服もいつものジャージから

少し大人っぽい服にしてみた。

鏡に反射する姿はチャラい系そのものだ。

そんな手の混んだ事を淡々と

出来てしまうなんて……男子高校生の

性欲……否、恋は凄まじい。



 一応かごを取って適当な物を買いつつ

よく見る赤い箱のアレを手に取り

まるで万引きするみたいにすっとかごに入れた

なんだろう、犯罪なんて犯してないのに

申し訳ない……けど、

コレは万が一の時サヤカを守る為のモノ

もし、告白が成功したら勢いでなんて

事もあり得る、十分あるというか

そんな感じの話を聞いたこともある、

そうなった時に無責任な事はしたくないし

きっとアレが無くても

してしまいそうになると思う。

なので1%でもそういう可能性があるなら

あって損はない、というか

今回使わなくてもいつか彼女ができたときに

持っといたほうがいいのかもしれない

こんな言い訳を並べないと買えないのは

俺がチキンだからか?

そんな考えをグルグルと巡らせ

心臓がバクバクとするのを

胸に感じ、レジのオジさんの前に

買い物かごを置いた。

ピッピと、音がなる中俺は下を向いていた、

もしかしたらキレられたりしないのか?

それが怖くなっていた……。

「1250円になります」

「あ…はい」

ふと見るとかごにはレジ袋か入れてある。

支払いを終えかごを持ち袋に詰めてた、

勿論アレも入っていた。

コレは推測だがもしかしたら服装や

身長も168センチあるしそれで

この時間帯も相まって大人に見えたのかも

しれない……連令確認とかもなかったし

変に声をかられたりもしなかった…。

袋に詰め終わると

すぐに店を出て何にも追われてないのに 

立ち漕ぎでその場から逃げるように

走った。

帰り道誰もいない道路で軽く叫んだ。

なんだか、やってはいけない事をした感覚で

最高に楽しかった、笑いも止まらなかった。

もし今日告白がオッケーで

ヤれる事を想像したら童貞ながら

それだけでもう頭が壊れそうになった。

そうして息を切らしながら家の前の

信号まで来ると

そこからゆっくりと漕いで

家へと帰宅した。


 

 家に入るとリビングの電気がついており

急いで2階へと上がると

さっき買ったものを机の上において

すぐ風呂場へと向かいシャワーを浴びた。

なんだか凄く目が冷めていた

こんなにも興奮したのは

久しぶりだ、もう何だか嬉しさが滲み出てくる

まだ告白も出来てないしそれが成功した

訳でもない、けれど楽しくて堪らないのだ。

風呂から出ると髪を拭きながら

時に笑いそうになるのを抑え

2階へと上がった。

そして部屋に入り

すぐさま袋からさっき買ったジュースを出し

ソレを乾いた喉へガツンと流し込む。

暑い体に染み渡るジュースを内で感じ

悶ると

「キンキンに、冷えてやがる!!」と、

小声絵で噛み締めた。

そんな楽しみを終えたあと本題の

アレを取り出した、赤い箱には

数字が書かれていて

中を開けると黒くて四角いのが入っていた。

中を取り出し説明書を読む、

なんだか少し難しそうだ

けど最初だし手間どってもそれは仕方ない

もし使う時が来るならいいのだか……いや

いいのか……?

そんな意味不明な事を悩みつつ

アレを机の引き出しにしまいこむと

少し疲れたので

ベットに横になった。





 そうしてソレから数時間が

立った頃、スマホの着信音が響く

何事かと思い、飛び起きる。

どうやら寝てしまってたらしい時計を見ると

もうすぐサヤカがくると言っていた

時間だ、スマホを見るとサヤカからだ。

「ハイ」

寝ぼけながら慌てて出た。

「あっやっと出た」

「ごめん」

「もしかして…寝てた?」

「ううん、違うよ」

「ふーん、ま良いけどさもうすぐ付くからね」

「うん、待ってます」

そ言うとすぐに通話を終わる。

俺は急いでクシャクシャの布団を直し

寝癖を確認して服を着替えると、

丁度インターホンがなった。

玄関まで降りるとドアを開けサヤカを出迎える。

「…どうぞ、」

少し変な感じがする。

「……お邪魔します」

丁寧な感じでよそよそしく家へと

入るサヤカ。

一応部屋に案内する前に

リビングに案内しくつろいで貰う。

「懐かしいなぁ……」

リビングを見回しているサヤカを

見つつお茶を入れる。

「そんなに覚えてるものなの?」

「うん、私記憶力良いから」

確かにそう言われれば結構

成績も良いらしく、よくよく考えてみれば

うちの学校は偏差値が割と高いのだ。

転校してきたとはいえ

何ならの受験的なものは受けてるはず…

それを考えるとサヤカはわりと

とんでもない天才なのかも知れない。

「ハイこれお茶」

「ありがと、」

その後も少しだけ昔の事を話したり

しつつもうそろそろお昼なので

何か食べようか提案した。

「サヤカは、お腹空かない?」

「あ…うん割と空くかも、ていうか

 1つ聞いてもいい?」

「うん、良いけど…?」

何やら真剣な表情で聞いてくるサヤカに

少しだけ身構えてしまう。

「その…親……いないの…?」

あっ……そう言えば、自分の中では

いないものとして認識してたけどそういえば

いないのを伝えるのを忘れていた。

「あっ…ごめん伝え忘れてた」

「そうなんだ、てっきりいるものだと……」

なんだか改めて考えると

変な感じがし始めた。

「そうだよね……ごめんねなんか…」

「ううん、全然…ただその…二人きりなんだなって……」

さっきまで楽しく気兼ねなく話していた

空気が一変して気まずくなるのが分かった。

「……そうだね」

「もしかして…わざと……?」

「いやいや!まさかそれはッ…!」

サヤカの一言に思わず立ち上がり

必死に否定した。

「だよね…ごめんからかっただけ笑」

ニコニコと笑いながら俺をおちょくった

だけだったらしい。

「なんだ…良かった笑」

思わずサヤカに釣られて笑ってしまう。

「じゃあなんか食べる?一応

 ピザとかでも良いけど?」

「そうだね〜じゃあタキくんが好きなやつ

 にしてよ」

「俺のか……じゃピザにするけど?」

「うん、お願い」

ニコニコするサヤカに

促され俺はピザを頼んだ。

暫くしてピザが来るとそれらを机に並べて

二人でテレビを見ながら食べる、

その時テレビを着けた流れでサヤカが

座るソファーへと座ってしまう。

横には学校一の美少女だと

男子たちが言っている

転校生の女の子が俺の真横に座っている。

これは本当に見るやつが見れば嫉妬も超えて

抹殺案件なんだろう、けれど

それを知る奴は一人たりともいない。

そんな独占欲じみた事を思いながら

サヤカと楽しい時間を過ごした。



 一頻り食べると、

二人でまったりとしていた。

「あっそうだタキくんの部屋見ていい?」

「えっ…あ…うんイイよ」

あれほど準備していたのに

あんまりにもこの状況に満足してしまい

肝心な所を忘れていた。

リビングを出て2階へとサヤカを案内する。

「…ここが俺の部屋」

少し緊張してきのが声に現れてくる。

「…楽しみです笑」

ニコニコまるで秘密基地に来た

子供のようなテンションになるサヤカ。

「じゃあ…どうぞ」

ドアを開け電気を付けると

サヤカはゆっくりと俺の部屋へと入ってきた。

「……凄い」

貯めた一言になんだか全感想が

詰め込まれている気がした。

「……どうかな」

「うん、思ってた感じといい意味で

違った」

「いい意味でってどんなの想像してたの?」

「なんかこう…ザ男子みたいな、

 散らかってる部屋を想像……して……て、」

そう楽しそうに俺の部屋の綺麗さを

褒めてくれてる時、何やら

サヤカの口調が途切れていった。

「……どうしたの?」

サヤカの目線の先にはフィギュアとか

ラノベが並んでる棚があり

それを見て何やら止まっている。

「コレ…ってさ…タキくんの?」

「……そうだよ」

明らかにまずい空気になっているのが

分かった。

「タキくんってさ…もしかしてオタクなの…?」

聞かれた事に答えようとサヤカを見ると

その目は何か軽蔑するような

よく昔ヲタクの人が向けられていた

あの頃の感じを連想した。

「……うん」

「そっか……そうなんだ…

 だから昨日アニメ見るとか聞いてきたんだ」

頭に手を起き髪を何度も触るサヤカからは

何か不穏な感じが伝わってくる。

「……」

そんなサヤカに俺は何一つかける言葉が

見つからなかった。

「……タキくんさ昔はさ

 よくサッカーとかやってたじゃん…?」

「まぁ…そうだね」

「幼稚園の時に選手になるとか

 言ってたよね……」

「うん…」

「でも、今じゃこんなになっちゃったんだね……」

こんなに………その言葉が胸に突き刺さった。

「それって……どういう意味」

聞くはずもなくもう分かりきってたが

敢えて…というか聞かずにはいられなかった。

「どういうって……その……凄く残念だよ」

「残念……」

あまりにも強すぎる言葉に俺は

たじろぐ。

「サッカー続けてなかったの…?」

俺はもう言葉なんて出なかったというか、

出せなかった。だから首を立てにふる

のが精一杯だった。

「そうなんだ……そこにサッカーボール

 置いてあったから続けてるんだって

 思ったのに……もうやんないんだ……

私ね実はタキくんの事が好きだったの」

「…えっ?」

サヤカのまさかの一言に思わず声が漏れる。

「でもね、もう違うみたい……

 サッカーやったりさ、

 元気で優しくてカッコいいタキくんが

 好きだったのに……どうしちゃったの…?」

「……」

「ねぇ……なんでこんなにキモい事

 してんの?女の子のフィギュアとか

 結構エロいしこの本だって

 やばいんでしょ?こんな

 変態みたいな事する人とは

 思わなかった……ホントにガッカリ」

もう何にも分からない……死にたい。

そう頭で何度も叫ぶ。

「ねぇ…何とかいってよ…」

言いたくなんてない…死んでも言わない

こんな目にまた会うなんてもう

嫌だ…嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ─。

「……」

「…そうなんだね……分かった

 もうタキくんは居ないんだね

 何処にも居ないんだね、じゃあもう

 忘れるね今日見たことも

 今までの事も、何もかも忘れるから……

 だからさ…タキくんも私の事

 二度と思い出さないでね……。」

彼女…茅野 サヤカは、そう耳元で

囁き凄く冷徹な視線を向け

ゆっくりと部屋のドアを締めた。

その音がカチャっと聞こえた途端

俺は膝から崩れ落ちると

大声で喉から血が出るかと思うほど

叫びそして、嘆いた。





 一体どれくらい世間だのか…

床に寝そべり天井を見つめる。

視線を変えて左を見ると

フィギュアが散乱している。

右を見ると叫んだときに垂れた唾が

床に広がっている。

声を出そうと思ってももう何も喋れない、

枯れたという表現が綺麗に収まるのが

分かるほどになにも発せない……。

どうすれば良かったのだろう…

それが頭の中で再三問うのだ。

好きだった人はヲタクを目の敵にしていて……

そして、学校一の美少女から好かれていて

両想いで告白すれば絶対に落とせる状況で

それが叶わなかった原因が

自分が心から愛するモノのせいで………

告白も……受入らることもなく

剰え好きな人に好きなものを

キモいって言われてしまい……尊厳自体を

否定された気分で俺は一体どうすれば

良かったのだろうか……。

もう何にも分かんなくなる、これ以上の

地獄あるか…?なぁ…どうにかしてくれよ!

助けてくれよ…!

もうホントに……殺してくれ。

こんな人生になるんなら、

何にも好きにならなければ良かった。

アニメも異性も何もかも……でも…そんなの……

「できる訳ねぇだろうがぁッ!!!!!!」

誰もいない家に響き渡る怒轟

そんな悲しくニヒリズムな心境でも、

やはりこれだけは脳力にあった。



 「ハァーーー………ヤレなかったな、、」




  

   ─終わり─




 あとがき


 こんにちは、山崎 藤吾といいます。

最後まで読んで下さりありがとう御座います。

今回の作品で初めてライトノベル形式の

作品を書きました。どうでしたか?

おもしろかったですかね?

正直な所あんまり書くのは上手くなく

脚本が得意なので設定や

伏線を頑張ってみたりして

意外性のある作品にしてみたいという

思いで書きました。

普通のラノベの要素も取り入れつつ

それを裏切りながら作るのにかなり

自分的には上手くいったと思います。

でも、ラストがバットエンドになり

結果的には胸糞悪い展開に

してしまい自分的には嬉しいのですが

やはり少しやりすぎた感はあります。

最後のセリフなんかも

主人公の自暴自棄な感じを出したいと思い

ああいうセリフを使いました。

もしかしたらシリアスな展開から

最後はコレか?と思われたり

主人公だいぶ病んでるなと思ったり

思わず笑ってしまったという方や

それ以外の事を思った方

いろんな人がいろんな感じ方をする

ラストになればいいなと思っております。

それでは最後に実は

ラノベ小説「e.t.c」2巻を

書こうと思っています。もし

今回読んでみて面白いと思っていただいた

のであればまた読んでみて下さいね

では、またいつの日か。



            著・山崎 東吾



            絵・山崎 東吾





















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ラノベ「e.t.c」 山崎 藤吾 @Marble2002

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