第4話 赤青リトマス

 ──銀二さんは昔、三日三晩休まず戦ったことがあるらしいです──





「「おれを!僕を!弟子にしてください!!」」


 買い物帰りに悪鬼と戦った日から二日後、青髪と赤髪の若い二人が早朝から銀二の下へと押し掛けてきた。

 青髪の熱血眼鏡が霜也そうや、冷静赤リーゼントが千秋という。



「え、いやぁ、嫌です」

 コーヒーを飲みながら露骨に嫌な顔をして土下座する二人に言った。


「お二人とも、顔を上げてください。わざわざ足を運んでもらって申し訳ないんですが弟子は…」

「いや、アンタじゃなきゃダメなんだよ!おれはもう、アンタのその強さに惚れちまってんだ!」

「そうです!あなたが今まで経験したことや技術、今の僕達には必要だと思うんです!」



 本当に困った、と二人の真っ直ぐな眼差しを見て銀二は頭を抱える。人を教えるのは向いてない、なんなら正直面倒だなとも思っている。

 

「少し考えさせてもらっても?」



 銀二は二人を最上荘に置いたまま席を立った。

 門を出ようとした時、八谷がたい焼きを片手に口をモグモグしながらこちらに近づいてくるのが見える。


「銀さん、昔のこと気にしてるの?」

「ん?いや別に」


 そう言いながら、八谷の方も向かずぼーっと散歩に出ていってしまった。

「いやその感じは気にしてるでしょ」


「あのー、八谷の姐さん」

「まぁまぁお二人さん。銀さんにも色々あるからさ。突然来てびっくりしたんだよ」

 霜也と千秋は勢いのままに来てしまい申し訳なそうに肩を落とす。

 二人はあの戦いを見てから、興奮さめやらないまま居ても立っても居られずアマテラスに連絡した。

 アマテラスは霜也からの連絡を受け、せっかくの若年者育成チャンス!このきっかけを潰す訳には!、と張り切った結果銀二本人に話を通さないまま今に至る。

「すみません八谷さん。こういう時僕が冷静にならなきゃなんですが…。今日は一旦帰ります」

 千秋と霜也は八谷に頭を下げ最上荘を後にしようとした時、八谷は二人を引き留める為に肩を叩いた。


「ちょっとさ、あたしとお茶しない?」



 ────

 銀二が散歩から帰ってきたのはあれから2時間も経たないくらいだった。


「お帰り。銀散歩はどうだった?」

「番組名みたいに言うな。それよりあの二人はまだ居るか?」

「うん、あたしとお喋りしてた。銀さん、もしも尾頭切おとぎりのことを気になってならさ」

「ん?なんで尾頭切が出てくるんだ?」

「へ?その事で悩んでたんじゃないの?」

 八谷は予想とは違った反応に呆気にとられた。


「気にはかけているが、もうこの歳だ。引き戻すなんてことは出来ない」

「もらった神器使えばいいじゃん」

「どうかな。それだけじゃ…」


 二人が話していると千秋と霜也は少し気まずそうに会話に割って入った。

「あのーすいません」

「おお、千秋くんに霜也くん。すまないね待たせてしまって。ちょっと一緒に来てほしい所があります」

「銀さんそれって」

「うん。なんかこの二人の実力図るのにいいのねぇかなぁって」





 ───

 日が傾き始めた頃、二人が銀二に連れて来られた場所は最上荘から少し離れた神代町の西側にある神社だった。山中にひっそりと佇むごく普通の神社でまだ参拝者もちらほら見える。

 参道を通り神主に挨拶を済ますと本殿の裏へと向かった。

 本殿の裏には幾つもの大きな鳥居がトンネルの様に並び、階段を下りると拓けた地の真ん中に大きな神木がありその前に小さな祠が見える。

 

「千秋くん霜也くん。今からこの達磨さんを転ばせてもらいます」




 ────


 暇潰しになっていれば幸いです!




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