終章

終章 どこかから聞こえてきた声

………………

…………

……


「おや、消える前に帰ってきちゃったか、格好悪いなぁ」


 もう口元ほどしか残っていない青白い光の粒子が話しかけてくる。


「自分が命を断ったあとは見ないようにしたんだ。後悔したくないからね。でも君は見たんだろ?」


 首を縦にふって肯定の意志を伝えた。


「あの枝から三つの光が別の世界へ向かうのを見かけたよ……。やはり、人というのは思い通りに動かせるわけないよね」


 光る粒子はこちらを向いて溜息をついた。


 残念そうな表情をしている気がする。


「自分の存在が消えるっていうことは概念でしか知らなかったんだ。だから、過去を見てしまうと人や物語の記憶から徐々に消えていってしまって、少し見づらかったかもしれないね」


 肯定とも否定ともとれない顔をすると、人だったと思われる粒子は複雑な顔をしているように感じた。


「この身体と精神は世界樹の栄養となってあの世界を拓くだろう。そして、この身には幾千、幾万、幾億という果てしない月日の先に輪廻が待っている。その時にはまた大事な人や君とも会えるかもしれない。それじゃあ、また会えたら良いね」


 その粒子は爽やかに笑うと、まるで最初からいなかったかのように消えていった……。


 先ほどまで見ていた枯れた枝の先には、一枚の葉が芽生えていた。


サイアイ End

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