この「「「サイアイ」」」という小説は、恋愛、現代ファンタジー、そしてミステリーの要素が見事に組み合わさった作品です。物語は【ルーラシード】と三人の女性の関係を中心に展開しています。
最初のキャラクターで『最愛』の主人公、レイラ=フォードは、若き大学生として事件の渦中へ巻き込まれます。彼女は無自覚なままに事件の核心へと近づいていく姿が印象的でした。展開がやや唐突に感じられるかもしれませんが、彼女の物語は後に明らかになる重要な要素と絡み合っていることが分かります。
次の『彩愛』の主人公ユキナ=ブレメンテは、【ルーラシード】に恋をしていた日本の女子大生です。運命に翻弄されながらも、自身の役割を果たすために英国へ向かいます。彼女の視点を通して、物語が一層複雑に絡み合っていく様子が描かれます。バックボーンがしっかり描かれることで『最愛』でのユキナの行動にも納得がいきます。私はこの『彩愛』の章のストーリーが好きです。
そして最後の『偲愛』の主人公ヨーコ=マサキは、【ルーラシード】とともに世界を巡る存在です。彼女の視点からは、事件の真相が明らかになっていきます。ちなみに私の全編を通しての推しキャラは、このヨーコ。しっかりしているようでギャップがあるヨーコが好きです。
この三人の視点が交わり合うことで、一つの物語が完成します。丁寧に世界観が構築されていて、重厚なストーリーを展開しています。物語は約束された悲劇ではあるのですが、悲しいだけではなく、読者の心を揺さぶる切なさが込められており、感動を味わうことができます。章を読み進めるごとに、キャラクターの成長や世界の秘密の解明に興味が湧き、その一筋縄ではいかない展開に引き込まれることでしょう。
ゲームにはさほど詳しくないのですが、ストーリー重視のゲームで全てのルートをクリアしたようなカタルシスというか、文字数以上の感動が得られる素敵な作品です。しかも嬉しい完結ずみ。年末年始の一気読みに、ぜひおすすめしたい一作です。