中原の雄・魏の国
さて
それは、魏の国です。
秦の東に位置し、当時、黄河の屈曲以西、函谷関以西に土地を領有していた国が魏の国でした
魏の国はかつての
晉の国が三つの国に分かれたのち、魏が一時期、中原の主導権を取ったように、『通鑑』は描いています。
魏の繁栄の時代を最初に迎えたのは文侯です。
魏の文侯は
いくつかのエピソードを紹介します。
ある時、文侯は群臣と宴を張って音楽を楽しんでいました。突然、雨が降ってきました。その時、文侯は慌てて馬車を命じて、街の外の森へと行こうとしたのです。
「いったいいかがされたのですか、酒を飲んで楽しんでいらっしゃいますし、天も雨を降らそうとしていらっしゃいます。なぜ文侯様はおくつろぎになられないのですか」
群臣たちが口々に止めました。
「私は
文侯はこうおっしゃって、宴会の行われている場から郊外の森、狩場まで行って、虞人に伝え、狩りをやめさせました。
付け加えますと、当時の狩りは勢子が獲物を追い立てて、三方(四方ではなく、一つの方角は獲物が逃げられるよう開けておく)から獲物を集めて狩るような大規模なものでした。準備などにも時間がかかり、それを
またこんなこともありました。
韓の使者がやってきました。趙を伐ちたい、だから兵(軍隊)を貸してほしいそう使者は語りました。
「私は趙と兄弟となる約束を結んでおります、だから兵を貸すことはできません」
文侯はそう断りました。
今度は趙の使者がやってきました。内容は同じです。兵を借りて韓を打ちたい、そういうのです。
文侯はまた、兄弟の国だから、そう断りました。
はじめはどちらの国も魏を恨みました。しかしあとで対応が一貫され、嘘をつかない文侯の姿勢を知ることになりました。「ああ、魏は我々より文化が優れている」ここから韓と趙とは、争いを仕掛けてこなくなりました。これにより、魏は豊かになったのです。
文侯は、二枚舌を使わず、率直でした。このような挿話も残っています。
文侯は
勝利の祝宴でのことです。お酒が入り、文侯も口が大きくなっていたのでしょう、
「私はどのような君主だ」
そう群臣に問いました。
臣下も、お祝いの場です。
「仁君であられ、民のことをよく考えられる君でございます」
ほとんどがそう答えました。
その中で、
「文侯様は中山国を攻め取られ、その領土は弟様にではなく、ご子息にお与えになられました。どうして仁君であり、民のことを考えておられると申し上げられましょう」
文侯の顔色が変わりました。周りの者も、居心地が悪くなり、それを察した任座はその場を小走りに退出しました。
文侯は不機嫌そうにお酒を飲んでいます。
次は
「文侯様は仁君で有らせられます」
「ほう」
文侯は翟璜の顔を見つめました。
「どうしてそのようなことがわかる」
先ほど任座が思い切ったことを申した後です、皆が心配しました。
翟璜は答えました。
「私は『君が仁であれば、臣は直(はっきりとものをいう)である』、そう聞いております。先ほど任座が直言を行うのをお聞きしました。このため、私は文侯様が仁君であると知ったのでございます」
これを聞いた文侯は任座を呼び戻し、親しく出迎えて、二人を丁寧にもてなしたといいます。
このように、魏の文侯は人から信用される人でした。そしてそのために魏は重んぜられるようになりました。
この文侯を継いだのが武侯でした。
次の更新予定
秦の誓い Rona736 @rona736
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。秦の誓いの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます