現実と夢の世界を行きかう、現代解釈の【不思議の国のアリス】

 主人公の女の子は不眠症であり、心のどこかにくすんだ不安を抱えながら学校生活を送っていました。

 そんなある日、とある男子と少しだけ親しくなります。

 ですがこの男子は、女の子を事故からかばうために、自らを犠牲にして大怪我をしてしまいます。

 という話だけであれば、現代解釈の【不思議の国のアリス】にはなりません。

 この男子、事故に遭って、ケガをしたはずなのに、なぜか行方不明になってしまいました。

 不穏な空気が漂っています。

 ただの学校生活の物語ではなく、なにか世界観を一変させるような秘密が隠されているに違いありません。

 そう思いながら読み進めていたら、不眠症の女の子が睡眠薬を飲んで、眠りを求めたらところ、未知の世界に飛ばされてしまいます。

 電車の内部です。

 ファンタジーではなく、現実世界を改変した、薄暗くて霧に包まれた世界でした。

 主人公の女の子も、なんでこんな世界に迷い込んだんだ、と驚いていますが、読んでいる私も「この物語、どうやって着地させるつもりなんだ」とドキドキしました。

 そうやってやや興奮気味に読み進めていたら、行方不明になっていた男子が、なんとウサギのマスクを装着して再登場ですよ。

 しかもピンピンしています。ケガしていません。

 ただし幽体離脱しています。

 どうやら彼は、事故にあったときに、この世界に飛ばされてしまって、帰れなくなっていたようです。

 となれば、この主人公の女の子と男子コンビがやることは、世界の謎を解き明かして、幽体離脱を回復させて、元の世界に戻ることです。

 まさしく、現代解釈の不思議の国のアリスですね。

 はたして不眠女子とウサギ男子は、五体満足で元の世界に帰還できるのか?

 それを見届けるのは、あなたですよ。