第3話 おしまい
無事、殺虫剤をつくり節足動物を工房の方へ追い払ったエルセは大きなため息をついた。
安堵からではない――激しい運動のせいか、想定より小人薬の効果が切れるのが速かったのだ。身体が元のサイズに戻り、散らかったリビングでエルセは素っ裸のまま、膝を抱えた。
貴重なアイテムも、時間も無駄にしてしまった。脱出し、カルラからの逃亡生活を送るという計画もなんだかとても無謀で遠大なものに思えて、意気消沈する。
そうこうしているうちにも寝室にまた素材が落とされ、エルセは泣きたくなった。
(ボクが何したっていうんだ……)
何もしてこなかったがゆえのこの状況である。エルセは人知れず涙をこぼした。
しかし、泣いていても素材は増える一方。自由に出来る空間は減り続ける。現実は残酷である。少しでも手を動かさなければ……床に散乱しているものを空き箱に入れるなり、なるべく隅の方に隙間なくものを押し込むなりしなければ――空間という資源を大事に使う必要がある。
最悪なのは、心を癒してくれる――現実から逃がしてくれるお人形が全て地下室にあるということ――いや、被害に遭わなかっただけ不幸中の幸いなのかもしれないが。精神力は消耗の一途をたどっている。
「くそう……せめてゴーレムが石の塊じゃなくて、可愛い女の子だったら良かったのに――そうか! ボクが改造すればいいんだ!」
そうと決まればスイッチを押してゴーレムを誘き出そう――少しだけ気持ちが上向く。自分の欲望に正直な天才である。
果たしてこの調子で、エルセは脱出できるのか――
「ふふ、ふはは……素材はいくらでもあるぞ――ボクの考えた最強のゴーレム美少女で、あの憎らしい運搬ゴーレムをぶっ壊してやる……!」
果たしてエルセはこの現実から逃れることが出来るのか?
勇者帰還の時は、刻一刻と迫っていた――
地獄のアトリエ -呪われた勇者とゴミ屋敷の錬金術師- 人生 @hitoiki
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