夜の闇のなか、もっと昏い光で君を照らそう


 ボーイズラブとしても単純に小説としても非常に魅力的な作品でした。

 主人公の「咎負い」としての役割の過酷さをかわいそうに思った直後、彼がかなりクズなことが明らかになるので、作者様はどうやって彼をBLの登場人物として活躍させるのだろうと初めは不安に思ったのですが、それも杞憂、すぐに魅了されました。
 一途でかわいいのに「やべー奴」な大男と、それまで罰されるべき悪以外の何者にもなれなかった男のカップリング。最高でした。
 人間の体を欠損させて人柱にする因習の中でいっそう昏く浮かび上がるダークなキャラクター二人がたまりません。
「うん! うん!」の音色のなんと悍ましく甘美なことか。

 あと、「名前」について。
 これについては前情報なしで読んだ方が面白いと思うのでネタバレチェックに印を入れました。
 本作では「咎負いは名前を奪われる」という設定があるのですが、さらに「咎負いに罰を与えるものは咎負いに正体を知られてはならない」という理由から、「咎負い」は目を刳り貫かれたり、声を聞かれないよう無視されたり……自分の名前だけでなく、外界を認識するための名詞さえ奪われてしまうんですよね。
 カリオの先代の「咎負い」が早々に壊れてしまったのも、それが原因じゃないでしょうか。
 名詞がないから、言語機能に保障された“思考”ができなくなる。
 だから防衛機制として心を壊してしまえる。

 ですが、カリオはそうはならなかった。
「大男」がいたからです。
 彼だけはカリオの世界で無名しの存在(モブ)にならずに済んでいました。
 カリオはホズの実名を知りませんでしたが、「大男」と彼を他の村人と分けて呼ぶことで「名前」を保っていたのです。
 だからこそ「あんたのせいで、俺は未だに正気なんだ。あんたが人間扱いするから、人形にもなれないんだ」なのでしょう。
 私はそういう風に解釈しました。

 カリオがホズのことを「あんたみたいな奴、知ってる気がする」と言うシーン、めちゃくちゃ好きなんです。
 最高な演出でした。

 地の文が多くて文体も少し硬めに調整されているのに、不思議と読みやすいところも素敵なところです(恐らく作者様による文章の彫琢の賜物なのでしょう。テンポの上で一度も躓きませんでした)。

 灰崎さん、重ね重ね感謝申し上げます。素敵な作品を書き下ろしてくださってありがとうございました。