22話 君と共に
――あの日から3年後
心配していた未来改変の悪い影響はほぼないようだった。
あの後、王都や各都市へ迅速な伝令が行われ各地に緊張が走った。
都市襲撃の報を受け、王都や各都市は警戒態勢をしいたことにより侵攻を免れた都市や、襲撃を迎え撃ち街を守り切った都市もあった。
こうして、本来であれば起こりえた日輪歴500年の脅威に人類は打ち勝ったのだ。
今も世界は獣人軍との小競り合いが続いているが、大きな混乱もなく平穏が続いていると言っても差し支えない。
都市侵攻に際して内通者としてマークされていたガドウやその一味は、物資搬入口を開放する手引きをしているところを王立騎士団に捕まっていた。
冒険者としてのライセンスをはく奪され、重罪人として王都の監獄へ収容されたと聞いている。
これから外の世界に出られることはないだろう。
俺はというと――
「シエルー!」
帰路につく途中の俺を迎えるように、遠くからルカが駆け寄ってくる。
「身重なのに走ったりしたら危ないでしょ。」
「あなたの姿がちょうど見えたから、嬉しくなっちゃって。」
ルカは出会った頃と変わらない笑顔を俺に向ける。
俺は王都にあるフォスター邸、ロベルト団長の自宅で静養するルカと共に暮らしていた。
交易都市カルアをゴブリン族の襲撃から守り抜き、S級賞金首を討ちとった功績を認められSS級冒険者として王都に招かれた。
現在は王立騎士団の武術指南役として王都に滞在することがほとんどだ。
冒険者として世界を旅してみたい気持ちがないわけではないが、しばらくは新たな命のため奮闘するルカの傍にいたいというのが本音ではあった。
ささやかに暮らしていければいいと考えてもいたが、「獣人軍侵攻を阻止した立役者」として各地では厚遇を受けることも多かった。
今では危機をいち早く察し、脅威に立ち向かった勇者だともてはやされることもあり、どうも気恥しい。
だがこの世界の街の多くが助かったのであれば、自分の選択は間違っていなかったのだと思えた。
俺はふと、空をあおぐ。
あれから色んなことがあったがこの世界に来た日が遠く昔のように思えてくる。
不安だった日々もあったが、今はこうして平穏に暮らせている。
感傷に浸る俺を見て、ルカは優しく寄り添った。
俺は心躍る人生を歩みたかった。
このまま俺の人生は平凡で無機質な日常に押しつぶされる、そう思っていた。
そんな俺がこの世界に導かれ、小さな幸せを得ることができた。
それはとてもかけがえのないものだ。
ここまでルカとたくさんケンカもしたし、楽しいことばかりだったわけではない。
だがこうして二人揃って同じ未来を見据えることができる今には感謝しかない。
人生は何が起こるかわからない。
それでもこれから先、何が待ち受けていようとも、二人で乗り越えていこう。
――願わくばこれからもずっと
そう思いながら同じくらいの背丈になったルカを見つめた。
「さ、帰ろう。」
「はい。」
今は君と幸せをかみしめながら歩いてゆこう。
この美しい世界と共に。
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最後までお読みいただきまして本当にありがとうございました。
やり直し最強勇者の異世界改変 ~無能力者と言われたが、チートスキル【女神の加護】を持つ全スキル使用が可能な勇者だったので、最悪の運命に抗う。~ 相良左衛門 @Saemon_sagara_G
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