第4話 金属の背ビレ

 シーンと静まり返った山の中。

 ランタンの代わりになるヒカリゴケを探す。


 魔法で灯りをつけたまましばらく山の中へ木々の中を進んでいく。

 頭の上をふんわり漂う、こぶしサイズの光を消すと周囲は真っ暗だ。暗闇の中で周囲を確認し、何も光がないことを確認したらまたライトを発動させ山の中を進む。


 この暗闇の中で光るものがあればそれはヒカリゴケの可能性があるんだけど、いかんせん私自身の方が明るいと見つけるのは難しいからね。


 山の中で光るものを探す、光るもの、光るものはどこに…



 それを何度も繰り返しているうちに木々が無い…いや、地面に小さな植物すらない場所にたどり着いた。先日地すべりで山の表面がごっそりと滑り落ちてしまった部分だろう。

 ここにはさすがになにも無…



 なにかが光った



「地すべりで何もないはずじゃ?」



 あまりにも不自然すぎて声に出して思考を整えようとする。

 でも光って見えたんだよね今。

 足場は悪いけどそろりそろりとなるべく地面に刺激を与えないように、地すべりの上を歩いて光った方へ、山の上の方へと進む。

 あっ、またキラリと何かが光った。


 光り方的にあれは反射だと思う。じゃあヒカリゴケじゃないじゃん。

 でもこんな地すべりの跡地で光を反射する物なんて普通に考えておかしい、あれはいったいなんだろう。


 考えながら足を進めるとその正体にたどり着いた。

 地面から本当にわずかに、コップ1つぶん程度の金属の塊が出っ張っていた。

 


「遺物だといいんだけどなぁ」



 ヒカリゴケの採取用に持ってきた小さなスコップで金属片の根元を掘り返す。肉体強化でザックザク掘れる。

 ドンドン掘れる。

 まだまだ掘れる。

 これでもかってくらい掘れる。



「ええ…なにこれ…」



 地面から出土してきたのはまるで大きなサメの背びれだった。

 40cmほど掘り返しても動かそうとしたら微動だにしない、まだまだ深く埋まっているのだろう。ヒカリゴケとかどうでもいいや、肉体強化の持つかぎり徹夜でこれを掘ってみよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る