第5話 ガラスもどき

 翌朝から、テントごと背ビレの近くに移動してマナと体力の許す限り発掘作業を続けた。

 掘った土は地すべりでできた斜面の下側にどんどん投げ捨てる。そしたらなぜか足場が無くなってしまったので背ビレにロープをくくりつけ、自分の体と結んで命綱にして今は発掘を続けている。1.5mほど掘ってもまだ背ビレが続いている。本当になんなんだろうこれは。


 遺物なのか建造物なのかすら分からないけど、なんだか無性にワクワクとしてしまった私は掘り返した後のことよりもこれが何か確かめたい気持ちでいっぱいになってしまった。食料は2週間分持ってきたけどずっと肉体労働をしているのでよく食べる。減りが早い。


 っていうかね?一度町まで戻ってハンドシャベルじゃなくてもっと大きなスコップを用意したほうが絶対効率いいんだよ。

 でもこれを放置して私以外が見つけたりとか、私がスコップを取りに帰ったことで誰かにこの存在に気づかれたらなんか嫌だなーって。


 私が見つけたんだ、私が正体を確認したい。




 ガッツ



 背ビレを掘り進めて1週間、どんどん土が固くなってきたり疲れてきたり、小さなスコップで掘り続けて握っていた手がもうマジ痛いとか色々あったけど。背ビレを4mほど掘り返したところで背ビレ以外の物にスコップの歯がぶつかった。



「やっと何かにたどり着いたのかな?アクア」



 虚空から強めのじょうろの水くらいの勢いで水をばーっと生み出す。

 雑巾代わりにつかっているそこらへんの大きなキノコでごしごしと濡らした部分をこすってやると…それは透明だった。



「ガラス?いやなんだこれ?」


 コンコンと叩くとガラスならガンガンかギシギシと音が鳴るけど、これはなにかもっと柔らかい?衝撃を吸収するような手ごたえだ。今の文明じゃ少なくとも私が触ったことが無いくらいの高級品だろう。


 よーしこの調子で掘り出してみよう。ガラスもどき?の範囲をはどこまでかなこれ




「椅子、だよね?」



 ガラスもどきを掘り進めると中に見えたのは椅子だった。

 椅子が壁から真横に生えている。


 いや、これは…この掘り出したやつが真横で埋まっているってことかな?


 椅子の前には計器が見える、なんか色々スイッチらしきものもある。

 そしてカラスもどきよりも下はまた逆方向の背ビレにつづいているようだった。掘り進めるなら椅子より前か後ろか…いやでも、気になるのスイッチだよなぁ。動くのかなコレ。


 …ダメなら諦めるけどちょっとガラスもどきをぶちやぶってみようか。

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