エピローグ
すっかり雪のちらつく季節になった。もういくつか数えれば年越しだ。
「あっ、お疲れ様です」
「どうも。ありゃあ兄ちゃん、また怪我が増えてんな。あの粗雑そうな同居人にやられたんか?」
「いやっ、これは自業自得だから。暁くんは本当に優しい人なんですよっ? 不思議と誰も信じてくれないけど」
「いやぁ、あの目つきじゃなあ。酷いようなら頼れる相手に相談したほうがええぞ。ご家族とかはどうしてんだ?」
「んーっと、楽しくやってるんじゃないかなっ」
「はぁ、ずいぶん遠くにいるみたいやな」
「配達どうもでしたっ」
「はいどうも。……あの少年、もう三年は見てるがなかなか老けへんな。童顔っつうもんかねえ」
そんなことを呟いて、配達員は去って行った。
暖かい部屋へ戻って、
「暁くん、いつもの……と、あれ? 手紙が来てるよ」
「ああ? 誰からだ」
「えっとっ…………あ、ルスファさんだ」
「なんだと?」
縦長の封を開ける。中には本人が書いたらしい、みみずがのたくったような字が連なっていた。慣れない筆遣いだがなんとか内容は読み取れる。
時候の挨拶に続いて、住まいと教育環境を手配したことへの感謝と、礼が遅れたことへの謝罪が述べられていた。残りは他愛ない近況報告だった。日常会話の書き文字はすべて覚えたとある。次年度の入学までには中等教育程度は完璧に習得できるだろうとのことだ。
「ひらがなから覚えてたはずなのに、すごいなぁっ。おれなんて新聞も満足に読めないのに。妹さんのために頑張ってるんだっ。やっぱりっ、異能なんかよりよっぽどすごいのは人の意思、だねっ」
「ふんっ、主席を目指してもらうんだ。この程度は乗り越えないとな。……まあ、たとえ狂気であろうと筋の通った意思を持つ人間は強いということか。共に働く日が楽しみだな」
「そんな
「それを先に言わないか! ちっ、せっかくの非番だったというのに。……ほぅ、連盟本部に動きあり、か。夕ちゃん
出先で渡された書類を掲げると、
「……なるほどっ」
「何か言ったか?」
「ううんっ、言ってないよ」
そうかこの目つきが悪いのだなと、
陽狂ルナティック 了
陽狂ルナティック まじりモコ @maziri-moco
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます