Round15 黒紅髪の冥王によるパチンコ攻略法『地獄の廻転』
「玉っていいわねぇ」
「あんたが言うと変な意味に聞こえるぞ」
◯おい、ママをいじめるなよ
◯俺たちのママだぞ
◯ママを映せママを
…………大丈夫かこいつら。
まぁ、視聴者がおかしいのは最初からだから気にしても仕方ない。俺は俺のやるべきことをやるまでだ。
1/349とはいえ、とにかく回して当たりを掴まなければならない。無駄口叩く暇があったらハンドルを捻る! ハリィアップ!
「む?」
「どうしましたスミレちゃん」
「風車」
「……あぁ」
パチンコ台左打ちのルートに存在する白い車輪ようなパーツ──風車──が鈍く回る。そして何より、本来始動口へ運ぶはずの銀玉の何割かが左のハズレルートへ落ちてゆく。
「あらあら〜? 弾かれてる?」
「戦友、これは……?」
「そりゃあヘソがデカけりゃ他でコントロールするわな」
◯露骨すぎぃ
◯これだからデカヘソは信用ならん
◯ママ……ッ!
────パチンコとは客と店の戦いだ。
客はできるだけ回転する台を選び、店は調整などしてはいけないが、そうなる魔法を掛ける(俺はそんなもん見抜くスキルはないが)。
通常1000円で30回転は回るべき台は、20回転で止まった。そして追加投資。わかっていても戦わなければならない。
だって、当たりが見たいから。
1度打ち出したら止まれない…………
「配信外だったら普通に移動しては?」
「俺は打ちたい台と対話する派なの!」
◯ちょっと何言ってるかわからない
◯電波がいますね……
◯まぁわかるけどな
「あ〜! スミレちゃんだけ仲良くおはなしなんてずる〜い!」
「おはなして……視聴者なんて碌な奴いないぞ」
◯貴様ァッママに変な事を言うなァッ!
◯ママ、騙されないで
◯オレたちはまともだからねママ
まるで俺がまともじゃないみたいじゃないか…………⁉︎
しょうもない雑談をしているうちに、投資は1万円を超えていた。回転数は200……普通のヘソ台ならいいかもしれないが、これはデカヘソ台。このまま当たらないのではジリ貧だ。
「うふふ、みんないい子ね〜。せっかくだから協力してもらおうかしら?」
「……協力?」
◯ママのためならなんでもするぞ!
◯なんでも言ってくれ!
◯力貸すよ〜
…………嫌な予感がする。
絶対碌なことにならない気がする。しかし俺は止められない。だって台と対話してるから。
「先バレ0ですが」
「やかましいわっ」
「じゃあ、みんなの魂借りるわね〜」
「…………は?」
冥王の手が、パチ台の上に置いていた俺のスマホへ伸びる。
「だってぇ、ホントは回るものが回らないなんておかしいでしょ〜?」
至極真っ当なことを口にしつつも、その白い手は液晶画面を潜っていく。
「だったらぁ、みんなで協力しないと!」
◯がめんか
◯な
◯yab
◯おわ
◯て
◯て
◯て
意味不明なコメントが並んだ後、隣には無数の光る玉を侍らせる冥王様が微笑んでいた。
「あの、冥王さん? 一応聞いとくけどそれは?」
「やっぱりお守りくらいじゃ冥王としてダメじゃなぁい? わたしもすごいことしないと! そぉ〜れ、『
通常、台に配置されたパーツを外部からどうこうすることはできない。というかそんなことしたらアウトだ。
だから魔女は物理攻略をしたりしているわけだが、それは己が魔力。己の力である。
「友情攻撃よ〜!」
そしてスマパチの玉に紛れて、視聴者の魂は台へ入る。まさか
『ママッ〜!』
『ママ〜ッ!』
打ち出して回転を水増しするわけではなく。
派遣された視聴者の魂たちは、左打ちの風車にたどり着くと、銀玉を始動口へ運ぶべく、まさに馬車馬のように風車を回し始めた。
「これいいのか?」
「だいじょうぶよぉ。全部じゃなくて魂の欠片だから〜」
倫理的にアウトだろ。
「これが冥王様の死霊術、今回は生き霊だけどね。ふふ」
「なるほど、他者の魂なら魔力効率に無駄がないですね」
ダメだこいつら、早く……なんとかしないと。
◯オレの魂がママの役に!
◯ママ、おれも使ってくれぇっ!
◯ママッ────!
◯ママッ────!
◯ママッ────!
◯ママッ────!
◯ママッ────!
いつしかコメント欄は復活している。そして思考を遮るように、俺の台にもようやく先バレの赤い光が灯った。
台は俺を諭すように、
しかし決して問題はないと言わんばかりに、
激アツ演出を見せる。
────『なんとかなる』と。
「……………………」
まぁ…………今までの魔法と比べれば可愛いもんだし…………風車回すだけなら…………大丈夫かなぁ。多分。
◇ ◇ ◇
黒紅髪の冥王によるパチンコ攻略法
『
配信視聴者の魂の一部を用いて、パチンコ台の風車を廻す術。今回は死霊術ではないため、対象の同意が必要。
異世界の魔女、現代でパチンカスになる ムタムッタ @mutamuttamuta
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界の魔女、現代でパチンカスになるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます