大陸における歴史の一コマを掬い上げた戦史。義を重んじた漢たちの挽歌☆
- ★★★ Excellent!!!
歴史の教科書でサラッと習ったこともある、中国王朝と北方遊牧騎馬民族とのわちゃわちゃした戦いの一部を切り取った、愛と憎しみ渦巻く人間臭い物語。この「人間臭い」ところを巧みに綴っているところが魅力の一つだ。陰謀好きな中国王朝とカラッとしてストレートな性格の遊牧民族の特徴を分かりやすく描き、闘いのシーンでは血湧き肉躍る映像を文字で伝えてくれる。
また、作中に散りばめられた漢字の使い方がユニークで、読みづらい字のはずなのに不思議とその世界にすんなり没入できる。その効果もあって、文章全体に美しさが際立っている。
中国では長い間、人間関係や社会を支える精神文化として「信・義」という美徳を称え続けてきた。どんなに血生臭い戦いとなろうとも、この美徳のおかげで歴史をテーマにした数々の名作が生まれてきた。この作品も「新たに生まれたその一つ」と言える。
中国史に馴染みが無い人でも読みやすく、知らぬ人物たちが登場しまくってもその魅力に惹きこまれると思いますよ☆