第2話
「如月美依です。」
「よろしくお願いします。」
朗らかな笑みを浮かべたようにした。
まわりの反応はおそらくyes。
ポジティブにとらえてもらえた。
そう、どうしてここまで考えているのか。
それは今日が転校初日だからだ。
初日、初めて、これは一番大事な時だと思う。
これによってクラスでのポジションが変わる。
パンの種類でも同じ。
メロンパンがクラスの陽キャ。
あんぱんは二軍。
クロワッサンは普通キャ。
、、、、みたいな感じでパンの種類と同じなのだ。
ちなみに私が好きなパンは近所のおばさんが作ってくれたチョコチップメロンパンだ。
でも最近そのおばさんが亡くなってしまった。
それからというものパンは全く食べなくなってしまった。
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「如月さん!」
「美依ちゃんって呼んでいい?」
妙に馴れ馴れしい。
でも派手な見た目からしてこの子たちは陽キャだ。
関わって損はない。
「うん。」
「よろしくね。」
「ところであなたのお名前は?」
「ウチはー朝比奈 蘭っていうのー!」
「えへへ。可愛い名前だね。」
「よろしくね。蘭ちゃん。」
蘭か。
花言葉はたしか「美しい」「優雅」って意味だったはず。
この派手なところは「優雅」とはかけ離れている気がするが、「美しい」はあってると思う。
世間一般的に「美しい」と言われる顔だ。
鼻は高いし、ウェーブな髪質にロングヘア。
少しきつい性格に思える。
多分この子はいじりやいじめが好きそうな子だな。
味方につけておいて損はなさそう。
不意に蘭がドアのほうを向いた。
つられて私もドアの方を向くと一人の男の子が現れた。
「あー!おっはよー凛!」
「おはよう。朝比奈さん。」
「もう!蘭って呼んでよ!」
最初はカレカノだと思ったが苗字呼びの時点で友達だろう。
手をブンブンとふりながら凛さんのほうへ駆け寄っていった姿は犬みたいで笑える。
従順そうなところがね。
凛さんは身長が小さくて中性的な顔をしていた。
服は学ランなのでおそらく男だろう。
でも校則ギリギリまで伸ばしている髪の毛はサラサラ。
肌にはシミやしわも一つも見当たらない。
指は長くて細く色白だ。
ここまで外見を気にしている男の子は初めて見た。
凛さんは私の方を見るといきなり指をさしてきた。
なんて失礼な人なのだろうか。
「、、、君、名前何。」
声も中性的で男か女か分からない。
はっきりと落ち着く声だ。
ASMR配信者とは目指せばいいのに。
「、、、、初めまして!」
「如月美依です。」
にっこりと笑みを作るようにしたが周りの視線が痛すぎた。
特に蘭の視線は痛すぎる。
おそらく蘭は凛さんのことが好きだ。
ふたりで話しているとこに急に凛さんが私の方を見てきたらそりゃあ、嫉妬するだろう。
「俺は百目鬼 凛。」
「よろしくね。」
「美依。」
、、、、本当マジでやめてほしい。
なんでいきなり名前呼びで話してくるのだろう。
蘭との仲が悪くなる一方じゃないか。
この学校ではみんなと仲良く平和に生きるのを目標にしていたのに。
「あ、、、うん。よろしくね。」
「百目鬼さん。」
せめてもの救いで苗字呼びにした。
これならまだ嫉妬は軽減されるだろうか。
「百目鬼じゃなくて名前呼びでいいよ。」
「凛って。」
「凛、、、、、わかった。」
本当にこの男は邪魔なことしかしてこない。
蘭からの視線が痛すぎて蘭の方を向けないじゃないか。
凛の方を睨みたいがもっと蘭に嫌われそうなので営業スマイルで笑う。
本当に笑うという効果は楽だ。
たとえ営業スマイルでも笑ったらきっと誰だって嬉しいだろう。
私なら特に(笑)
天性のひねくれ者じゃなければだけど。
凛は私のほうを見つめてにっこりと笑い返した。
あー。本当にやめてほしい。
ありがた迷惑というやつだろうか。
こんなに笑ってかまってくれるなら蘭にやってやればいいのに。
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「如月さん。前の高校で部活何やってた?」
「うーん。とくには何も。」
「たまに助っ人として部活に参加してたくらいかな?」
仲良く話しかけてくれるのは同じクラスの北島千春さんだ。
特にカースト上位というわけでもない。
でもとにかく友達が欲しかった。
平穏に学校生活を送るために。
だから私から話しかけて千春さんと仲良くなった。
他にも今池杏奈さんと野口華乃さんとも仲良くなった。
元々三人グループだったぽいから私が入ったら四人グループ。
これだったら喧嘩にはならないだろう。
「部活見学一緒に行かない?」
優しい声で誘ってくれる千春さんをグループに引き入れて良かったと思う。
「うん。一緒に行こう。」
「ありがとう北島さん。」
「あと、北島じゃなくて、千春って呼んでいいよ。」
「ありがとう。千春。」
今回は少しかっこよく言ってみた。
これだと頼りがいのある如月美依にみえるであろう。
「うん!こちらこそありがとう。」
「美依ちゃん。」
、、、、、。やっぱりか。
こっちが千春と呼んでもあっちは美依ちゃんになってしまう。
これがグループ内の主従関係というやつだろうか。
ここではみんな仲良く、平等に、を目指す予定だったんだけど。
やっぱり私の美人なところに遠慮が出てきてしまうのだろう。
まぁいっか。
いつか慣れてくるだろう。
それからは千春と一緒にいろいろな部活を見学させてもらった。
吹奏楽部、テニス部、美術部、バスケ部、サッカー部、家庭科部、、。
どれも私は興味がわかなかった。
テニス部は蘭が入っているので却下。
バスケ部は陽キャの集まりなので却下。
サッカー部は男ばっかで女に嫌われそうなので却下。
吹奏楽部は練習がハードで遊べないので却下。
家庭科部はあんまり裁縫が得意じゃないので却下。
美術部、、、絵に興味がないから却下。
様々な部活を絞っていくと残った部活は何もなかった。
「、、、、美依ちゃん!」
「別に部活はいらなくてもいいからね!」
慌てた様子で千春が話しかけてきた。
長い時間悩んでいたっぽい。
「ありがとう。千春。」
「家で考えてみるね。」
「美依ちゃん。」
「申込書を職員室の前田先生に渡せば部活に入れるよ。」
「はい。申込書。」
千春の分かりやすい説明の後ぺらぺらな紙切れを一枚手のひらの載せてきた。
少し色が茶色っぽい紙だ。
おそらく再生紙。
再生紙は蛆がわきそうなので嫌いだ。
しかも消しゴムで消すと後がしっかりと残ってしまう。
、、、、そんな贅沢は言ってられないので紙を受け取る。
「ありがとう。ばいばい千春。」
「ばいばい。美依ちゃん!」
家が反対方向だったのでもうバイバイの時間だ。
軽く手をふって家の方へ向かう、、、、訳ないでしょ?
折角新しく転校してきた場所なのだ。
親には早く帰ってくるよう言われたがそんなこと構ってられない。
そもそも家は千春と同じ方向だし。
ちょっと遊んで帰ろうか。
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「おやき、、、美味しい。」
長野の名物おやきを食べてみることにした。
初めて食べてみたがアツアツで美味しい、、、、はず。
「よく考えてジャッジをしろ」と言われるとよく分からない。
はたしてこれは美味しいのか、美味しくないのか。
味わえば味わうほどに味が分からなくなる。
「食べ切っちゃった、、、。」
最初の方はもう一つ頼もうと思ったが結局頼む気にはなれなかった。
「あははは!」
「笑えるんだけどりんー!」
「笑いすぎだって朝比奈ー!」
駅の方に男女六人グループが突っ立ってベラベラと話していた。
その中には蘭と凛もいた。
近寄りたくないが駅で帰ることになるのでどうしても横を通らないといけない。
仕方なくバスで帰ろうとしたが誰かにばれてしまった。
最悪だ。
「よう!みーより!」
私の肩をつかんでニタニタと笑ってくるのは百目鬼 凛だった。
こんなことされたらもっと蘭に嫌われる。
挙句の果てにはいじめられてもおかしくない。
「おはよ、、、、凛。」
「あはは!今は夜の7時だからこんばんわだろ。」
「美依は笑えるな。」
一人でツボってるところ悪いんですが早く帰りたいんですけど!
、、、と強気にも言えない。
「、、、凛。」
「その子めっちゃ可愛い!」
「ねぇ美依ちゃん。」
「連絡先教えてくれない?」
来た。
モブA。
本当に邪魔だ。
というか本当に早く帰らないといけない。
親が帰ってくるのは8時だ。
これから家に帰るのは少なくとも30分はかかるだろう。
バレたらどうなるのだろうか。
「ごめんなさ、、、」
そう言いかけようとしたとき
「だーめ。美依は俺の物だーから!」
いきなり私をもの呼ばわりしてくるバカがいた。
そう、百目鬼凛。
本当に迷惑だ。
誤解されたらたまったもんじゃない。
「てことで俺らは仲良く遊んでくるからばいばーい!」
「、、、、おう。またな。」
モブAが悲しそうに手を振った。
さすがにモブAに同情してしまう。
そして蘭はどうしたのだろうか。
本当に心配だ。
これからの私の行く先が。
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少し駅から離れたところでようやく凛が離れた。
「ねぇ。まじでなにしてくれちゃってんの。」
「ふざけんなよ。凛。」
遂に私の怒りは爆発した。
だって平和な生活を送るのが目標だったのに、こいつの手によってできなくなった。
しかもいきなり肩をべたべたと触ってきた。
初対面なのに。
気持ち悪いに越したことがないだろう。
「マジで死ねよ。」
「もう。顔も見たくない。」
こんなこと言ってはいけないだろう。
でもここまで優しく言ってくれた私に感謝してほしい。
きっと昔の私だったら、、、、、
でも私の言葉に凛は間抜け面で話してきた。
「え?もしかして俺のこと知らない?」
「うん。初対面よ。」
いきなり何を言っているのだろうか。
こんな変態知ってるわけないでしょ。
「えー!?」
「てっきり知ってると思ったのにー!?」
「あのねぇ!何で知ってると思ったの!?」
「あんたみたいなブス知ってるわけないでしょ!?」
ここは人通りがある場所だ。
こんな道端で喧嘩してる高校生をみたら沢山の人が私たちの方を見る。
「うげー-。俺のことブスとかいうやつマジで見る目ないわ。」
「自画自賛もほどほどにしてよ!」
「ガチでぶっ殺すわよ!?」
手が力む。
本当にぶっ殺したくなってきた。
「おいおい。マジで知らないのかよ。」
「はぁー、俺は、、、、、、」
『×××××××だよ。』
この言葉に私はひどく動転することになった。
<補足>
今頃ですが自己紹介します。
主人公:如月(きさらぎ) 美依(みより)
準主人公:百目鬼(とどめき) 凛(りん)
東京の友達:白雪(しらゆき) 光(らいと)
早乙女(さおとめ) 柚希(ゆずき)
長野のクラスメイト:朝比奈(あさひな) 蘭(らん)
北島(きたじま) 千春(ちはる)
今池(いまいけ) 杏奈(あんな)
野口(のぐち) 華乃(かの)
美依の両親:如月(きさらぎ) 美琴(みこと)
如月(きさらぎ) 哲政(てつまさ)
、、、という名前です。
少し読みにくい名前ばっかなので補足で書きました。
もちろんこれからも沢山キャラクターが登場してきます!
好きなキャラができると嬉しいです!
純粋=悍ましげ 偏り @zuttoissyo
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