失うことの軽さと、手放してしまう重さ

 ホラー短編の名手にして連載ジャンキーとも呼ばれるジュージさんの、最新ホラー長編、堂々の完結。おめでとうございます!
 大切な誰かを失った時、多くの人はそれを受け容れることに長い時間を要します。そんな時に人が取る行動の一つ、「いなくなった人を呼び続ける」ことから始まる怪奇現象。それは派手な怪異ではないものの、整理をつけられない人の心のままならなさ、切なさが、悲しさを呼び起こします。

 本作はジュージさんのホラー長編でおなじみの霊能者・シロさんの他、前作『まりちゃんは檻を作っている』の主人公・まりあちゃんも登場します。
 読んでおくとエピローグや端々の味わいが増しますが、読んでいなくても楽しめる親切設計です。
 知っている人には、初対面のシロさんを疑う時ってこうなるんだな~という場面もあり新鮮。

 今回は呪いでも何でもなく、ただ「大切な人を失ったつらさ」から始まり、そのつらさに耐えて生きる終わりだったので、しんみりとした読後感でした。
 唯一の心配は、片山絵里さんのその後がすこやかでありますように、だけです。

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