Midnight Run

わたくし

第1話 出発 黄色い愛車

日々の生活にストレスを感じた週末、オレは愛車を駆り峠道へ向かう。

普通の人は夜の街へ繰り出して、酒や女で憂さを晴らすそうだが、オレは酒は飲まないし、女は苦手だ。


だいたい、女は幼稚すぎる。

女はオレが自分自身に好意を持っているのを知りながら、

「わたし、のお嫁さんになるの」

とか、平気で言いやがる・・・


ともかくオレ、タクヤは愛車に乗るためにガレージヘむかう。

ガレージでカバーを外すと、黄色いボディに銀のラインが入ったマシンが浮かび上がる。

3.4mの全長は軽自動車規格とほぼ同じだが、全幅は普通自動車並の1.6m。車高は僅か1.2mのロー&ワイドなフォルムの愛車はオレが乗り込むのを静かに待っていた。


コックピットと呼ぶに相応しい狭い車内に乗り込むと、シフトレバー後ろのカギ穴にキーを差し込み、回す。

オレの背後からエンジンが目を覚ました音が聞こえる。

ボタンを押しスルスルと幌を畳み、ルーフレールを外す。

本来はフロント・ボンネットに収納するのだが、助手席に無雑作に放り込む。こうすると突然の雨の時に幌を直ぐに展開出来るからだ。

それに、オレには助手席に座ってくれる様な人はいない。

オレの頭上にはもう、遮る物は何もない。今はガレージの電灯だけだが、峠道へ行けば満天の星空がオレの頭上を包んでくれる。


水温計が動き出したのを確認して、オレは愛車をガレージから出す。目的地は峠道だ・・・

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