第8話 バトル5 RR車達の協演

「ユミの車の慣らしが終わった、今夜が峠の本格デビューだ!」

カズヤから連絡が入った。

早速、オレは峠道へ向かった。


漆黒の闇の中を銀色・黄色・オレンジの光の矢が次々に走り抜ける。

ユミのドライビングは確実に上達していた。オレの愛車やカズヤの車に無理をしてないで追い付いている。

単純に車の性能を比べるなら、

ユミの車>オレの愛車>カズヤの車

ドライビングの腕なら、

オレ≒カズヤ(とオレは思っている)>ユミ

で、丁度3台の車のバランスが取れている。


この3台の共通点は、

直列3気筒ターボエンジン

RRレイアウト(カズヤの車は+4WD)

ド・ディオンアクスル サスペンション

車重 1t未満(ユミの車は1tちょっと)

などだ。


エンジンはそれぞれ、

660cc 64馬力 カズヤの車

698cc 82馬力 オレの愛車

898cc 109馬力 ユミの車

実は、オレの愛車はECUチューニングとマフラー交換でブースト圧を1.2kgf/cm2から1.5kgf/cm2へアップして推定100馬力近くを出している。

カズヤの車もオレの知らない所でチューニングをしているかもしれない・・・


RRレイアウトはFF車が普及する以前の大衆車によく採用されたレイアウトで、エンジンとドライブトレーンをコンパクトに纏めて、小さいボディサイズで広い室内空間を確保していた。

RR車の利点は駆動輪の上に重いエンジンが載っているので、強力な駆動力が得られる事だ。

FF車だと加速していくと重心が後ろへ移動して駆動輪の前輪に駆動力が掛からなくなる。

ドイツの有名スポーツカーもRRレイアウトで強力な加速力を発揮していた。


欠点は一度後輪がグリップを失うと、ドライバーが車の姿勢を立て直す事がほぼ不可能になる事だ。

金槌を頭の方を持って柄の部分を左右に振るのは簡単に出来るが、柄を持って頭を左右に振ると勢いが付いて中々切り返しが難くなるのと同じだ。

ドイツの有名スポーツカーも長年の改良でエンジンレイアウトがMRに近い形になっていった。

最近のRR車は前後異径のタイヤと強力なトラクション・コントロールによりかなり限界が上がっていて、簡単にスピンはしなくなっている。


3台共通の難点は、LSDノンスリが装備されていない事だ。

LSDノンスリが無いと短い半径のカーブを曲がる時、内側の車輪が浮き上がって駆動力が抜けてしまうのだ。LSDノンスリがあれば外側の車輪に駆動力が掛かり加速が可能になるのだ。(もちろん、リヤタイヤのグリップの範囲内での事だが・・・)

もしかすると、リアタイヤが限界を超えない様に安全の為に装備をされなかったのかもしれない・・・


閑話休題御託は兎も角、オレ達3台のRR車は朝まで峠道を走り続けている。



突然、明るくなって来た頭上の星空から声が聞こえてきた・・・



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