第7話 バトル4? オレンジの仏蘭西車

今夜もオレは、峠道を走っている。

前方にカズヤの車が見えてきた。しかし、何時もよりゆっくりとしたペースで走っている。

よく見ると、カズヤの車の前にもう1台車が走っている。

オレンジの車体に黒いラインが入った車だ。


「あぁ、アレがユミの車か・・・」


待避所で休憩の時にオレはカズヤから恋人のユミの話を聞いていた。

家が隣り同士の幼馴染で、今まで一緒の腐れ縁だそうだ。

一度、カズヤの車の助手席に座っていた時に会ったが、トビキリの美人だった。

彼女は最近、カズヤの趣味の峠道に興味を持ち始めて、自身も参加する為に車を探していると聞いていた。


「しかし、トンデモナイ車を選んだなぁ・・・」

オレは呟く。


彼女の車は女性が乗るのには相応しい丸っこく可愛いボディラインをしているが、中身は峠を走る為にかなりの手が入っている。

元々はオレの愛車のベース車の2代後のモデルチェンジした車の姉妹車だ。

大衆車として必要十分なエンジン・足回りにフランス車らしいお洒落なボディを纏っている。

その車をスポーツ走行に対応する為に、メーカーがあらゆる所を改良した特別バージョンなのだ。オレンジに黒のラインのボディカラーはこのバージョンの専用色だ。

しかしベース車の素性の為、本格スポーツの”RS"は名乗れず1つ下の”GT”を名乗っている。


彼女の車には屋根とボンネットにも黒いラインが入っている、コレは200台限定の初期生産車の印だ。この車には5速MTしか無い。

後のカタログモデルでは6速ATも用意されているが、わざわざMT車に乗っている事を主張するために選んだ様だ。


まだ車に慣れていないのか、彼女の車はゆっくりと慎重にカーブをクリアしている。時々カズヤの車が前を走ったり、後ろを走ったりして、ライン取りのコーチをしている。


オレはカズヤの車にバトル申し込みの合図を送った、しかしカズヤは拒否の合図を返し、直線で追い越し可の合図を出した。


「ヤツら2人、車でイチャイチャしやがって・・・」

オレはそう呟くと2台の車を一度に追い越した。

オレは何とも言えない敗北感を感じ、早々に峠道から去ることにした・・・


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る