第3話 バトル1 黒いミニバン
オレはいつもの峠道を何往復かすると、自身と愛車の休憩の為にゆっくりとしたペースで走っていた。
暫らくすると、後方から光が近づいて来た。
高速道路の渋滞を避けようとして、コノ峠道に迷い込んだのだろう、黒いミニバンだった。
普段のオレなら素直に道を譲るのだが、ミニバンのハイビームと露骨に車体を左右に振るアオリ行為に少し頭にキテいた。
家族を乗せてるので良いカッコを見せたいのか?
小さいボディのオレの愛車を軽自動車と間違えてバカにしているのか?
後ろのミニバンは執拗にアオリ行為を続けている。
「最近は白いナンバーの軽自動車も増えたからなぁ」
オレは一言呟くと、パドルシフトでギヤを落とし右足に力を込める。
オレの背後のエンジンは唸り声を発し始めた。
続いてカン高いタービン・ノイズが車内に響き渡る。
少しの間をおいて、オレの愛車は後ろから蹴飛ばされた様に加速を開始した。
みるみるうちに、後ろの光が小さくなっていく。
3つカーブを抜けるともう光は見えなくなり、バックミラーには漆黒の闇を写すだけになった。
オレは峠道の終点手前に在る待避所に愛車を入れ、端に寄せてライトを消してミニバンを待っていた。
だいぶ時間が経った時、例のミニバンが走り抜けていった。
先ほどは2つ点いていたヘッドライトが1つしか点いていなかった。
たぶん、ガードレールか路肩の壁にぶつけたのだろう。
「これからは、家族を乗せている時だけは安全運転をしろよ」
オレはミニバンにそう声をかけた・・・
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