第5話 番外 赤い旧車
いつもの峠道には様々な車が通りすぎる。
さすがに、バイパスが出来たのでトラックなどの商用車はほとんど通らないが、峠道を目指して色々な車がやって来る。
ヨーロッパのスーパースポーツや、国産のスポーツモデルだけでなくファミリーセダンやミニバン、軽自動車、果ては大小2輪車、原付自転車まで、数えきれない種類の車がやって来る。それぞれが、思い思いに峠道を楽しんでいるのだ。
年式は最新式からネオ・ヒストリックと呼ばれる’80年代までで、排ガス規制以前の”旧車”は殆ど見かけなかった。
今、オレの目の前を走っているのは、”旧車”と呼ばれる時代の車だ。
赤いボディでワイド&ローなそのフォルムはオレの愛車と良く似ていた。
空冷水平対向エンジン特有の”バタバタ”という音を響かせながら、ヒラリ・ヒラリと軽快にカーブをクリアしている。
オレは前の車に迷惑にならない距離の車間で、ずっと旧車の後を追っている。
なぜ、オレが追い越したりバトルを挑まないのか?
それは、この旧車がオレの愛車のご先祖様みたいな物だからだ。
国産の旧車とヨーロッパ車の愛車とは直接の関係性は無い。
ではなぜ、ご先祖様なのか?それは、両車の開発コンセプトが全く同じなのだ。
両車とも大衆車として開発されたシンプルなベース車があった。
その車のエンジンと足回りを利用してワイド&ローなボディのスポーツカーに仕上げた物が両車だった。
車重も愛車800kg弱・旧車600kg弱と軽量で、ベース車の非力なエンジンを軽量ボディで補っている。
ベース車からある程度の出力向上をしている所も同じだ。
屋根が取れてオープンになるのも似ている。
もちろん、細かく見れば全然違う所が沢山ある。
駆動方式とか、愛車RR・旧車FR
エンジン形式とか、愛車水冷直列3気筒約700cc・旧車空冷水平対抗2気筒約800cc
etc.
それでも、オレにとって前を走る旧車は愛車のご先祖様なのだ。
オレはご先祖様を敬って、後ろをついて行く・・・
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