私はいつ頃、大人になるんだろう

疎かにできないテーマを扱った作品。
十代は自己のアイデンティティーを見つめる時期。
正直に、じっと自分を向き合った主人公の姿が描かれている。
こういう夜をいくつも重ねて、人は大人になっていくのだろう。
状況描写、比喩にこだわった表現がされている。

「藍が黄色を隠そうとして、覆いかぶさって、その僅かな隙間から黄色が指を覗かせる。そしてまた車の音で隠される」
藍が雨音で、黄色が踏切の警笛。
音を色に置き換えて、聴覚を視覚で表現している。
なかなか面白い。
また、主人公が少しずつ踏切に近づいていっていることを色の変化で表している。


「家全体のことを表す時はミヤマの家と呼んだ」
と説明されているところに現実味を感じる。
親戚は同じ苗字を使っていることがあるので、区別するためにも土地名で呼びあうことはよくある。

ミヤマのおじさんは、今は元気かもしれないが、この先はわからない。
何かしらの生きがいがなければ、たちまち元気をなくす。
ひょっとするとおじさんの生きがいは子や孫たちの成長、その中には主人公も含まれているかもしれない。

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