貧乏くじ、またはある種の人身御供

 戦場での悲惨かつ壮絶な体験について語る、とある兵士のお話。

 語りの形式で綴られた、いわゆる戦争もののお話です。
 まさに地獄と呼ぶより他にない光景。現実のどこかで今日も起こっている出来事であり、また過去には身近なところにもあった風景であり、つまりいま現在の我々の生活の、その先に必ずつながっているはずの物語。

 他人事ではないはずなのですけれど、でも普段は考えもしないしなかなか想像もつかない、悲愴な現実。
 そういうものを、しかし物語を通じて我が事として想像させてくれるお話は、とても気持ちの良いものだと思います。

 そして、というか、しかし、というか、結局「彼に全部押し付けて精算するのがみんなにとって一番都合がいい」という現実。
 必死に戦った報いがこれというのは、あまりにもあんまりなのですけれど。
 でもどちらかといえば、自分こそがそこに見ないふりして生きている「みんな」にあたるのだと、そんなことを思わされたお話でした。

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