戦場とは大国同士のエゴがぶつかり合う場所である。
そもそも戦争そのものが正義や大儀が切っ掛けで始まったものではなく、始まりの大本からして完全に歪んでいるわけなので、そこに人権だの、選択肢だの、逃げ場だのといったものはこれっぽっちも存在しない。あるとしたら、最後の日本兵よろしく山奥に隠れ潜んで自給自足の生活を過ごし、終戦まで生き延びるほどの根性とサバイバル技術が必要となるだろう。第二次大戦時には下水道に隠れ潜んで生きながらえたユダヤ人もいると聞く。
残念ながら戦場には殺戮以外、何もないのだ。
この作品はそれを端的に教えてくれる。
選択肢があるかのように少しでも考えたこと。
それがもはや誤解なのだと、我々は最後に気付かされるだろう。
戦争の真実を知りたい貴方へ、是非。
戦場での悲惨かつ壮絶な体験について語る、とある兵士のお話。
語りの形式で綴られた、いわゆる戦争もののお話です。
まさに地獄と呼ぶより他にない光景。現実のどこかで今日も起こっている出来事であり、また過去には身近なところにもあった風景であり、つまりいま現在の我々の生活の、その先に必ずつながっているはずの物語。
他人事ではないはずなのですけれど、でも普段は考えもしないしなかなか想像もつかない、悲愴な現実。
そういうものを、しかし物語を通じて我が事として想像させてくれるお話は、とても気持ちの良いものだと思います。
そして、というか、しかし、というか、結局「彼に全部押し付けて精算するのがみんなにとって一番都合がいい」という現実。
必死に戦った報いがこれというのは、あまりにもあんまりなのですけれど。
でもどちらかといえば、自分こそがそこに見ないふりして生きている「みんな」にあたるのだと、そんなことを思わされたお話でした。