花火の落ちる海で、その花火はひときわ大きく打ち上げられた

 夏を彩る大きな夜空の華、花火。
 それを水面から眺める小さな光があった——。

 本作はその昔、海蛍であったというひとつの妖の視点で語られる、鮮やかであり儚くも優しい物語。
 波間に漂う仄かな海蛍、それは今の世の中じゃ花火よりも珍しくなってしまった光景かもしれない。その群青に光る景色に思いを馳せながら読んでいくと、主人公である妖は遠く打ち上がる大輪の花火と人々の照らされた顔に思いを馳せていた。

 その海蛍は何を思い、その身を輝かせたのか。
 彼女であっただろうか、それとも彼であったのだろうか。
 どちらにせよ、その夜人々が目にした光景は、この世で最も美しく輝いた希望と優しさの光であったことだろう。

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