夏の海で知った初恋

 高校時代、少女ふたりで海に行った思い出と、それから数年後の再会のお話。

 女性同士の関係性を描いた、いわゆる百合もののお話です。
 恋愛したり失恋したり、友達に友情以上の感情を抱いたり……というような描写はあれども、しかし恋愛劇というよりは確かに現代ドラマといった趣の物語。

 とにかく文章が好きです。
 とても静かで、でも自然に物語に引き込んでくれる文章。

 一歩一歩踏み締めるように綴られた主人公の内面、それそのものに何か妙味や滋味のようなものがあって、文章を読むこと自体に楽しみがありました。

 物語として描かれているもの自体も大好き。
 単純な一語や一文では言い換えのきかない、細やかな機微や独特の関係性。良い……。

 読後の余韻が静かに胸を打つ、とても素敵な物語でした。