🌞 日野寅男 4 🐯

 パンッ、パンッ、パンッ!


 背後の車から、発砲音!


「アイツら街中でも平気で撃ちやがる!」


「次の角を右に!」





 ――ガクンッ





 と、急に車体が下がり、ハンドルが重くなった。


「タイヤ撃たれた!」


「右よ右! 早く!」


「くっそがぁ!」


 星凛スターリンに言われるがまま、モスクワの街中を走る――が、


「袋小路だぞ⁉」


「大丈夫!」


 星凛スターリンが車から降りて、裏路地へと入っていく。

 俺は無我夢中で付いて行く。


 パンッ、パンッ、パンッ!


「ひぃッ――ここは?」


 見上げれば、地下鉄への入り口。


「電車で逃げようってのか? ヤツら、すぐそこまで来てるぞ⁉」


「大丈夫だ」


 星凛スターリンが、駅の公衆電話に何やら打ち込んでいる。

 すると、





 ゴゴゴゴゴ……





 隠し通路が現れた!


「まさか、メトロ・ツー⁉」


 かのスターリンが核戦争のために作らせたという、地中奥深くに眠る2番目の地下鉄!


「私を誰だと思っている?」


 いつもと違った雰囲気で、静かに微笑む星凛スターリン

 その星凛スターリンが懐中電灯を手に、慣れた様子で中に入っていく。


「おいおい、入口閉めなくていいのか⁉」


「ここで迎え撃つのだ」


「はぁ⁉」


 小部屋に出た。

 星凛スターリンが壁に触れると、壁だと思っていたものがロッカーになる。


「私を誰だと思っている?」


 再度、星凛スターリンが笑う。


「偉大なるソ連の最高指導者スターリンだぞ」


「同志‼」

「同志スターリン、覚悟‼」


 そのとき、部屋に世界社会主義トロツキストたちが雪崩れ込んできた!

 やばい、こっちにはモデルガンしかないんだぞ⁉





 ――パラララッ‼





 甲高くも腹に響く音が、部屋中に響き渡った。

 世界社会主義トロツキストたちが崩れ落ちる。





 ……むせ返るような、硝煙と血の臭い。





 星凛スターリンの腕の中には、カラシニコフ自動小銃AK-74がある。


「お、お前」


 躊躇ちゅうちょなく人を殺した星凛スターリンを前にして、俺は声と体の震えを必死に抑える。


「その射撃、どこで覚えたんだ?」


「決まっているだろう。前世だよ」





 地獄の反攻作戦が、幕を開ける。

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星凛子(スターリン) × 日野寅男(ヒトラー) ~地獄のラブコメ~ 明治サブ🍆第27回スニーカー大賞金賞🍆🍆 @sub_sub

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