⭐ 星凛子 4 🍎

 クラスメイトたちが、私の兵隊たちが、私の手足を拘束してくる!


「百年振りね、同志スターリン?」


「貴様まさか、トロツキー⁉」


「機関紙の名前はプラウダ、口癖は働かざる者кто не работает,食うべからずтот не ест。もう少し隠す努力をすべきだったわね。だいたい、金と暴力なしで学校全体を牛耳るなんてできるわけないでしょう? すべては私が操ってたのよ」


 確かに、簡単すぎるとは思っていたのだ――


「懐かしき古の革命家オールド・ボリシェヴィキたちが、ロシア――いえ、偉大なるソ連で待ってるわ。アナタに殺された恨みを晴らすために、ね」


「クソぉッ」


 身動きが取れない!





 そのとき、搭乗口の近くに立っている日寅ヒトラーと目が合った。





 日寅ヒトラーが隔壁を開く!

 ゴゥッ、という音とともに猛烈な風が機内に巻き起こり、クラスメイトたちの手が緩む。

 私は機内を駆け抜け、今にも外に放り出されようとしていた日寅ヒトラーに抱き着く!





 二人して、ロシアの空に放り出された。





「パラシュートは⁉」


「だだだ大丈夫! 練習したから! でもアンタは⁉」


「絶対に離さないでくれよ⁉」





   ⭐   🍎





「助かったぁ~ッ‼」


 何度も死ぬかと思ったが、私と日寅ヒトラーは何とかモスクワの郊外に降り立つことができた……が、


「何、あの車」


 街の方から何台もの車両がやって来て、


「味方のようには見えねぇな」


 私たちをぐるりと取り囲む!


「久しいな、同志スターリン」

「待ってたぜ、この時をよぉ」


 続々と、老若男女様々なロシア人たちが下りてくる。


「クソ……」


「星、少しでいいから隙を作れ」


「どうするつもり?」


「車を奪う」


 できるかどうかなんて聞いてるヒマはない。

 コイツらに捕まったら、殺されてしまう!

 だから私は、奥の手を取り出した。

 コートの隠しポケットから、拳銃を!


 ポンッ、ポンッ、ポンッ!


「ぎゃっ」

「うわっ」


 顔面をBB弾で正確に狙撃されたロシア人たちが、怯む。

 その隙に、私たちは乗り手のいなくなった車の1台に滑り込む。


 ドルルン! ギャリギャリッ‼


 日寅ヒトラーが巧みなハンドルさばきで包囲網から抜け出す!


「モスクワ中心部に向かって!」


「郊外の方が安全じゃないか⁉」


「いいから!」


「分かったよ」


「ところでアンタ、運転なんてどこで覚えたの?」


 背後から車が追いかけてくるのを見ながら、日寅ヒトラーに尋ねる。


「決まってるだろ、前世だよ」

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