第3話

「りっくん、おはよ!」

「げっ、城々、、、」

校舎に入った途端俺に飛びついてきたのは城々留無(しろきるな)、ファンクでも有名なアイドルである。

「今日もりっくんが元気そうで私も嬉しいよぅ!」

「そ、そうか?はは、、、」

「む〜、なんだか他人行儀だなぁ。もっとベタベタして良いんだよ?」

「つっても、お前、アイドルなんだから、俺1人特別扱いするのはどうかと、、、」

「いいのいいの、こんなのは平気だよ!それにここは学校の中なんだから、記者なんていないし!」

こんな感じで、こいつが学校に来るときはいつも俺に構ってくる。それは俺が普通の人間とは違うからなのか、それとも何か別の理由があるのか、、、照や他の生徒からは羨ましがられることはあるが、俺には何がいいのかさっぱり分からない。

「じゃあ、またお昼に会いに来るね!」

「いや、わざわざ来なくていいんだぞ?お前も仕事でたまにしか学校に来られないんだから、もうちょっと楽しんでも、、、」

「いやいや、だからこそ、りっくんに会いに行くんだよ!」

「はあ、そうか」


その日の1限目の授業は世界の成り立ちについてのものだった。

「現在、ファンクだけでなく、多くの国がこの世界の謎を調査しています。その謎の中でも主なものが『天井世界』、遥か上空に存在するとされる、無が広がる空間です。今まで航空機などを用いて空の上を目指す試みが幾度となく繰り返されてきましたが、帰還した人間は未だいません」

なるほど、これなら照の言っていたことも嘘ではないのかも知れない。沈まない太陽の存在が当たり前ではあるが、それが当たり前ではない世界、それが本当に存在するなら、太陽の代わりになる光はどうやって発生するのだろう?

「犠牲となる人間が出ないように、現代では無人機を使う方法が主流ですが、その無人機ですら目的地にたどり着けない現状があります。説として有力なのは、天井世界はもう一つの世界との境界線というもの、他には天井世界には神々が存在するというもの、などがあります」

神?馬鹿馬鹿しい、そんなものが存在するのなら、そいつらは怠惰この上ない。もう少し人類に協力してくれてもいいだろうに。


昼休み、、、


「りっくんりっくん!ご飯食べに行こ?」

「あー」

城々の誘いを受けたが、断る理由もない。今日照は体調不良で休んでいる。だから、まあ、たまには、、、

「ああ、行こうか」

「ーーー!」

城々は俺の返事に予想外だと言わんばかりに驚きの表情を浮かべたが、すぐに、、、

「うん!行こ行こ!」

俺たちは周囲からの好奇の目にさらされながら食堂に向かった。

「りっくんは何食べる?」

「、、、A定食だな」

「じゃあ、私も!」

俺たちは隣同士で定食を食べていた、、、近い、、、

「りっくんは今日の授業どうだった?」

「天井世界の解説とかだったな。世界の成り立ちも習ったな」

「ねえねえ、もう一つの世界って信じる?」

照にも聞かれたことだ。

「まあ、本当に存在するのなら、気にはなるかな」

「私はね、本当にあると思うんだ。一度でいいから行ってみたいなぁ、、、あ、そうだ、今度ライブがあるからりっくんも来てよ!特等席に案内するよ!」

まあ、たまにはこいつにも構ってやるか。

「ああ、行ってみようかな」

「やった!」

俺たちは違うクラスなので、教室の手前で別れた。


午後は他のクラスと合同で体育の授業、飯を食った後に体を動かすのはいかがなものか。

「りっくんー!見ててねー!」

遠くで城々が叫んでいる。恥ずかしい、、、城々は俺とは違い、運動神経が良い。流石はアイドル、体作りにも力を入れているのだろう。ちなみに俺は平均、並の運動神経である。


放課後、、、


「りっくん、一緒にかーえろ!」

「いやいや、パパラッチに見つかるぞ?」

「それなら平気、この時間帯のこの区画なら記者はいないはずだよ。事前にちゃんとリサーチしてるもん!」

城々の家と俺の家は途中まで同じ道を通る。

「私にはね、尊敬してるアイドルがいるんだ。好きな人を堂々と宣言して、その上でファンの人たちに認められてアイドルでい続けた伝説のアイドルなんだ」

「へー、尊敬する人か、、、」

「噂によるとね、彼女の好きな人は違う世界の出身なの。ロマンあるよね〜」

「そうだな、、、」

「おっと、もうりっくんの家の目の前まで来たね」

「ああ、じゃあ、ライブの日程とか、また教えてくれよな」

「うん、もっちろん!じゃあね、りっくん!」

「じゃあな、城々」

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