王道SFで、「人間の証明」の記憶。その価値や、存在の意味とは、一体!?

 前作「空虚に身を委ねて」と、似たダークで退廃的な世界観です。

 それをそのまま、近未来に舞台を移したハード・ボイルドSFの傑作です!

 ヴァラガン・ラッキーマンが冒頭で、自分の記憶を売るところから、物語は進展します。

 混沌な様相を呈する、「龍灰窟」。そして、80年代、90年代の傑作SF映画の「ターミネーター」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を彷彿とさせる魅力ある登場人物達。

 西洋風でありながら、中国マフィアのような、名前を持ち、和洋折衷の構造を持つ本作はオリジナリティあふれる力作です。

 「延命管理局」、「デルフォード警察署」、などの、うごめく組織との暗闘、「ガントレット」や「赤松博士」や「村門 優」などのキャラクターがどう絡んでくるか、この物語の先を皆さんと一緒に確かめたいです。

 硬派な文体に、個性的な比喩表現、さらに現在の売れ線を、良い意味で無視した「非情な世界観」。

 あと、私事で恐縮ですが、「内なる獣が俺を殺す」という、私自身の「記憶」の経験と、体感が合致する、ぶっ飛んだタイトルのセンス。

 令和版「不夜城」ともいえる今作を、猛プッシュ致します!!


 

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