ゲームで裏技を使った時の、あの寒気を思い出す。

突然ですが、皆さんはゲームで裏技を使ったこと、ありますか?
私がクラスの物知りな友達から「裏技」を教わって、BGMの狂った、真っ暗な空間に飛び出た時には、興奮すると同時に、ゾワっとしたのを覚えています。

本作の舞台はメタバース。高専に通うエンジニアの卵、伊織、聡太、十夜の悪友三人組は日々、聡太のハッキング能力を活かして、仮想現実でのイタズラにご執心。

ある日、メタバースの「禁止エリア」に潜り込んでみると、突然現れた古い木造の廊下の突き当りには木戸があって、「頑丈そうな太い鎖と南京錠がいくつも掛けられて」いて……。

この時点で物凄く嫌な予感しかしないのですが、三人はもちろん、意気揚々と鍵をこじ開け、奥に進みます。

現れたのは、河童。この河童の描写がまた気味が悪くて素晴らしい。今までゲームで出会ってきた、妙にリアルな化け物たちの記憶が蘇ってブルっとします。

相撲がしたいという河童の申し出に乗り気の十夜を、伊織たちは止めようとしますが、十夜は「負けてもメタバースの中だからログアウトすればいいんだよ」と取り合いません。

果たして、本当に「ログアウトすればいい」ものでしょうか……?

ゆるキャラの印象が強い「河童」という妖怪を、令和の時代にアップデートさせ、新たな怪異として書き換えた一作です。

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