エピローグ:無面

第17話

(1)


 スコップを持った2人は墓の前に立つ。

「悲しむことはないさ。ただ少しだけ先に行っただけだ」

「ああ、俺らもすぐ後から行く」

 佐野メルトの名が刻まれる墓の隣に、もう1つ新しい墓。

そこには南島シズルの名前があった。

「だが、今回は流石にきつい」

「一度に2人失うなんてな」

 沈黙する2人。

「それで? スナイパーは何か吐いたか?」

「いや、何も話さずに死んだよ。まあ、どちらにしろ。突き止めてやるさ」

「それにまだ『深淵の十祭司』もいる。俺はそっちを調べよう」

 2人は十字を切り、墓の前で黙祷する。

「そうだ。薬くれよ」

「もう無くなったのか?」

 仕方ないと言った感じでポケットからタブレットを取り出す。

「んじゃ、俺は戻って書類整理でもするわ。課長が五月蠅くてね」

「俺も昼休みを抜けてきた。戻って診察の続きだ」

 お互いに片手を上げ別々の方向に歩き去る。


 (2)ヴィラン


 ミラーは満足げな笑みを浮かべる。

「なるほどなるほど。どうりで無面は死なないわけだ」

「お前に頼まれたとおりにやったんだ。感謝してもらいたい」

「感謝感激雨霰だよ。そりゃ~もう~。御苦労さん。クライ・フェイス」

「今はアダムと名乗っておく」

 屋敷で現れた男とは違う容姿のアダムは言う。

「あの程度でこの俺が死ぬわけがない。だが、流石に最後の攻撃は悪くなかった」

「いやいや、楽しませてもらったよ。それに比べてソルジャー、メタルにポイズンは……あ~いつら、ノリ悪すぎるぞぉ~。ああ、まったく、少しも」

「あいつらはこう言ったことが嫌いだからな。それで? どうする? 十祭司のメンバーの過半数が死んだが」

「心配するなよ。また補充するさ。今度は、そりゃもう、しっかりと。今回みたいな、即席者じゃない奴らを、な」

 回転するイスで遊びながらミラーは楽しげに言った。

「だ~か~ら~。始めよう。俺の書いたシナリオのゲームを…ハハハハハハッ」


(3)無面


 俺の仕事は悪党を狩ること。警察にできないことを仮面のヒーロー達が行い。奴らができないことを俺が処理している。いわば俺が最後の掃除係と言った所だろうか。汚れた仕事だが、俺に不満はない。なぜかって? これは俺にしかできないと自負しているから。

 俺はヒーローを守護するヒーロー。

 悪党に鉄槌を下す悪魔。

 それが俺の誇り。

 俺は顔の無い男。

 今夜も悪党(奴ら)は俺の影に震えて眠るのさ。



(終わり)


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無面(ノン・フェイス) ~復讐のヒーロー~ 檻墓戊辰 @orihaka-mogura

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