滅びゆく彼らへの、

 この物語に救いはない。
作者直々の悲劇、バッドエンドである宣告に、物語に救いを求める私は身構えていました。
 しかし、完結を見届けた今、切なさと苦さを感じつつも「読めてよかった」という思いでいっぱいです。
 ロボットAが核兵器というナイフを突きつけて人類に迫った要望、あるいは人類への願いはタイムリミットが過ぎ去り、果たされることはなかった。
 人間らしい感情を持ったロボットからメッセージを受け取った人類は、しかし地球を捨ててでも生き残るために自ら感情、人間らしさを捨てた半ロボットの体と化しており、もはやメッセージを真の意味で受け止められなかった。
 「人間」を取り戻そうとした人類の末裔は、造り出した生命体から「もう、止めろ」と宣告される。
 出来事は間違いなく絶望と言わざるを得ないでしょう。

 しかし、機械と人の違いはどこにあるのか……
 人が肉体を機械化しロボットが心を獲得したら、どちらが人間らしいと言えるのか……
 生存のため、人間のためにとあらゆるものを犠牲にした果てに、自分の体と感情をも切り捨てるような、作中の人類と似たようなことを私たちはしてはいないか。
 そういったことを、これから先答えのない問いかけではありますが考えるいきたい、そう思わせてくれる作品でした。

 荒れ果てた地球ではロボットAは最後に人類の亡骸に寄り添い、衰退していく人類のコロニーでは自分たちの愚かさと愛おしさを見つめたある人物がサヨナラを告げる。
 それは形が違い、人間らしい機械と機械へと成り果てた人間というの違いはあれど、極めて同質の、滅びゆく彼らへの鎮魂歌、あるいはラブレターだったのかもしれません。

その他のおすすめレビュー

地崎守 晶 さんの他のおすすめレビュー360