好奇心は世界を繋ぐ「知の大冒険—東洋文庫 名品の煌めき—」展

 今回は”東京”で開催中の「知の大冒険」展という展覧会のお話であり、またこの展覧会は中国の文物だけを扱うわけではないので、必ずしも皆さま全てに有益な情報とはいえないかもしれませんが……。


 でも、すっごくイイ展覧会なのでご案内する次第です。

 東京文京区の東洋文庫ミュージアムが100周年記念に所蔵品中でも特に名品を見せて下さるんですよ~。


 どうして鷲生が知ったかといいますと。

 先日、京都の龍谷ミュージアムに行った際、廊下に「知の大冒険」展のポスターが貼ってあるのを見つけました。

 鷲生は2023年春に京都の文博で同じタイトルの展覧会を見ており、それに大興奮してたのです。ケチな私にしては珍しくカタログを買うほどにw

 そのカタログには東京会場のことは書かれていませんし、出品リストを見ても少し展示物が違うのですが、東洋文庫所蔵の名品の展覧会であるのは同じです。だから基本的に同趣旨の展覧会だと思います。


 今回の東京での展示の趣旨について、東洋文庫Webサイトから引用しておきます。


 *****


 東洋文庫は100年前に設立された際、書物の収集や研究のみならず、普及の使命を掲げていました。(略)

 100周年を記念した本展は、時空を超えたアジア世界の面白さと豊かさを、あらためて知っていただく「知の大冒険」です。


 蔵書を通じてアジアの多様な人々、言語、生活、歴史、宗教、自然との出会いを、旅をするように体験してください。ご覧いただく資料の多くは、災害や戦争などの危機的状況を乗り越えて継承されてきたものです。こうした経緯を知ることで、おなじみの資料も、きっと見え方が変わることでしょう。


 さあ、新たな「知」との出会いが待つ、アジア世界への冒険を、すみずみまでご堪能下さい(※1)。


 *****


 展示品のリストも公開されています(※2)

 また、Webサイトから動画も見られます(Youtube で6分弱です)(※3)


 リストの中で、はっきり中国史に関するものは「東洋の旅―中国 悠久の歴史を彩る人々」のセクションでしょうね。上掲のリストによれば以下が展示されるそうです。


「先師孔子行教像」「史記」「中国図」「三才図会」「帝鑑図説」「山海経広注」「蘭亭序」「資治通鑑」「永楽大典」「『武備志』より鄭和の航海図」「大清聖祖仁皇帝実録」

「準回両部平定得勝図」「「壇廟祭祀節次」「殿試策」


 鷲生のこのエッセイは「中華ファンタジー」の資料を紹介するものですが、「中華」にこだわりがある方には、上記しか中国に直接関係しないので、うーん、入場料を見て釣り合いが取れるかそれぞれでご判断されるしかないですね……(一般料金が900円です)。


 鷲生はあまり中華というのを狭く考えていない……というより「中華思想」を鼻持ちならないと感じるのでw むしろ周辺国、日本を含めたアジア全体を見られる展示を面白く感じます!


 京都会場では、展示品が一つの書物のように例えられ、それぞれ「プロローグ」「第一章」として案内文が掲げられていました(布に印刷されて垂れ下がっていました)。その文章のワクワクすることと言ったら!


 東京会場では違っているかもしれませんが、鷲生がとても心躍らせたその文章を下記に引用しておきます。


 *****


 【プロローグ】  

 さあ、ここから冒険のはじまりだ。さっそく東洋世界へ漕ぎ出してみよう。

 おっと、でも気を付けて欲しい。「東洋」は、もともと海域を示した言葉だけれども、今はむしろ陸域に広がる人間社会や文化に対して使用する。東洋より、「アジア」と言った方が馴染み深いだろうか。そう、私たちはこれから アジアの人々の記憶や物語を探しに行くのだ。

(略)

 ここではまず、その西洋人がつくった地図をガイド代わりにみておこう。アジアの広大な領域が一望できるだろう。

(地図に描かれない、多様な文化の象徴として)「文字を取り上げた。東洋世界への旅の始まりとして、紀元前の昔から今日までこの地に生み出されてきた数々の文字にふれていただこう。


【第1章 東洋の旅】


 「文字」のあとは、テキストと図版から東洋の多彩な魅力をアラカルトで味わっていただくとしよう。


 日本を出帆、針路は西へ。中国、朝鮮、東南アジア、インド、そしてイスラーム世界。各エリアの文化や風土の特徴的な一面を百科事典、歴史書、地理書、探検記たちが案内してくれる。貿易風と潮流に乗り、様々な文物が往来した東洋世界は、未知と既知が幅輳する”知の海”だった。

 まもなくこの船上からも、古人の「知りたい」と「知らせ たい」がめぐり流れる様がみえてくるはずだ。


 *****


 このような説明文の先に、ヒエログリフや楔形文字、甲骨卜片の本物が並んであるんですよ。それに「説文解字」とか「訓民正音」とか「梵語千字文」とか「リグヴェーダ」とか!


 もうちょっと時代が下ると、マルコポーロの東方見聞録や、マテオ・リッチと徐光啓の肖像画とかですね。


 ぜひぜひリストを見て、「こんなものが見られるのか!」とお確かめになって下さいませ。


 ファンタジーを書こうかとする人間にとって世界がぐっと広がって楽しいですし、身近に世界史選択の中高生が居たら絶対に見せに連れて行くべきです!


 後半は、日本が世界にどのように見られていたかの展示となり、またこうして日本が世界の文物を蒐集し、それを守り伝えてきた近現代と未来についての展示が続きます。


 日本の東洋文庫ミュージアムのこれらの名品たちをみていると、しみじみ「好奇心は世界を繋ぐんだなあ」と感じ入ります。


 鷲生は2023年春に京都の文博でみたこの展示に感動したあまり、その年の夏に東京旅行に行った際、一日を割いて東洋文庫ミュージアムまで行きましたよw(※4)


 その時の企画展も面白かったですが、東洋文庫ミュージアムといえば「コレ」という「モリソン書庫」も見られて感慨深かったです。

 三方の壁が高い天井までぎっしり本が詰まった本棚で埋められています。中世ヨーロッパファンタジーを書く人がイメージしそうな「書庫」の光景がリアルで見られますよ~。


 狭い意味での中華ファンタジーに直接お役に立つかは人によるかもしれませんが、ホント、一見の価値ある素晴らしい展覧会だと思います。


 日本人なら、いえ、日本を訪問中の全世界の人々にも、この東洋文庫の名品たちをぜひ!見てもらいたいと思いますね。



2024年10月26日追記

東京近辺の人にしか行けない展覧会のお知らせで、気が咎めておりました(鷲生自身が地方住まいでいろいろ首都圏を羨ましく思うので)。

そう言えば!

京都文化博物館で2024年11月23日(土)~2025年2月2日(日)まで「世界遺産大シルクロード展」が来ますよ~。

これは東京などあちこち巡回して最後?に京都に来るものです。

楽しみです!


*****


 ※1 東洋文庫ミュージアムウェブサイト「知の大冒険」展 

https://toyo-bunko.or.jp/museum-exhibition/1786/


※2 東洋文庫ミュージアムウェブサイト 展示品リスト

 https://toyo-bunko.or.jp/wp-content/uploads/2024/07/100th_list.pdf

 

※3 東洋文庫ミュージアム企画展「創立100周年記念 知の大冒険-東洋文庫名品の煌めき-」ご案内 https://www.youtube.com/watch?v=2JvmMR-uS5w


※4 京都に住んで和風ファンタジー(時には中華風)の取材などする日記

「東京旅行です! 三日目」 https://kakuyomu.jp/works/16817330661485429107/episodes/16817330662606874963

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