3話

それから、僕と彼女が付き合うまで時間はかからなかった。


「君は付き合ってもう半年というのに、全く手を出してこないね。どうしてなの?」


 イチョウ並木を彼女と散歩しながら話していた。


「だって俺はイチャイチャしたりするよりも、ただ一緒に買い物したり、旅行したり、こうやって歩いて話してる方が好きだからだよ」


「そんなこと言って、流石に何もしなさすぎだって。だってまだ、手も繋いだことないし、キスもしたことないし」


 そういうと、彼女は無理やり俺の手を握ってきた。


「いきなり何やってんだよ」


俺は顔を赤らめてそう言った。


「私から手を繋いだから、次は君からキスしてきてね」


 彼女はそう言うと、目を瞑った。


「・・・なんでそうなるんだよ」


 俺は彼女の顔を見つめた。やっぱり綺麗だった。そして、彼女の手は温かかった。


「わかった、また今度な」


「え?!何で今じゃないの!」


「今度って約束するから!」


 そういうと彼女の顔も赤く紅葉していた。


 たが、その今度は一生来ることはなかった。


『ピンポーン』


 家のチャイムが鳴り、俺はふと我に帰った。重い体を動かして、扉に向かった。

 扉を開けるとそこには高級そうなスーツを着ている男性がいた。


 親切な大学の先生が様子でも見に来たのだろうか。だが、その男に見覚えはなかった。


「どうされました?」


「貴方は〇〇様であっていますか?」


「はい」


「私は後藤と申します。本題に入りますが、貴方は一週間前に大切な方を亡くされたと、伺っております」


「はい?...なんで、知っているんですか?」


 俺は男を睨んだ。


「単刀直入に言います。過去に戻って彼女を助け

ませんか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る