2話

あれから一週間たった。あの後すぐに警察に通報し、事情聴取などあり精神的にとても疲れた。


 司法解剖の結果、彼女の死因は毒であった。しかし、何故、彼女が毒殺させられたのか、誰にされたのか、全くわからない。そのため、今も捜査が続いている。

 

 それから俺は大学を休み続けることにした。

 

 何をやろうにもやる気が出なかったのだ。


 大学に行こうとしても、何も学ぶ意欲が湧かない。気づいたら彼女のことを考えている。


 ゲームをやってみてもすぐに飽きた。小説を読もうとしても内容が入ってこなかった。

 

 俺はきっと生きることに価値を無くしたんだろう。


 もう死んでしまおうか。せっかく死ぬなら彼女と同じ死因がいい。

 あの日、彼女が笑って死んだ理由もわかるかもしれないから。


 そう考え、危ないサイトで毒薬を買うことにした。


 届いてみて驚いたことに、それは彼女が死んだ日、変な男からもらった薬と同じだった。


「気持ち悪いな」


 その時、変な男が言っていた言葉を思い出した。


「肌身離さずもってろか・・・」


 俺はとりあえず二つの薬をポケットに入れた。


 休み続けて、ただひたすら彼女のことばかり考え、ぼーとしていた。


「隣りすわっていいかな?」


 入学してはじめ、彼女はそう俺に話しかけてきた。


 ショートカットで、いわゆるタヌキ顔で、パッチリお目目で、誰からでも可愛いと思われそうな女性だった。


「いいですよ」


 そこからお互いこの大学に友達はいなくてぼっちだとか、専攻している教科が同じとかで意気投合した。

 

 俺が休み時間、本を読んでいると彼女は話しかけてきた。


「何の本読んでるの?」


「これは、短編小説です」


「そうなんだ。どんな話?」


 俺は出来るだけわかりやすく要点をまとめた。


「主人公の友達が事故で亡くなるんですけど、主人公は事故が起こる前にタイムスリップするんです。なんとか、事故を食い止めようとするんですが、何度タイムスリップしようと、必ず友達は死にます。そして、最後は諦める。こんな話です。」


「なんだか、切ないね。」


「でも、その切なさの中に二人の友情や死への考え方など、様々なことを考えさせられるんですよ。短編小説なのにとてもすごくないです・・・あれ?」


 彼女はクスクス笑っていた。


「もしかして俺、オタクみたいでキモかった?」


「いや、いつも静かなのに小説のことになると、声が大きくなるのが面白くって」


「・・・うるさいなぁ」

 

 俺は照れ臭くなり顔をしかめた。


「でも、もしあたしがその友達だったら絶対諦めないけどな」


 彼女はまっすぐな声でそう言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る