ヒットマン。
風の無い夜。いや、そもそも極端な天候なんて設定があるのかも定かでは無いから、風の強弱になんて意識を置かなくて良いのかも知れないが、とにかく代わり映えしない夜だった。
俺は脳天に矢を打ち込まれて絶命してる男を見下ろしながら、ログに記されるキルポイントを確認した。
「別に、悩む必要無かったな」
『そうですね』
死体を見ながら呟いた言葉をレティが拾ってくれる。こんな頭のおかしい世界に於いて、常に孤独を感じずに居られるのは
「善人サイドが極端な対応に出られないなら、俺が極端な対応してやれば良いんだよな。殺せばポイント手に入るんだし」
『まぁ、流石に全部をカバー出来る訳でもありませんが』
「流石にそこまで責任は持てねぇよ。必要なのは
タンクトップ達に襲われてから、既に五日程の時間が過ぎた。
その内、最初の三日ほどはプレイヤーキルで手に入るポイントの情報をどうするのか、結構悩んだのだ。でも三日過ぎてから気が付いた。
──俺が殺せば良くね?
いつだって答えはシンプルだった。
俺が気にしてる問題は善人サイドに居るだろう潜在的サイコパスの存在であり、
だが、俺は気が付いてしまったのだ。世界の真実と言うか、シンプルかつスマートなやり方って奴に。
まず大前提として、悪人は善人より少ない。大衆に於いて基本は
仮に統計が悪と善が
人狼ゲームと同じだ。あのゲームは人狼と村人が同数になった瞬間、人狼の勝ちになる。何故なら人狼が全員、村人を一人ずつ殺せばそれで終わるから。人狼が姿を偽って隠れてるのは、人数で負けてるからだ。どんな時だって数は暴力になり得る。
善人とは、
だから俺は
そうする事で『犯罪の現場を抑えられたら殺される』と思える環境にする。善人サイドが悪人を殺せなくても、俺が殺してやれば結果は同じなのだ。
「効果が出るのはどれくらいかね」
『さて、どうでしょうね。そもそものお話ですが、アキラ様が治安の維持を担う必要も無いですし』
理想的な展開は、善人サイドがさっさと自警団を作ってくれる事だ。そして自警団の手に余る犯罪者の処理とかは俺に依頼してくれれば良い。
そうすれば、俺は必要な時だけ悪人を殺しに来れば良いので、他の時間を狩猟に使える。
いや、だって、俺って狩猟する為に頑張ってるんだよ? その時間も無くなる程に頑張るのは本末転倒だろ。あくまで狩猟がメインである。
まぁ犯罪者を獲物としてハントするのは、それはそれでオツだけど。
「ところでレティ、さっきの女の子は助かった?」
『断言は出来ませんが、恐らくは』
たった今、俺が射殺した足元のコイツ。夜の暗闇に紛れて女の子を襲おうとしてたカスである。
女の子も服がビリビリに破かれ、口を抑えられながらあと少しで尊厳が散らされる。その瞬間に間に合った俺は即座に矢を射った。
男も多少は腕に覚えがある様で、その一射目は避けたのだ。でも女の子のお股に取り返しの付かないイタズラをする為にズボンを下げてたクズは、そのせいで足がもつれて二射目を避けられず死亡。
その頃には、助けた女の子も既に逃げてた。
別にお礼が欲しかった訳じゃないし、俺が善人である確証も無いのだから逃げるのが最善手。全くもってそれで良い。こんな夜中に一人で出歩く愚を犯した割には良い判断だったと思う。
「まぁ、暫くは朝に狩りして昼に寝て、夜に
『誰も強制はしてませんよ』
「それはそう」
でも、キルポイントの話が出回るまでには安定した治安が欲しい。じゃないと子供達が危なすぎる。
『本当に、子供には甘いですね』
「仕方無いだろ。子供ってのは大人を頼って生きるべきなんだから。俺だってガキの頃はそうしてたし、だったらその分は子供達に手を差し伸べる義務が俺にはあると思わん?」
過去に大人から差し伸べられた手を、今度は俺が大人として子供に伸ばす。俺はそうやって世界が回ってると思うんだよ。
『死後まで守る程のポリシーなので?』
「知らんのか? ポリシーってのは死んでも褪せないから
リビルド・アーチャー 〜死後の世界で遊び抜く。生き返れなくて良いから、ひたすら此処に居させてくれよ。〜 ももるる。【樹法の勇者は煽り厨。】書籍化 @momoruru
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