あとがき

 本作をお読みくださった皆様、シリーズ通してお読みくださった皆様、ご愛顧くださり誠にありがとうございました。

 『1』を書いた時はシリーズ化する予定は全くなく、執筆に対する自分の心境を明文化する意味しかありませんでした。それがこんなにも反響を呼び、代表作にまでなるとは全く想定していませんでした。自分の体験と心境を赤裸々に語っただけの作品が多くの方の共感を呼び、執筆をする全ての人を応援する内容となったことは作者としても嬉しい誤算です。

 今回、無事にシリーズ完結までこぎつけることができましたが、そこに至る道のりは順風満帆ではありませんでした。

 『1』を公開したのは2020年2月頃のことですが、公開直後はほとんど読まれずに非常に落ち込んでいました。しかし、たまたま目に留めていただいたある方に絶賛され、その方に自主企画の開催を進められたことで雲行きが変わりました。企画を通して大幅に読者が増え、励まされたといったコメントをいただけたことで自信を回復しました。

 それから数ヶ月後、『1』の執筆時から構想のあった『2』『3』を書きました。『2』は執筆のモチベーションを保つ方法などを自分なりに考察したものであり、こちらも多くの方が読んで共感してくださいました。

 ただし、その後の『3』で躓きました。出版社の新人賞選考会というマイナーな舞台を扱ったためか、前2作ほど閲覧数が増えず、需要がないのだと思って落ち込みました。その時すでに『4』の構想もあったのですが、モチベーションが失われていたので続編を書く気にはなれませんでした。

 シリーズが再び日の目を見たのは2022年に入ってからです。ある方が『3』まで通してお読みになったうえ、全ての作品に対して詳細なコメントをくださったのです。シリーズに価値を見出してもらえたことで救われたような気持ちになり、モチベーションの回復によって『4』を執筆したのが今年の4月のことです。こうした奇特な読者の方との出会いがなければ、本シリーズがここまで続くことはありませんでした。個人名を出すことは控えますが、このお二方には何度感謝を申し上げても足りません。

 そして今回の『5』です。『4』までとは違い、『5』については全く構想がありませんでした。最終的に自費出版というテーマを取り上げたのは、これが私自身の物語でもあるからです。

 そう、私も智子と同様に自費出版の誘いを受けました。そして智子と同様、自費出版をすることを決意したのです。この件については、7月中旬に近況ノートでお知らせする予定です。

 物語としては、自費出版本が当たって智子が作家デビューする、という結末の方が綺麗なのかもしれません。ですが、本作は私自身の物語でもあり、現実がどうなるかわからない以上、安易なサクセスストーリーを描くことはできませんでした。でも、どんな結果に終わったとしても私が書くことを止めるわけではないし、執筆がライフワークである事実には変わりない。智子の最後の言葉は私が出した結論でもあります。

 作家になることは執筆を続ける一つの道ではありますが、プロという形態にこだわらなくても、執筆を愛する人はたくさんいます。私はカクヨムの利用を通して、自分の書きたいという気持ちに忠実に生きる人々の存在を知り、プロになることだけが執筆を続ける道ではないことを知りました。人から好まれようが好まれまいが、評価を受けようが受けまいが、ただ自分の心に従って作品を書き続ける。そうやって自分自身と向き合い、自分の世界を表現していくことにこそ、執筆を続ける本当の意義があると思うのです。

 シリーズはこれで完結しますが、智子と作品を巡る物語はこれからも続いていくのでしょう。本シリーズを通して、執筆をする全ての人が自身の心境と向き合い、そして執筆を愛する気持ちを再確認できたのであれば、こんなに嬉しいことはありません。

 本作を、そして本シリーズを読了してくださった皆様、誠にありがとうございました。皆様の執筆ライフが幸多きなるものになることを心より願っています。

           

          2022.7.2 小原瑞樹

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