花が咲き乱れる王国、エーデルワイスを中心として紡がれるお話です。
騎士として生きる決意をしているオリヴィエ。男性社会の花騎士団の中にあってトップクラスの実力を持ち、その髪色から『翠色の騎士』の異名を持つ女性騎士です。彼女を高く評価してくれている者も存在しますが、多くの者が彼女を良く思わず、過小評価し、冷遇します。女性であるが故にです。そんなオリヴィエが自身の性に苦悩し翻弄されながらも一人の騎士として歩もうとする姿が描かれています。
情景描写や戦闘描写が丁寧で、美しく表現されています。それに加え、主人公であるオリヴィエの揺れ動く心理描写も余すところなく描かれます。
仕える主である王国の姫アイリスに対する、深い思慕。
オリヴィエに想いを寄せる者たちへの、オリヴィエの複雑な想い。
オリヴィエはこの先、何処にその想いを向かわせるのか。彼女自身の真の心は、どう生き、誰を愛することを選ぶのか。
ハラハラしたり、時にはヤキモキもさせてくれますよ!
騎士団内でのイザコザや、そんな中でも育まれる友情、アイリス姫との約束、高名な騎士だった父親への強い思い、敵として対峙する者たちにも事情や稀に更生の余地があったりと、様々なエピソードで楽しませてくれます。
誇りを持って騎士として生きようとするオリヴィエの奮闘を、ぜひ見守ってみてください!
伝わりやすい言葉で丁寧に表現された文章が本当に素晴らしい。その厳選された言葉に思わず惚れ惚れしてしまいます。
過度に綺麗な言葉を用いなくとも、読み手に美しいと感じさせるそれは、おそらく表現されたそのものが美しいからなのでしょう。
主人公の女性騎士(敢えて女騎士とは言いません)は、もちろん強さと気高さを持ち合わせていますが、そう簡単ではない彼女の胸の内側もしっかりと描写されていて……(おそらくこの作品の主題はこちら側にあるのでしょうが)二章の舞踏会でのワンシーンはとにかく一読の価値があります。
女性向けとありますが、もちろん男性が読んでも惹き込まれると思います。おすすめです。