これですべてよし

若神の返事は決まっていた。


天からごらんになっていた天の神は、そのごようすをご覧になり、満足気に微笑まれた。


天の神は思いました。娘は、妻神がいなくて寂しい思いであったのだな。娘よ。おまえが生きていく場所をみつけたのならそれでよい。

 

すぐさま天の使者である黄金色の龍神を若神の家に使わした。龍神は一瞬で彼の家に着き、家の戸から、鼻の一部と長い髭だけを入れ、龍神がなにごとかを武神に伝えると、大きく勇ましい龍神のお姿にあわてふためいている彼をよそに、武神は霧に隠れていくように、彼の家を出られた。

 

武神が深い森をのんびりと歩きながら、淡く輝く白い光に包まれていく家をみて、


「これですべてよし」

 

と、つぶやかれた。


               (了)

 

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湖の少女 星谷光洋 @iroha13

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