ノックの音が4
ジュン
第1話
ノックの音がした。
信子は思った。
「ひょっとして郁夫さんかしら」
「僕ですよ。信子さん」
「あら、やっぱり。郁夫さんだわ」
信子はドアを開けた。
「信子さん、お久しぶり」
「郁夫さん、どうでした?仕事でアメリカに行かれたそうだけど」
「ほとんどホテルの部屋にカンヅメさ」
「あら。それは残念だったわね。でも、どうして?」
「言葉の壁ってやつさ」
「そう。でも郁夫さん、英語はしゃべれるんじゃなかった?」
「まあね。でも、日本のことを英語で説明するのは、また勝手が違って」
「そう」
「結局ホテルで、仕事の続きをやってたんだ」
「仕事ははかどったの?」
「ああ、終わらせることができたよ」
「それで、日本にはいつ戻ってきたの」
「昨日さ」
信子は言った。
「郁夫サン。だいぶん日本語が上手くなってきたみたいよ」
「ソウデスカ!」
「あなたがアメリカ育ちで、日本語が上手くないけど、仕事で日本に転勤することになった」
「ソウデス。ソコデ、ノブコサント、デアッテ」
「日本語の勉強したのよね。私が書いた英文を日本語に訳しなさいって仕事を出した。ちょうどその時アメリカの本店から一度戻って来てくれって言われたのよね」
「ハイ」
郁夫は数冊のノートを信子に渡した。
「郁夫サン。向こうのホテルに滞在中に私の出した仕事をやったのね」
ノックの音が4 ジュン @mizukubo
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