第12話 私・・・許さない





「優太が浮気・・・?」


「まだ浮気って確証はないけど、どうも優太の様子がおかしいのよ。あの優しい優太に限って沙羅を裏切ることはないって私も信じたいけどね・・・どうもね・・・」


 お姉ちゃんは指で顎を擦りながら難しい顔をしている。


 優太が浮気って、もしかして・・・


「それっていつの事?」


「それって優太が他の女の子と一緒にいた事?それなら二週間ぐらい前かな?大学の友達と歩いて時にたまたま見かけて、ちょっとだけ後をつけたのよ。そしたら、カフェに入って何か楽しそうにしてたのよね・・・」


「そ、そうなんだ・・・」


 優太が浮気・・・


「でもその時は沙羅も優太も仲良さそうにしてたからあまり気にしてなかったのよ。誠実とは言えないけど他の女の子とカフェで話するぐらい普通だし。でも、あなた達、今週全然一緒にいないでしょ?あなたの姉だし、優太は隣に住んでるから嫌でもあなた達二人が一緒にいる姿は目に入るのよ。それが今週はゼロ。流石におかしいって思うわよ」


「・・・・・・・・・」


「沙羅、優太と喧嘩でもした?もしかして、やっぱり優太が・・・」


 私が黙って俯いていて話を聞いているとお姉ちゃんの声音がドンドン怒りに満ちていく。


「話したくないなら無理にとは言わないけど、もし、優太が沙羅を裏切るような事してたら、私・・・許さない」


 お姉ちゃんの顔はまるで般若のように歪んでいる。


「大丈夫。ちょっと色々あって・・・でも、優太は浮気はしてないと思う」


「ほんと?」


「・・・うん。因みに、その優太が一緒にいた子ってどんな子だった?」


「う〜ん、黒髪が腰の辺りまで伸びてて、背は低めだったかな?顔は可愛い系って感じだった。沙羅、心辺りがあるの?」


「うん、多分だけど・・・」


 多分じゃない。その子は風美で間違いない。


「ふ〜ん、まぁ、あんたが大丈夫だって言うなら外野は余計な事は言わないけど、困った事があったらお姉ちゃんに相談しなさいね。いつでも協力するから」


 そう言ってウインクするお姉ちゃんは身内から見ても凄く愛嬌があって、可愛らしい。


 こんな笑顔を向けたられたら大抵の男は即落ちするだろうってぐらい魅力がある。


 自分で言うのもなんだけど、私はモテる方だ。でも、お姉ちゃん程ではない。


 美人でスタイルも良く、頭も良い。


 その上性格も良くて、器量が良いのだからモテないはずがない。


 私はそんなお姉ちゃんの劣化版みたいなものだ・・・


「じゃ、とりあえずこの話はおしまい。私はこれからデートだから。沙羅は何にか予定あるの?」


「別に、無いかな・・・」


 本当は優太に会いに行きたいけど、このタイミングで行けばお姉ちゃんに色々勘ぐられて、私の浮気がバレるかもしれない。


 正直に話せばいいのかもしれないけど、怖い。


 さっきの口ぶりから分かる通り、お姉ちゃんは正義感も強い。


 もし、浮気の事がバレたらと思うと、怖い・・・


「そう。まぁ、家に引きこもっても良くないし、気晴らしに散歩ぐらいすれば?案外、頭の中がスッキリしたりするよ」


「・・・うん」


 私はまた気のない返事を返し、お姉ちゃんは出掛ける準備を始めた。


 邪魔しては悪いと思い、自分の部屋へ戻る。


 ベッドに横になって、今後について考える。


 優太ともう一度ちゃんと話さなければいけないのは確定しているけど、問題はどうやってその機会を持つかだ。


 優太の事を想えばお腹の激痛でそれどころじゃ無くなるし、だからと言って何にもしない訳にもいかない。


 優太の事ももちろんだけど、善行についても考えないといけない。


 もうあんな悍ましい夢は見たくない。


 そういえば、勝も私のように悪夢を見たのかしら?


 あいつが善行するなんて思えないから、私と同じか、それ以上の悪夢を見ているはず。


 色々考えを巡らせていると、玄関の開く音がした。


 窓から外を見ると、オシャレしたお姉ちゃんがいた。


 いいなぁ〜、これからデートか・・・


 普段だったら優太と一緒にいるのに・・・


 部屋に居ても気持ちが落ち込むばかりだったので、お姉ちゃんに言われた通り、散歩に出掛ける事にした。


 目的もなく、近所を歩き回った。


 何気ない風景を眺めていると気持ちが幾分か楽になった。


 それでも、今後の良い案は思いつかず、只々、時間だけが流れていった。


 

 

 



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