第6話 悪夢①





 筧風美と矢内勝は朝からデートを楽しんでいる。


 風美が前から観たい観たいと言っていた恋愛映画を午前中から映画館で鑑賞した。


 鑑賞し終えるとちょうどお昼時で、昼食を食べるため近くのレストランに入る。


 風美はその恋愛映画にとても感動しており、普段の大人しい性格からは考えられないぐらい、興奮気味に映画の感想について勝に語っている。


 勝はそんな風美の事を微笑ましく思い、終始聞き手に徹していた。


 注文の品が運ばれてきて、昼ご飯を食べ出してからは風美も少し落ち着く。


 デミグラスソースがかかったハンバーグを一生懸命頬張る風美を見ながら、勝は幸せを感じていた。


 昼食を食べ終えた二人は映画館と併設されているショッピングモールで買い物を楽しんだ。


 他愛も無い会話を楽しみながら、二人の時間はあっという間に過ぎ去っていった。


 日も傾き始めた頃。そろそろ帰ろうかと思っていた矢先に風美がぽつりと呟く。


「ねぇ、ちょっと休憩して行かない?」


 恥しそうに頬を朱に染め、上目遣いで勝を見た。


 休憩がどういう意味かは勝にも分かっている。


 寧ろ、そういう事は風美は積極的ではなかった。


 だから、言葉の意味は分かっても、風美からラブホに行こうと提案された事に内心かなり驚いた。


 しかし、そんな事は表には出さず、冷静に風美の提案に同意した。


 勝も男子高校生だ。人並み以上に性への興味はある。


 しかも、普段大人しく奥手な風美からの恥じらいながらも大胆なお誘いだ。


 断る理由などない。


 二人は少しファンシーな部屋を選び、中へ入っていった。


 部屋に着くと、勝はシャワーを浴びようと脱衣場に向かおうとしたが、風美に止められた。


「いいよ、マサ君。私が口で綺麗にしてあげる」


 まさかの言葉に一瞬固まる勝だったが、直ぐに風美と一緒にベッドへ向かった。


 大胆な誘いだけじゃなく、こんな事までしてくれるとは夢にも思っていなかった。


 何度も繰り返すが風美は大人しく、性に対して消極的だ。


 興味がない訳ではないが、恥ずかしさが勝って消極的になる。


 そんな風美の口での奉仕に興奮を隠し切れなかった。


 早る気持ちを抑え、ベッドへ腰掛けた勝の前に風美が屈んで、膝立ちになる。


 風美はそのまま勝のズボンと下着を脱がし、勝のモノと対面した。


 勝と風美は既に何度か肌は重ねているものの、風美は勝のモノとマジマジと見るのは初めてだった。


 勝は既に元気な自分のムスコを見た風美は少したじろぐのではなかろうかと思った。


 しかし、風美はそんな勝の心配を他所に、何の躊躇いもなく、ソレを口で咥えた。


 今日の風美には驚かされてばかりだが、決して悪い意味ではなかった。


 風美の唇と舌の動きは、不慣れからの拙さがあり、それが何とも愛おしく思えた。


 しかし、そこぎこち無さは直ぐに消え、代わりに、手慣れた動きに変わった。


 快楽が波のように勝へ押し寄せる。


 いつの間にこんなテクを覚えたのかと不穏な考えが勝の脳裏をかすめた。


 ウサギからトラへと変貌したかのようなその風美の動きは、勝を絶頂へと追いやった。


 ―――ガリッ!


 寸前。勝は股間に違和感を感じた。


 ―――ブチッ!


 一瞬の出来事に体と心が追いつかない。


 しかし、徐々に徐々に理解が追いつくと、勝は股間に激痛を感じた。


 言葉にならない声を発しながら泣き叫ぶ勝に風美は声をかけた。


「ねぇ、マサ君」


 自分の叫び声のうるささにかき消されてもおかしく無いぐらいの声量の風美の言葉が何故かはっきりと耳に届いた。


 その不気味さに股間の痛みも忘れ、呼ばれるがままに風美を見た。


 口元を血で真っ赤に染めた風美は今まで見た事のない妖艶な笑みを浮かべていた。


「他の女と浮気するこんなイケナイ子は要らないよね?」


 その笑みは三日月のように何処までも鋭利に伸びている。


 勝は激痛であるはずの股間よりも、目の前の風美に恐怖し、慄いた。


「私、マサ君の為にすっごく練習したんだよ?何度も何度も噛みちぎっては捨て、噛みちぎって捨て。だから、クラスの男子の半分は竿無しになっちゃった。アハッ!」


 恐怖が全てを支配して、勝はまともな思考が出来なかった。


 目の前の風美が風美に見えない。


 風美は口から取り出した勝のモノを自身の秘部へと近づけた。


 これ以上風美の狂気に満ちた行ないを見たくない。見たくないのだが、何故か風美から目が離せない。


 風美はそれを自身の膣内へと押しやった。


「はぁ〜、マサ君の食べちゃった♡ 男が女を喰うって言うけど、私がマサ君を食べちゃった♡ マサ君のが私の中にある限り、ずっと一緒だよ。もう他の女と交わる事はないよ」


 そう言う風美の笑顔は悪魔的魅力があり、見る者を虜にし、決して逃げられない絶望感に似たナニかがあった。


 恐怖で震える事しか出来ない勝は辛うじて口が開き、恐怖の雄叫びをあげる事しか出来なかった。


 風美はそんな勝の顔の目の前に寄り、三日月型に口を更に歪め満面の笑みを浮かべた。


「マサ君との子供が楽しみだなぁ〜、マサ君の種はいつでも私の中にあるから・・・♡浮気出来ない体になっちゃったから、これからは私とずーっと一緒だよ♡」


 勝は風美の何処までも仄暗い瞳に見つめられ、勝は心の底から絶叫した。


「うあああああぁぁぁぁぁあ!!!!」


 その瞬間、勝は掛け布団を払い除ける勢いで、ベッドから起き上がった。


「ハァハァハァハァハァハァ・・・」


 呼吸の乱れを整えようと、息をするが一向に収まる気がしない。


『オロロロロ〜ン。良い夢を見れたかしら?矢内勝』


 落ち着きのない頭の中に今一番聞きたくない声が響き渡った。



 


 


 

 

 

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